香港法人を買収する前に必ず知っておきたい「税務デューデリジェンス」の基礎
「買収した香港子会社に、後から多額の追徴課税が発覚した」──このようなケースは、決して珍しい話ではありません。
香港での企業買収を検討されている日本企業の皆さまにとって、税務リスクの把握は買収の成否を左右する最重要事項のひとつです。
今回は、香港法人を買収する前に知っておくべき、対象企業の税務リスクや未払税金の調査・評価を行う税務デューデリジェンス(以下「税務DD」)の基礎を解説します。
香港の税務調査は過去7年分遡及される
対象企業である香港法人の買収後、香港の税務局(IRD)から税務調査が入り、売り手時代の申告漏れや過少申告が発覚した場合、その納税義務は原則として「会社」に帰属します。つまり、買い手は売り手が対象企業に残した税務リスクをそのまま引き継ぐことになるのです。
IRDは、企業の税務申告について原則として過去7年分を遡及して調査・更正を行う権限を有しているため、買収時点においては、自分達が管理していなかった対象企業の過去7年分の税務リスクを負うことになります。
また香港では、法人税の申告漏れなどの未払いだけでなく、従業員給与に係る申告(BIR56A/IR56B)の未提出、印紙税の未納、関連会社間取引の移転価格問題などといった項目が数多くあります。
これらの問題が起因とする未払税金の存在が買収後に発覚すると、追徴課税に加えて延滞税や罰金が加算される可能性もあり、買収価格の毀損につながります。
税務DDで確認すべき主な調査項目
税務DDでは、対象会社の過去の税務申告書、財務諸表、会計帳簿、契約書などを精査し、潜在的な税務リスクを洗い出します。主な調査項目は以下のとおりです。
- 法人税申告の適正性:申告漏れの有無、過去にIRDから質問状(Letter of Enquiry)を受けていないか
- 従業員関連申告:BIR56A(雇主報税表)やIR56B(給与明細)が適切に提出されているか
- 印紙税:株式譲渡や不動産売買、賃貸借契約に係る印紙税が適正に納付されているか
- 移転価格:関連会社間取引の価格設定が独立企業間価格(Arm’s Length Price)に適合しているか
- 税務調査歴:過去にIRDの調査を受けたことがあるか、現在進行中の調査があるか
- 未払税金・納付状況:過去の税金がすべて納付済みか、延滞がないか
税務DDで判明した問題を「買収条件」に反映する
税務DDは単なる調査で終わらせるのではなく、その結果を買収契約に反映させることが重要です。たとえば、以下のような対応が一般的です。
- 判明した税務リスクを考慮して買収価格を減額交渉する
- 売り手に対して、買収後に発覚した税務債務を賠償する旨の**補償条項(Indemnity Clause)**を設ける
- 売り手が税務申告の訂正や追徴税額の支払いを行うことをクロージングの前提条件とする
- 特定の税務リスクを売り手側に残す**エスクロー(第三者預託)**口座を設定し、売買代金の一部をこの口座に残しておく
税務DDの結果を契約条件に反映できるかどうかで、買収後のリスクは大きく変わります。買収前の段階で専門家の支援を受けることが、結果的に最もコストの低い選択肢といえます。
青葉の税務デューデリジェンス支援
青葉グループでは、香港法人の買収・M&Aを検討されている日系企業の皆さまに対し、税務デューデリジェンスをはじめ、M&Aアドバイザリー、買収後の税務コンプライアンス支援までワンストップでご提供しています。
また、買収後も監査・税務申告・コンプライアンス支援を継続して行うことで、新たなリスクの発生を未然に防ぐことが可能です。
「香港企業の買収を検討しているが、どこから手をつければよいか分からない」
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本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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