労働者との雇用契約解消における法的見解

A. はじめに

労働法とはほぼすべての国家において、労働者を保護するための法律であり、雇用主の保護を目的とするものではない。そして、中国もこの例外ではなく、中国の労働者と雇用者間の関係は歴史的に以下のように特殊な性質をもっている。

1. 1970年代に共産党が中国の舵取りをするようになって以降、国家が実質的な雇用主となってきた。全労働者が同額の給与を支給され、労働者は目標達成などの圧力を感じることは無かった。国家は実質、国民の生活を「揺りかごから墓場まで」面倒見る必要があった。

2. 開放政策の実施とその後の急速な技術・経済発展により、現在では多くの労働者が民間企業で働いている。これら民間企業は市場競争にさらされており、そこで働く労働者も企業との雇用関係を継続するには結果を残さなければならなくなった。そして、しばしば労働者が肉体的、精神的な疲労について政府当局に不満をぶつけることとなった。

3. 市場経済が発展するに従い、中国は徐々にその社会責任を民間企業に移管する過程にあるということができる。

4. 中国の労働法では、雇用主が自由に労働者を雇用・解雇することができるかのように見えるが、実際は労働者の解雇についての記載が非常に曖昧かつ具体性を欠いており、労働者を実際に解雇する必要が生じた場合、雇用主は思わぬ問題に直面する可能性が否めない。

現在、労働者不足が深刻化しているにも関わらず、新中国労働法では雇用主による労働者の解雇をより困難にしている。不適格な労働者を雇用する失敗は避けることができないものだが、雇用主はそのような労働者にたいしてどのような措置を講じればいいのだろうか?

労働者を効率的に管理するために、雇用主は労働者を公正に扱う必要に迫られる。即ち、優秀な労働者にはそれに見合った額の報酬を与え、能力が劣る労働者にもそれにふさわしい待遇で対応するということだ。そうしなければ、優秀な人材は会社を辞めてしまい、能力が劣る労働者が会社にしがみつくという悪循環に見舞われてしまう。新労働法の施行により、能力の低い労働者を解雇することがより困難となってしまうため、雇用主は多大な損害を被ることが予想される。

B. 雇用関係

労働法が適用される条件として、雇用主と労働者との間に雇用関係が成立していなければいけない。雇用関係が成立するには、雇用主と労働者の関係が「雇用者」と「被雇用者」の関係となる必要がある。また、契約社員として企業で仕事をする場合、その社員と企業との間には雇用関係は発生しない。「雇用者」と「被雇用者」の関係以外にも、雇用関係が成立するための条件として以下の3点が挙げられる。

(1) 雇用側の企業が法律に則り設立されており、労働者を雇用する資格が有ること。
(2) 労働者は16歳以上であり、且つ学生ではないこと。
(3) 仕事に対して対価が支払われなければならず、また仕事内容が合法的であること。

雇用関係の有無は契約の事実があるかどうかにより最終的には判定される。つまり、もし書面による労働契約がなければ、雇用関係は成立していないこととなる。また、労務提供契約を企業と結んでいるからといって労働者が必ずしも企業と雇用関係にないとは言い切れない。もし企業が雇用関係を曖昧にするために意図的に労働者を「労務提供者」として扱ったり、書面での労働契約を結ばなかったりした場合、将来的に高い代償を支払うことが余儀なくされる。

C. 労働契約

大抵の場合雇用関係は、労働契約書と社内規定が労働法で定められている規則に反していなければ労働契約と従業員手帳などの中に記されている社内規定に則ることとなる。

多くの企業は労働関係を調整する際、社内規定に頼りすぎる傾向が見られる。例えば、社内規定に背いたという理由だけで従業員を処罰、解雇したりする企業がそれに当てはまる。これは以下の理由から到底好ましいとはいえない。

