【中国】2026年から相次ぐ当局による社会保険料の指導・警告。企業に求められる、これからと過去の社会保険料対策とは?
ここ最近中国各地において税務局から社会保険料納付状況の確認や指導をされた、というケースが増えており、また、日系企業様におかれましても、この社会保険料の計算方法が間違っており、保険料が不足していたため、指導や追納を求められた、というケースも増えてきているようです。
そのため、今回は、このような社会保険料に関する指導や追納がどうして最近増えてきているのか、そしてどのように対策していけばよいのかについてお話しさせていただきたいと思います。
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2026年より社会保険料の納付に関する指導・警告が相次ぐ
中国もこれから訪れる超高齢化社会により社会保険基金の支出量が年々増加していくため、基金の元となる社会保険料の徴収が重要課題となっています。そのため、2019年1月より、社会保険料の徴収機関が税務局に移行され、中国各地において、社会保険料の納付金額の適正化と徴収に関して、税務局の主導により推進されていくことになります。
そして当年度に入り、中国各地で社会保険料の納付について指導や警告を受けたという事例や報告が相次いでおり、大きな話題となっていますが、税務局からは、企業の今後の対応の参考となるような具体的な徴収強化の内容やどのように審査しているかなどについて、公式発表はされておりません。
そのため、以下でご紹介しているお話は、中国各地での当局による実務、指導内容、現地メディアによる税務局への取材内容、そして大手人材会社や法律事務所など各業界が発表している、実務上において最も税務局の方針に近いと考えられる内容となります。
税務管理システムにより照合、社会保険料の「充足率」を算出
| ①被保険者数の照合 | 社会保険加入人数 VS 個人所得税申告の人数 |
| ② 納付基数の照合 | 社会保険で申告された納付基数 VS 個人所得税の申告金額および銀行口座の振込金額 |
| 充足率の算出 | 上記①と②を掛け合わせて充足率を算出 |
税務局が企業の社会保険をどのように検査しているか、についてですが、税務局は税務管理システムと各政府機関や銀行等と共有しているビッグデータを使って、企業が申告している社会保険の内容と照合し、社会保険料の不足がないかについてチェックすることになります。
まず、企業の社会保険で申請されている加入人数と、個人所得税で申告された従業員の在職人数を照合し、加入率を算出します。
そして、次に納付基数において、企業の社会保険料で申告された納付基数と、個人所得税での申告内容や、実際に銀行口座へ振り込んだ金額といった従業員への報酬金額を照合し、保険料の納付率が算出されることになります。
最後に、この加入率と納付率を掛け合わせ、対象企業の社会保険料の納付金額が適正であるかどうかの指標となる充足率が算出されることになります。この充足率が100%に近いほど、企業の社会保険料の納付の適正度が高い、ということになります。
2030年までの5年間で達成、年ごとに厳格化
| 年 | 目標充足率 | 処置 |
| 2026年 | 【充足率 ≥ 70%】 | システム警告、SMSリマインダー、訪問指導、是正中心で処罰は補助的 |
| 2027年 | 【充足率 ≥ 80%】 | 低基数企業の重点監査、追納+延滞金の処理が日常化 |
| 2028年 | 【充足率 ≥ 90%】 | 全高リスク企業の審査、1~3倍の罰金+信用失墜懲戒(ブラックリスト入) |
| 2029年 | 【充足率 ≥ 95%】 | 違反ゼロ(例外なし)、違反法人代表高額消費制限、入札制限、融資停止 |
| 2030年 | 【充足率=100%】 | 全員・全額・適時加入、全面コンプライアンス完了年 |
そして、この充足率を達成していない企業に対して、当局は指導や警告といったアクションを取っているようです。この表は、2026年から2030年の5年間で段階的に上げられていく、目標となる充足率と、達成できていない企業への当局による処置がまとめたリストとなります。
こちらも、税務局の公式発表ではなく、現地当局の指導内容がベースであるため、全国で統一されているわけではなく、地域によっては目標となる充足率が多少前後したり、達成までの期間を5年ではなく3年としていたりなど、差があるため、1つの目安としてご参照ください。
今年に入った事例等に基づきますと、2026年度の充足率が70%未満となっている企業を中心に、ショートメッセージやシステムによる警告、また担当官がオンラインによる訪問指導を行うなど、主に是正するための指導といった処置がとられており、処罰については限定的であるようです。
そして来年度からは、充足率が80%を下回る企業において、不足している未納分や延滞金の追納についての処理も行われる予定との見込みとなっております。そのため、企業としても、この充足率を1つの目安として社会保険料の調整が段階的に必要である、といえます。
今後の社会保険料の不足を是正する対策が必要
この当局による取り組みは、過去の社会保険料の納付状況まで遡って大規模な調査を行い、未納分について追納を要求していく、ということではなく、2026年から段階的に社会保険料を是正し、その指標として充足率を設け、社会保険料を確保していく、という点に重点がおかれています。
そのため、今後については、もし保険料の不足について心当たりがある企業様にとって、一番は、すぐにこの充足率を100%にする調整だとは思いますが、大きな費用負担となるため、すぐに100%の修正が難しいようであれば、少なくとも充足率を上回るような調整を段階的に行っていくことが必要になるかと思います。
過去の未納分に関して
将来に向けての保険料の是正であるものの、企業によっては、社会保険局から「何年も前の分まで遡った過去の社会保険料の追納」や過去の社会保険の納付に関連する「追加資料の提出」などを求められた通知を受け取った、という事例も発生しているようです。
なぜ、一部の企業が、そのような通知を受け取っているのかといいますと、これは従業員が社会保険局へ申し立てを行なっていることが原因です。つまり、従業員から社会保険局へ過去の社会保険料の納付において未納があるという申し立てがあり、社会保険局から雇用主に対して追納通知が発行された、というケースがほとんどとなります。
今は昔と違い、WeChatによる情報交換をはじめ、RedbookやTikTokなどのSNSから拡散された、たくさんの情報により、多くの従業員がこういった方法を知るようになりました。
つまり、一人の従業員がこの方法を知ると、同僚だけではなく、それがSNSを通じて大多数の人々へ波及し、その結果、最近では多くの都市で、従業員が社会保険料の追納を求めるケースが大量に発生するという状況が生まれています。
過去の未納分における対策
過去の納付の不足分について税務局としては、従業員から申し立てがあり、未納の事実を確認できるのであれば、追納できる、とする一方で、現時点においては、当局自ら能動的に過去の納付不足分に関する調査は行わず、「申請がなければ受理しない」との方針となっております。
そのため、従業員の申し立てがないかぎりは、過去の納付不足分について積極的に調査はされない、という状況ではありますが、現状を考えると、この方針についても、今後変更されていく可能性は大いにあるかと思います。
また先ほどの通り、最近はSNSなどの拡散情報により、従業員から申し立てが行われるケースは非常に増えてきております。特に組織再編や会社閉鎖など人員整理をする際、申し立てが行われる可能性が非常に高くなってきております。
そのため、過去の未納分および延滞金がいくら程度になるのか、まずは把握されることが推奨されます。事前に把握しておけば、当局からある日突然通知書が発行されてしまった場合においても、慌てず、すぐにその金額について確認することができ、もし金額に相違などが見つかれば、速やかに異議を申し立てることが出来るかと思います。そして、通知書に記載された期限までに納付し、さらなる罰則金を回避するよう、事前にその資金を確保しておくことも推奨されます。
弊社青葉グループでは、このような中国の社会保険料に関する労務に関わるご相談についても承っております。社会保険料の未納や不足などについて心当たりがある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
参考リンク先:
本記事の目的:
本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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