労働関係の成立条件とは? 労働契約の重要性とは?


 「労働関係とは?」と問われたとき、みなさんはどのような関係を思い浮かべますか。例えば、雇用主が労働者を雇用し、労働者が労働力を提供する。それに対して雇用主が労働の対価を労働者に報酬として期日通りに支払う、といった関係を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、正式な労働関係を形成するためには、法の定めるさまざまな条件を満たす必要がございます。この法的条件はとても重要であり、労使紛争が起こった際に、その労働関係が法的条件を満たしているか否かによって、争議の結果に大きく影響を及ぼし得ます。場合によっては、雇用主と労働者の双方の権利が保障されなくなる結果となることもさえあります。
 それでは、労働関係を形成するとき、法的条件を満たしているかをどのように判断すればよいのでしょうか。下記の例をもとに考察してみましょう。

合法的な労働関係を形成するには、下記の3つの基本要素が必要となります。

  1. 雇用主と労働者は法律の規定する権利義務の主体となる資格を備えている。
  2. 労働者は雇用主の管理の下、その雇用主が設定した報酬を伴う労働に従事し、また両者の間には従属関係が存在する。
  3. 労働者の提供する労働が、雇用主が行う業務の一構成部分となる。

  上の例において、小穎は大学在学中、すなわち「学生」という身分のため、就業資格を満たしていませんでした。そのため、彼女と設計会社との間には労働関係は成立しておらず、労働仲裁委員会に申請することができませんでした。ちなみに、この会社は彼女が就業資格を満たしていないことを把握していたため、実習期間終了後にまとめて賃金を支払うという取り決めを結んだと思われます。結局、小穎は裁判所に起訴するしか方法がなく、民事法によって争議を解決することになりました。

  就業資格というものは、労働者側は満16歳以上で労働権利能力を備えていること、雇用主側は各種企業、個人事業主、公立学校および病院などの事業単位などを含む法に則って成立した組織であることが条件となります。しかし、現実には営業許可証を所有せずに隠れて活動を行っている企業も数多く存在し、法律の定める雇用主としての資格を備えていないことがあります。このような場合には労働関係は成立せず、一般民事法によって争議の解決をはかることになります。

 また、労働関係は報酬を伴う労働を前提に形成されなければならず、その関係が成立して初めて『労働法』が適用可能となります。また、新卒大学生の多くは就業経験がないため、就職活動が困難となっており、学生の中には無給でも働きたいと考える学生もおります。しかし、無給を条件とする労働関係は『労働法』の適用を受けることができません。

  正式な労働関係が成立していなければ、『労働法』による保護を受けることができません。しかし、実際のところ企業が従業員を雇用する際に労働契約を交わしていない場合でも、事実上の労働関係が形成されていることがあります。この件について、以下の例を基に考察してみましょう。

 上記のケースは書面による契約はありませんが、労働関係が形成される条件を備えているといえます。第一に、双方とも就業資格に符合しており、一方は雇用主、もう一方は労働者という関係になっている。第二に、労働者と雇用主とは従属関係にあり、雇用主の指揮のもと、労働者は雇用主の生産活動に従事している。第三に、雇用主の労働者に対する報酬の支払方法が特定されていることなどが挙げられます。この例において、2月25日以降王さんは製造工場の一従業員となっています。鐘さんの王さんに対する退職勧告は、王さんを職場からの排除することを意味していますが、3月10日の時点において、王さんは継続して製造工場にて勤務しており、労働契約も解除されておらず、賃金も支給されていました。このため、王さんと製造工場との間には事実上の労働関係が成立していたと考えられるので、王さんの労災認定は認められると思われます。

 雇用主と労働者とが書面による労働契約を締結していなくても、口頭による承諾やその他の証拠となりうる行為により、事実上の労働関係を形成すると認められることがあります。事実上の労働関係を形成している場合、2種類の状況が考えられます。まず第一に、書面による労働契約を交わさなかったが、実際に労働に従事していた、第二に契約期限が満了になっても更新手続きが行われず、継続して労働に従事していた、などが考えられます。実際に、賃金の支給記録や雇用主が労働者に発行した従業員証、雇用主の雇用記録などの証拠により、労働関係が存在するか否かを判断することができます。

 しかし、最も理想的なのは雇用主と労働者とが最初から書面形式による契約を交わし、双方の権利・義務を明確にしておくことです。雇用主としては書面による労働契約に基づいて従業員を管理し、その権利や義務を行使することができ、またその書面契約は双方の紛争処理に必要となる重要な根拠ともなります。さらに、労働契約の当事者は就業規則が労働契約の付属文章であると取り決めることができます。また、契約内容に「組織の制定する就業規則を労働契約の附属書類とし、労働契約と同様の効力を有する」という文章を明記することにより更に効果的になります。就業規則は、将来起こり得る紛争の回避を目的としており、労働組合を経て採択され、同時に会社内部の全職員に正式に公示されなければなりません。その後会社は就業規則を配布し署名・捺印させ、従業員の档案(個人情報ファイル)に保管するのが安全でしょう。

 2006年3月20日、人大常委会が『労働契約法(草案)』(以下『草案』)が公表されました。『草案』第九条における「労働契約は書面形式にて締結しなければならない」という条文は、雇用主が法的義務を逃れ、労働者と書面による労働契約を締結しないという事態を避けるために作成されたものです。また『草案』第九条は労働契約の期間を、期間の定めのあるもの(固定期限)、期間の定めのないもの(無固定期限*)、一定の仕事の完成を以って期限とするものという3種類に分類しています。労働契約が未締結であっても双方の当事者間に事実上の労働関係が成立している場合、双方は期間の定めのない労働契約を締結していると見なされるので、雇用主は速やかに書面による労働契約を締結しなければなりません。この条項の意図は会社に直ちに労働契約をするよう促すものであり、労働者の権益を保護するものです。また、書面契約を伴わない労働関係は一律して期間の定めのない労働契約と見なされますので、企業にとって、これを無視することはリスクが高まることを意味しています。

*「期間の定めのない労働契約(無固定期限的労働合同)」とは、中国では終身雇用を意味しています。この契約は、労働法が規定する解除条件を契約の終了条件としており、雇用主が労働契約を解除する場合、労働者に経済的補償を支払う義務を負うことになります。

総括

 労使紛争が受理されるには合法的な労働関係が大前提となります。労働関係を成立させるには、双方が権利義務の主体となる資格を備え、労働に対する報酬関係を築き、労働が雇用主の業務の一構成部分となる、といった要素が大切になります。また、労災認定拒否事件のように、書面契約がなくても事実関係により労働関係が成立するので注意が必要です。また、上述の『草案』が採択された場合を考慮すると、書面契約の締結は将来においても必ず実行しなければなりません。

本文章は弊社の中国法律部により編集したもので、現在執筆中にある『中国労働法』の一部抜粋したものであり、本書は2007年末に出版を予定しております。法律に関する問題をお抱えならば、貴社からの連絡をお待ちしていると共に、我々の擁する経験豊富な中国法律家が詳細な解決策をご提示致します。同時に、弊社に訪問して頂ければ、法律専門家が一時間の面談を無料にて実施致します。

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