(1) 社内規定が策定された際、当該従業員が社内規定の内容の準備・調整過程に参加していない。
(2) しばしば、社内規定が記されている手帳が労働者との契約時に見せられておらず、たとえ社内規定が労働者との契約において大きな比重を持つものであったとしても、それが労働契約法の第三条に記される5大原則規定を満たしているものであるかどうかは疑問視される。その5大原則規定とは、「合法性」、「公正性」、「平等と意思」、「交渉と同意」、「誠実さと信頼性」である。もし従業員が労働契約書にサインをする際、社内規定を見て同意する機会が与えられず、労働契約書の内容が第三条に記されている5大原則に則ったものでない場合、契約の一部、または全部が無効となってしまう恐れがある。
(3) 社内規定は多くの場合、最新の注意を払って書かれておらず、しかも雇用主に有利な内容となっている。労働者との関係を調停する必要が生じた場合、こうした社内規定が法的に有効なものとなるかどうかは非常に疑わしい。
(4) 従業員を解雇する際は主に社内規定が適用される場合が多く、そもそも労働契約書には罰則についての仔細が記載されていない。つまり、社内規定にもとづいての従業員解雇は違法である可能性が高くなる。

D. 労働契約の終了

ここで言う「労働契約の終了」とは、労働契約期間が満了する前の労働契約の終了(解雇)を意味することとする。従業員が企業を離れるということは、雇用主にとっての損失を意味する。優秀な社員が企業を離れた場合、企業にとってサービスの質低下を意味することとなる。また、能力の劣る社員は既に企業に大きな損失を与えており、彼らとの労働契約を適切な形で終了させなければ、企業は更なる損失を被ることとなってしまう。

労働契約の終了は以下の4つの労働契約法条項に基づいてのみ有効となる。

● 第36条
● 第39条
● 第40条
● 第41条

E. 第36条

 第36条は雇用主と労働者双方の同意による労働契約の終了を認めている。つまり、労働契約の終了には労働者の同意が必要不可欠となる。経済保証金については、第36条では雇用者と労働者のどちらが労働契約終了を持ち出したかが焦点となる。もし労働契約終了の話し合いを従業員が持ち出した場合、雇用主は経済保証金を支払う必要はない。しかし、労働契約終了の話し合いが雇用主から持ち出された場合、雇用主は労働契約法第46条(2)に基づき経済保証金を支払う必要が生じる。

つまり、雇用者は経済保証金を免れるためには、従業員が労働契約終了の話を持ち出したことを示す書類を用意し、従業員の署名を得る必要がある。もし書面による従業員からの同意書がない場合、従業員が会社を辞めた後に雇用者に経済保証を請求されたり、最悪の場合は違法解雇であると告訴されることも考えられる。書面での証拠がなければ、雇用主が労働仲裁所や裁判所で労働契約の終了を持ち出したのは従業員の方であることを証明することは極めて困難になってしまう。

F. 第39条

雇用者は以下の6つの状況下において、経済補償金を支払うことなく従業員を解雇することが可能:

(1) 試用期間中に、従業員の能力が基準に達していないことが判明した場合。
(2) 従業員が会社の内部規定に対して深刻な違反を犯した場合。
(3) 従業員による業務怠慢または不正行為があり、雇用者が大きな損害を被った場合。
(4) 従業員が他の雇用者と雇用契約を結び、仕事に支障をきたす場合、または雇用者が注意したにもかかわらず、状況の改善が見られない場合
(5) 虚偽の報告をつたえる、もしくは雇用者の弱みに付け込むことにより、雇用者は本来望んでいない雇用契約を結ぶことになった、または雇用契約を修正することになった場合。
(6) 従業員が犯罪行為により起訴された場合。

G..第39条(1)採用基準を満たしていないことが判明した場合
労働法は「採用基準」について詳しく規定しておらず、採用基準に関しては雇用者が定義付けすることとなる。そのため、雇用者は当該従業員の能力が要求に達していないことを証明する責任を負うこととなる。しかし、従業員を雇用する段階でしっかりとした採用基準の定義付けがされていないと、従業員を解雇する段階で採用基準を満たしていないことを証明するのは困難となる。雇用者が従業員を上記の理由で解雇できるのは試用期間中であり、試用期間後は不可能となる。労働法第21条によると、雇用者は試用期間にある従業員との労働契約を終了する理由を従業員に伝えなければならないとしている。

