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2021年2月24日発行:2021/22年度香港財政予算案及び今後の見通し

2021年2月24日、香港特別行政区政府の立法議会にて、財務長官の陳茂波(ポール・チャン)にとって5度目となる2021/2022年度の香港財政予算案が発表された。

 

 

2020年の世界的な新型コロナウイルスの蔓延により、多くの都市が封鎖され、数多くの企業が製造活動を停止せざるを得ない状況となり、世界経済は甚大な打撃と被害を受けた。香港においては、2021年1月までに10,000件を超える感染症例が確認され、香港経済も大きく悪化した。

 

実質GDP成長率が過去10年間で初めてのマイナスとなった2019年に続き、2020年全体の同成長率はマイナス6.1%へとさらに低下した。一方、香港の第三波地域内感染が沈静化した2020年第3四半期においては、顕著な経済回復を示した。今後蔓延状況や世界経済活動が急激に悪化することがなければ、香港経済も徐々に回復に向かうと予想されている。

 

 

コロナ禍による事業停止や製造停止は、高い失業率を引き起こし季節調整済みの数字では2019年の3.4%から7.0%となった。特に、消費および観光業の関連セクターは、香港にとって前回の疫病蔓延となる2003年のSARS以来、最も高い失業率となった。

 

指標となる消費者物価上昇率は、弱い経済状況とコロナ禍の脅威の結果として、2019年の3.0%から2020年は1.3%に大幅に減少した。収束の目途が立たないコロナウィルスの蔓延は世界経済と地域経済に引き続き圧力をかけています。

 

 

2020/21年度の財政赤字は2,576億香港ドルで、当初の見込まれた財政赤字の1,391億香港ドルよりも1,185億香港ドル多く、香港政府が財政赤字を出したのは2年連続である。 財政規律と財政安定化を維持するために政府は経済発展を促し、企業を支援し、雇用を保護し、人々の生活を改善し、公共サービスを強化し、市民の未来のために投資するというような財政措置を採用する。そのため、当予算は以下の救済措置を提案した。

 

 

 

注目すべきポイント

 

財政・税務優遇政策案

1

2020/2021年度の法人税から10,000香港ドルを上限として100%減額

2

2020/2021年度の個人所得税及びパーソナルアセスメントに対する税金から10,000香港ドルを上限として100%を減額

3

2021/2022年度の各四半期の居住用不動産に対する固定資産税(レート)を第1、2四半期において1,500香港ドルずつ、第3、4四半期において1,000香港ドルずつを上限として免除

4

2021/2022年度の各四半期の非居住用不動産に対するレートを、第1、2四半期において5,000香港ドルずつ、第3、4四半期において2,000香港ドルずつを上限として免除

5

2021/2022年度の商業登記証費用を免除

6

非家庭用の世帯に対して、さらに8ヵ月間、水道料金に対しては月額20,000香港ドル、汚水処理料金に対して月額12,500香港ドルを上限として、それぞれの料金の75%を免除

7

香港永久居民ならびに18歳以上の新規入国者に対して5,000香港ドルの電子クーポンを分割で発行

8

上限80,000香港ドル、返済期間最長5年の個人向けローンに対して100%の特別保証を設定

9

株式譲渡に課せられる印紙税を譲渡対価もしくは売手および買手がそれぞれの取引において支払う金額の現行0.1%から0.13%へと引き上げることを提案

 

長期的発展のための政策

1

観光資源の強化に9億3400万香港ドルを充当し、その内1億6900万香港ドルを地場の文化観光、遺産観光、もしくは創造的観光プロジェクトの推進に充当

2

本年度中に中国本土投資家が香港市場で債券売買を行えるサウスバウンドの債券通(ボンドコネクト)の開始、および香港証券保管決済機関の効率性ならびに容量の強化

3

オンライン上での活動の強化ならびにデジタル化を推進するためのバーチャルプラットフォーム開発に向け、資金3憶7500万香港ドルの香港貿易発展局への割当

 

 

HKFRS16号「リース」の税務上の取り扱い概要

2019年1月1日もしくはそれ以降から開始する会計年度から施行された、リースの認識、算定、表示および開示に係る原則を取り決めた香港財務報告基準(HKFRS)16号「リース」の導入により、香港税務局 (IRD)はその査定方法を説明したガイドラインを2020年9月17日に発表した。

 

 