もし試用期間が労働法第19条で定められている期間よりも長く設定されている場合、従業員の解雇は法定の試用期間中に行われなければならず、法定試用期間を過ぎてからの解雇は不当解雇となってしまう。能力が劣る従業員を試用期間後に解雇する必要が生じた場合は、雇用者は労働法第40条(2)の規定に則る必要がある。

H.第39条(2)従業員による内部規定の深刻な違反
労働法は「内部規定の深刻な違反」について規定しておらず、定義付けは雇用者の責任で行うこととなっている。そのため、雇用者は雇用関係を解消したい従業員を解雇する手段としてこれがベストの方法であると思いがちだが必ずしもそうとは言えない。第39条(2)を適用して従業員の解雇を行う場合の欠点は以下の通りである:

(1) 雇用者が従業員を解雇する際に頼りとする特定の社内規定は労働契約法の第3条に記される5つの基本原則である「合法性」、「公正性」、「平等と意思」、「交渉と同意」、「誠実さと信頼性」に準拠していない可能性がある。ほとんどの社内規定は細心の注意をはらって書かれておらず、労働法の規定にも準拠していない。したがって、「合法性」、「公正性」、そして恐らく「平等と意思」が欠けたものになっている可能性がある。
(2) 社内規定の適用・改訂の過程において手続き上の欠陥がある可能性がある。第一回目の社内規定の適用とその後の改訂の過程において、従業員の代表者は社内規定について協議し、意見を述べる場を与えられる必要がある。社内規定は従業員の代表者と雇用者が協議後、「平等性」に基づき改定される必要がある。また、社内規定は印刷物として従業員がいつでも確認できるようにしておくべきものである。大抵の場合において、社内規定は従業員の代表者と相談することなく適用されているのが実情である。
(3) 雇用前に、従業員が社内規定を読み、それについて交渉する機会を与えられていない。社内規定を仕事への応募者が特定の規定について不満を持っているとの理由で変更するのは現実的ではないが、最低でも労働者との雇用契約を結ぶ前に応募者に社内規定を見せる必要がある。応募者は社内規定を読み、その内容について疑問が有れば質問する機会が与えられるべきである。もし応募者が特定の規定を遵守するのに問題を感じている場合、雇用主はその応募者を雇用するべきではないかもしれない。その時、雇用者は応募者を欺く方法でその問題の解決を図るべきではない。例えば、規定の変更を約束したり、規定は当該応募者については特例として当てはめないと約束したりすることがそれに当たる。もし応募者が社内規定の遵守に疑問を抱かない場合、雇用者は応募者に「社内規定を読み、その内容を遵守することを約束する」と署名させるべきである。
(4) 社内規定の違反が雇用関係の終了につながることが労働契約書に記されていない。社内規定を準備し適用する段階で法的問題が起こり得る可能性を徹底的に洗い出し、解雇の対象となる全ての社内規定違反について正式に労働契約書へ明確に記される必要がある。

従業員を十分な時間をかけずに準備した社内規定に基づき解雇すると不当解雇と訴えられた場合雇用者は負けることになり、従業員に対し賠償責任を負うこととなる。雇用者は労働法第39条(2)を適用し労働者との雇用契約を解消する場合、最新の注意を払う必要がある。経済補償金を支払うのを避ける目的のみに第39条(2)の適用を試みるのはリスクが伴うことを肝に銘じておくべきである。

I.第39条

(3)従業員による重大な業務怠慢または不正行為

もし従業員による業務怠慢または不正行為などがあった場合、その従業員を解雇するのに十分な理由であると思われがちだが実際にはそれほど簡単でもない。従業員を業務怠慢や不正行為により解雇するためには、雇用者は多大な危害を被ったことを証明する必要がある。つまり、雇用主は従業員による業務怠慢及び不正行為により多大な危害を被ったことを証明できない限り、当該従業員を第39条(3)に則り解雇することはできない。
労働法では「重大な業務怠慢」及び「不正行為」を詳細に定義付けしていない。ある行為が「重大な業務怠慢」に当てはまるかどうかは実際のところ状況をどのように解釈するかによるところが大きい。
「不正行為」は少なくとも以下の二つの要素を含むものである。「私的な事業を営むこと」と「不誠実さ」がそれに当たる。「私的な事業」とは正式な企業形態である場合もあるが、企業の中での職責を乱用し私益を肥やすこともこれに当てはまる。「不誠実さ」とは人を欺く行為も含まれるが、ただ単に雇用者へ情報を公開しない場合もこれに該当する。また、通常「不正行為」を行う従業員はその行為により有形/無形の利益を得るが、本来雇用者が得るべきである利益を従業員が享受し、従業員がそのことを雇用者に報告しない場合も「不正行為」を行っていると見做される点がより重要なポイントとなる。
労働法を見てみると、雇用者が被る「危害」について非常に限られた解釈であることが分かる。労働法で触れられている「危害」とは、生産の停止や材料の紛失、資源の無駄遣い、など主に目に見える損害を指す。しかし、多くの雇用主にとって、取引や顧客からの信頼喪失、企業統制への悪影響、または職場の雰囲気悪化など、その他の目に見えない損害も同様に無視できないものであるはずだ。そのため、雇用者は労働契約書または社内規定の中に「雇用者への重大な損害」について、しっかりと定義付けを行う必要がある。
「不正行為」は「重大な業務怠慢」よりも悪質である。「不正行為」を行った従業員の忠誠心と誠実さは疑われ、一度「不正行為」を行った従業員とは労働契約を継続するのが困難となる。なぜなら、労働契約が有効であるための5大原則のうちの「誠実さと信頼性」が成立しなくなるからである。他国の例を見てみると、「不正行為」は解雇対象となる行為であり、雇用者は必ずしも損害を被る必要はない。
一般的に言うと、ベンダーの選定に影響力をもっているベテラン社員のほうが「不正行為」を行う確立が高い。「不正行為」についての一般的な定義は存在しないため、雇用者は「不正行為」について労働契約書もしくは社内規定の中に明記しておく必要がある。また、雇用者は高いレベルの情報公開基準を設けると同時に、「重大な損害」についての基準をできるだけ低くするように努める必要があるかもしれない。

J. 第39条

(4)雇用関係の重複

多くの国では、従業員が二つ以上の企業と雇用関係に有る場合、その従業員は解雇の対象となってしまう。これは従業員の「誠実さと信頼性」が疑問視されるためである。
しかし、中国では他の国と事情が多少違う。従業員を解雇するためには、雇用関係の重複が従業員の業務遂行に多大な影響を与えていることが条件となる。もしその影響が深刻なものでない場合、雇用主は労働契約を第39条(4)に則り解除する事はできない。まず雇用主はその従業員にもう一方の雇用者との雇用関係を絶つよう要望し、もしその要望が受け入れられなかった時点で従業員の解雇に踏み切るほうがいいかもしれない。‘
低所得の労働者であり、且つ当該労働者が家族で唯一の収入源であったり、病人や年老いた両親の面倒を見る必要がある場合、それらの労働者が二つ以上の企業と雇用関係にあったとしても保護の対象となる。雇用関係の重複は「利益の対立」と「誠実さ・忠誠さ」の点で問題がある。雇用関係の重複が雇用主へ与える損失はベテランの高給社員によるもののほうが、経験が浅く特定の技術を持たない社員によるものよりも大きくなってしまう点に注意が必要だ。
また、企業と二重に契約を結んでいる従業員以外にも、他の企業や個人にコンサルティングやアドバイザリーのサービスを提供している従業員の存在も軽視すべきではない。
労働法は雇用主が二重に雇用契約を結んでいる従業員(特に高収入の幹部職員)を解雇するのは禁止していない。そのため、雇用主は幹部職員と雇用契約を結ぶ際、労働契約書に二重の雇用契約や報酬の支払有無に関わらず、他の企業や個人にサービスを提供し、その結果として雇用者が損失を被った場合は解雇事由になることを明記する必要がある。
給与の低い社員や職位の低い職員に関しても同様、二重に雇用契約を結ぶことや業務に影響を及ぼす副業の禁止し、他の仕事をする必要がある場合にはまず雇用者に許可が義務付けられると労働契約書の中に盛り込むと同時に、雇用者の許可がないのに他の仕事をすることは解雇事由になることも明記する必要がある。