HKFRS16号の概要

HKFRS16号では貸手の会計処理における実質的な変化はないため、貸手の税務処理にも変化はない。一方で、HKFRS16号ではオペレーティングリースかファイナンスリースかに関わらず、借手はリース契約から発生する資産(使用権資産)と負債(リース負債)を認識するという単一の会計処理が適用される。ただし、12か月未満の短期リースおよび少額資産のリースに関しては免除規定がある。

 

例えば、HKFRS16号の適用下では、オフィスや社宅の賃貸契約もリース契約とみなされ、借手は賃貸契約に係る使用権資産とリース負債を認識する必要がある。結果として、損益計算書では従来の会計処理にて計上されていた賃料に代わり使用権資産の償却およびリース負債に係る支払利息が計上される。

 

 

HKFRS16の税務上の取り扱い

以前は、支払リース料が課税対象利益の生成において発生したとみなされる場合、当該支払リース料は損金算入可能な費用として扱われていた。


しかし、HKFRS 16号の適用下では、支払リース料は損益計算書には反映されず、代わりに使用権資産の減価償却費とリース負債に係る支払利息が認識される。


IRDは、この状況の対策として以下の2つの実行方法を提案しており、法人税の計算において、納税者はいずれかの方法を選択することが出来る。

 

 

  • 実行方法1:使用権資産の減価償却費およびリース負債に係る支払利息を損金不算入として扱い、代わりに実際の支払リース料を損金算入として扱う。

 

  或いは、

 

  • 実行方法2:使用権資産の減価償却費およびリース負債に係る利息を損金算入として扱う。

 

 

実行方法1の説明:

実行方法1は、支払リース料を損金算入として扱うという従来の方法に従っている。 そのため、納税者は簡単に理解できるものと思われる。

 

 

実行方法2の説明:

一般的な状況

実行方法2の場合、リース期間に渡る使用権資産の減価償却費とリース負債に係る支払利息の合計は、結果的に実際に支払われたリース料の合計と同じになる。IRDは使用権資産の減価償却費とリース負債に係る支払利息は、認識のタイミングが違うのみで、収益的性質を有しており、損金算入が租税回避としての要素を含まないという見解から、納税者がこれらを損金算入することを認めている。

 

減損損失

HKFRS16号の適用下では、使用権資産からの便益に悪影響を及ぼす場合、使用権資産の帳簿価額を減額し、損益計算書上に減損損失を計上する必要がある。使用権資産の減損認識を行った結果、以降の年度において使用権資産の減価償却費は減少する。帳簿価額の減額が与える税務上の影響を算定するため、税務局は減損損失の認識額を、残存リース期間に渡って定額法で損金計上することを認めている。同様に、減損損失認識後、資産価値の戻し入れがあった場合(戻し入れの上限は減損損失認識前の帳簿価額)、残存リース期間に渡って、定額法によって益金算入の対象となる。 

 

 

公正価値モデルに基づき会計処理されるサブリース資産

リースおよびサブリース(転貸)契約の場合、HKFRS16号では、転貸者はヘッドリース(当初のリース)とサブリースを別個契約として会計処理することが要求される。ヘッドリースの使用権資産が投資不動産と定義されている場合、香港会計基準(HKAS)40号「投資不動産の公正価値モデル」を適用する必要がある。このような公正価値モデルでは、使用権資産はリース期間の各決算期末の市場価値にて認識され、公正価値の変動は、毎年損益計算書に計上される。ただし、計上された損益は未実現であるため、このような公正価値の変動において税効果は発生しない。

 

 

公正価値モデルでは、ヘッドリースにおける会計上の減価償却が認識されないため、公正価値の損益は益金不算入/損金不算入となる。一方、サブリースにおけるリース収益は課税対象となるため、納税者に対して公正を欠いていると言える。そのため、IRDは、実際に発生した賃貸費用を概算するために、初期認識された使用権資産の金額をヘッドリースの期間に渡って定額法で按分し、税額控除目的で使用することを容認するであろう。

 

 

 

結論

HKFRS 16号適用に対する税効果は企業も重大な影響を与える可能性がある為、法人税計算時にどちらの処理方法を選択するべきかを判断する為に、専門の税理士にアドバイスを仰ぎ、リース契約のレビューを行うべきである。上述のいずれかの処理方法を一度選択すれば、IRDは租税回避要素の兆候が無く、当処理方法を継続的に適用する事を要求する為、企業が別の処理方法へ途中で変更することは困難となる。

 

万が一、企業が処理方法を変更する場合、IRDは変更した理由を確認し、リース契約の詳細を要求するために質問書を発行する可能性が非常に高くなる。

 

 

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