K. 第39条

(5)雇用契約を結ぶ際に従業員が虚偽、脅迫などを用いた場合

恐らく脅迫や経営者の弱みに付け込み雇用契約を勝ち取る従業員は多くないと思われるが、偽の証明書や免許書の使用、経歴の詐称を行うことにより雇用契約を結ぶ従業員は珍しくない。虚偽により結ばれた雇用契約は労働法第3条の「合法性」、「平等性と意思」、そして「真実性と誠実性」を欠くこととなるため、雇用契約を無効とすることができる。この場合、雇用者は従業雇用契約の際の虚偽を証明する必要がある。
もし従業員が偽の証明書やライセンスを使い、雇用主との雇用関係を結んだ場合、偽の証明書やライセンスは従業員解雇の際の重要証拠となりえる。ただ、雇用契約を締結する際に証明書やライセンスの提出をもとめず、従業員の発言を信用して雇用契約の締結に至った場合、雇用主が従業員の虚偽発言を証明するのは困難となり、従業員の能力が雇用基準を満たしていないなどといった他の理由により解雇する必要が出てくるかもしれない。一般的に、従業員が虚偽の発言や自らの職歴について誇張していた場合、その従業員は雇用基準を満たしていないことになる。しかしその場合、雇用主がその従業員を解雇できるのは第39条(1)に有るように、試用期間内に限られる事となる。
もし雇用主が人材不足の影響などで従業員の経歴虚偽などを知っていたにも関わらずその従業員を採用した場合、雇用主は従業員により欺かれたわけではなく、自らの意思で従業員と雇用契約を結んだと見做され、雇用主は第39条(5)を適用することでその従業員を解雇することはできなくなる。また、雇用契約の締結後に経歴に関する虚偽が判明し、それにもかかわらずその従業員を継続雇用している場合も同様、第39条(5)を適用することで従業員を解雇することは困難であると思われる。
労働契約は従業員との雇用関係は「真実と誠実さ」に基づき成立するものであり、労働契約を結ぶ際に(労働契約の更新も含む)従業員が経歴詐称や虚偽の発言を行い雇用契約を得た場合、それは解雇の理由となる。労働契約締結後に雇用主から資格やライセンスの証明書の提出を求められた場合、従業員は自費でそれらを準備し、自らの能力や経歴を証明する必要がある。
因みに、「脅迫」について労働法は詳細や具体的な定義付けを行っていない。

L. 第39条

(6)従業員が犯罪で起訴された場合

従業員が犯罪で起訴された場合、当該従業員を解雇する前に、雇用主は関連当局へ事実を確認しなければならない。雇用主は従業員を民事訴訟にかけられたり、犯罪以外の事実で告訴されたという事実のみで従業員を解雇することはできない。

M. 第40条

第42条にある特例職員を除き、雇用者は以下の3つの条件に当てはまる従業員を一ヶ月前に告知すれば、経済補償金を支払うことにより解雇することが可能である。

1) 従業員が仕事以外の原因により病気または怪我をし、治療を終えた後も元の仕事にもどれなかったり、雇用者に与えられたその他の業務を遂行することができない場合。
2) 従業員がトレーニング終了後も業務をこなすことができない、あるいはその他の業務に移動後もその業務をこなすことができない場合
3) 労働契約締結後に事業環境に大きな変化があり、契約を遂行することが不可能となり、両者が交渉後も労働契約について歩み寄りが見られなかった場合。

因みに第42条にある特例職員とは以下のいずれかの条件に該当する従業員を指す。

1) 健康診断をまだ受けていないが職業病を患っていると思われる職員、もしくは職業病である、またはその可能性があると診断された職員。
2) 雇用期間中に、仕事中の怪我の影響で業務能力が低下したと認められた職員、または職業病にかかった職員。
3) 仕事とは関係のない病気または怪我であるが、規定の治療期間中に有る従業員
4) 妊娠中または、陣痛、授乳期にある女性従業員
5) 15年以上、同雇用者の下で働いており、しかも一般の退職年齢から数えて5年未満の従業員
6) その他の法律に規定されている条件

N.第40条

(1)病気の従業員、もしくは業務遂行が不可能となった従業員

雇用主は病気または仕事関連以外が原因となる怪我をした従業員について、以下の条件を満たせば解雇することができる。
1) 規定の治療期間が終了している。
2) 今まで従事していた業務以外の新業務に従事するチャンスが与えられた。
3) 新業務も遂行することができなかった。
このように、第40条(1)を適用することにより従業員を解雇する場合、雇用者は従業員に新しい業務を割り当て、その業務を遂行することが可能であるかテストする必要がある。もちろん、雇用者がすでに定期的に全従業員に対して業績評価を行っている場合、そのテストは公正なものであると考えられるが、基本的にはテストの目的で割り当てられる新業務は以前の仕事と関連する業務であり、その従業員にとって難しすぎる業務であってはいけない。さもないと、従業員に不当解雇として訴えられる恐れがあるので注意が必要である。

O.第40条

(2)能力の劣る従業員

新労働法では能力の劣る従業員を解雇するのがより困難となる。一般的に、これらの従業員は自らの被雇用者としての権利をしっかり認識しており、できるだけ長く雇用者のもとにとどまろうと懸命である。そして解雇を実行する場合、これらの従業員は労働仲裁所、または裁判所に雇用者を不当解雇として訴える可能性がとても高い。スタッフ間のモラル維持や優秀な従業員を維持するために、能力の劣る従業員を早めに解雇することは経営者にとっての必須事項であるといえる。
試用期間後に能力の劣る従業員を解雇したい場合、雇用者はそれら従業員へ何度かチャンスを与える必要がある。例えば、従業員に訓練を施したり、別の仕事を割り当てたりすることがそれに当たる。そして、それにもかかわらず従業員が業務を遂行できない場合、雇用者は第40条(2)に基づき彼らを解雇することが可能となる。労働法には雇用者が従業員にチャンスを与えてからどれくらいの期間で業務の遂行能力を見極めなければならないかは規定されていない。そのため、状況に応じてその期間は公正なものである必要がある。
従業員に雇用解除について訴えを起こされないように、社員の評価はできる限り客観的である必要があり、個人的、または主観的な基準に基づいての評価は避けるべきである。もし雇用者が従業員に対して定期的なパフォーマンス評価を行っておらず、従業員の業績が明らかに劣ることを証明することができなければ、不当解雇との訴えに対して自らを弁護することが非常に困難となるだろう。
この種の問題について最も好ましい解決方法は、能力の劣る従業員を試用期間内に即刻解雇することである。また、雇用主は定期的な従業員のパフォーマンス評価プログラムを築き上げ、社内規定に最低限求められる業務遂行基準を設置し、その基準を満たさない従業員に対して講じられる措置について詳しく明記しておく必要がある。
もし従業員が明らかに新しい業務を要求されるレベルでこなすことができない場合、第36条または第40条(1)、第40条(2)に基づいて従業員を解雇するのが好ましい。どちらの場合も雇用者は経済補償金を支払う必要が生じるが、第40条(1)や第40条(2)を適用する場合には下記に示すような欠点があることを留意する必要がある。
(1)雇用関係の解消に時間がかかる
(2)能力が無く、業務の遂行が難しい従業員にそのことを伝える際、社内に険悪な空気が流れ、労働争議を誘発する可能性がある
(3)雇用主は1ヶ月前の告知をするか、1か月分の給与を支払うかしないといけないため費用がかさむ。

P. 第40条

(3)事業環境の重大な変更がある場合

労働法は「事業環境の重大な変更」について、詳細を定義していない。そのため、雇用者自らがこの言葉の定義を労働契約書に明記しなければいけない。「事業環境の重大な変更」は経営者の財務状況の変化を意味することが多いが、会社合併、組織変更、不採算事業からの撤退、工場の閉鎖などもこれに当てはまる。
第40条が解雇理由として適用されるためには、「事業環境の重大な変更」により労働契約の遂行が不可能になる必要がある。例えば、仕事場の移転や各種事情による仕事の消失などである。
第40条(3)の適用で従業員を解雇するには、従業員の抵抗がある場合に以下を条件を満たさなければいけない。
1).事業環境に重大な変化があった。
2)事業環境の重大な変化は従業員を雇用する際には予測できなかった。
3).事業環境の変化により労働契約を継続することが不可能となった。
4)雇用者と労働者は事業環境の変化がもたらす労働契約への問題点を克服すべく協議を重ねたが、双方が歩み寄らず合意に至らなかった。
この際、労働法第3条に明記されている労働契約を形成する5大原則に則り、雇用者は従業員と誠意を持って交渉に挑む必要がある。
雇用者は第40条(3)を適用することにより、試用期間中の従業員を解雇することはできない。これは、試用期間が最大でも6ヶ月であるため、従業員との契約時に事業環境の重大な変化が予測できなかったと言及することができないためである。

Q. 第41条

正確に言うと、労働法第41条は雇用関係の解消に関するものというよりも、大規模リストラの際のコンプライアンス面の要求に近い。第41条に明記される以下の4条件における共通点は労働契約の履行が不可能となる点にある。
1)企業破産法により事業再編が必要
2)生産を継続することができない問題を抱えている
3)製品、研究開発、ビジネスモデルに変更があり、労働契約の修正後もリストラを行う必要がある
4)客観的に見て、労働契約を結んだ時と経済環境が大きく変化しており、労働契約の履行が不可能になってしまった
しかし、雇用者は第41条の適用により、第42条に明記される「特例従業員」を解雇することはできない。

R. 大規模リストラの際のコンプライアンス面の要求

リストラで20人以上、もしくは従業員の10%以上を解雇する場合、経営者は以下の要求に従う必要がある。
1.労働組合またはリストラを行う全社員に対して30日以上前に通知すること。
2.労働組合または従業員の意見を聞く。
3.労働局にリストラ提案書を提出する。
リストラを敢行する際、以下の従業員は優先的にリストラの対象から外れることとする。
1)比較的長期の固定期間の労働契約を有する従業員。
2)無固定期間の労働契約を有する従業員。
3)家族の中で唯一の労働者であり、老人や幼少の子供の面倒を見る必要がある従業員
リストラ提案は上記の規定を遵守して初めて効力を発揮することになる。リストラ提案は労働組合や労働局の承認を必要とはしないが、会社がどの社員を解雇するかを巡っては労働組合や労働局と争論に発展する可能性がある。

S. 第41条

(1)企業破産法に基づく事業整理

雇用者が企業破産法に基づきリストラを行う場合、多数の従業員を解雇するのは比較的容易となる。雇用者がリストラから6ヶ月以内に従業員の雇用を再会する場合、リストラ対象となった従業員に告知する必要があり、同等の条件であればリストラ対照となった従業員を優先的に雇用する必要がある。
もしリストラが会社の資金難によるものであれば、労働組合と労働局は影響力を発揮できないと思われる。また、従業員からも不当解雇として訴えられることもまれである。しかし、リストラがビジネスモデルや生産ラインの変更が原因で、会社経営は利益を順調に伸ばしている場合、リストラ慣行時期が不況時や失業率の高い時期に重なれば、大規模リストラは労働組合や従業員の代表者により反対されるかもしれない。

T. 不当解雇

雇用関係の解除が合法的でなければそれは不当解雇となる。また、雇用者は従業員をたとえ解雇したわけでなくとも、第42条の特例従業員との雇用契約が満了し、第45条の要求に従い労働契約の延期をしない場合は不当解雇に該当することになる。そして、雇用契約の解除が不当である場合、雇用者は罰則として多大な被害を被ることとなる。
1.労働法第48条は従業員に雇用契約終了後も労働契約を継続する権利を認めており、従業員がそれを望む場合、雇用主はその従業員を継続して雇用する必要がある。これは経営管理上非常に大きな問題となる可能性がある。
2.もし不当に解雇された従業員が労働契約の延長を望まない場合、労働法第48条は従業員に対し不当経済補償金の支払いを要求しており、その額は通常の経済補償金額の2倍となる。因みに、この経済補償金は通常の経済補償金とは別途追加で支払われるべきものである。
また、雇用者が一度解雇した従業員を再雇用するように強制され再雇用した場合、将来、同従業員をめぐり不当解雇の問題が再燃する可能性は非常に高いと思われる。

U. 経済補償金

雇用者は以下の状況を除き、従業員との雇用契約を解除する際に経済補償金を支払う必要がある。
(1) 従業員による自主的退社(第36条)
(2) 従業員自らが辞表を提出した場合(第37条)
(3) 第39条の理由による解雇
(4) 労働契約期限が満了し、従業員が契約更新を望まなかった場合(契約更新の条件が元の条件を下回っていない場合に限る)。
(5) 労働契約が満了し、従業員が年金等の退職手当を享受する資格を有している場合
(6) 従業員が死亡した場合、または裁判所により死亡認定を受けた場合、または行方不明になった場合。
経済補償金の額については以下の公式により決定される:
経済補償金=補償が必要となる月数×給与額
現在の従業員との契約期間12ヶ月ごとに、雇用者は1ヶ月分の経済補償金を支払う必要がある。もし雇用期間が6ヶ月以上12ヶ月未満である場合も、雇用者は1ヶ月分の経済補償金を支払わなければいけない。もし雇用期間が6ヶ月未満であった場合は、給与の半月分の経済補償金を支払う必要がある。経済補償金の上限は最高で12ヶ月分の給与額となる。
因みに給与額とは従業員の過去12ヶ月間の平均月額給与または前年度の現地月額平均給与の3倍を比べてどちらか低いほうを採用することとなる。
つまり、広東省の場合、不当解雇の際に雇用者が支払うこととなる経済補償金と不当解雇に対する補償金はそれぞれ最高で108,972元と217,944元ということになる。

本文章は弊社の中国法律部により編集したもので、現在執筆中にある『中国労働法』の一部抜粋したものであり、本書は2007年末に出版を予定しております。法律に関する問題をお抱えならば、貴社からの連絡をお待ちしていると共に、我々の擁する経験豊富な中国法律家が詳細な解決策をご提示致します。同時に、弊社に訪問して頂ければ、法律専門家が一時間の面談を無料にて実施致します。

青葉顧問(広州)有限公司
メールアドレス:chinalegal@aoba.com.hk 電話:86 (20) 3878 5115
住所:中国広州市天河区体育西路109号高盛大厦12楼B室 

© 2008 Aoba CPA Ltd. All rights reserved.

お問い合わせ
IGAFとは
企業カレンダー
リンク
会員ページ
注目事項
FAQ
月間為替レート
掲載記事
香港関連規定
中国関連規定
採用情報
サービス
会社概要
News
Home