【香港】多様化するワーキングスタイル。香港の個人所得税申告で雇用主が留意すべき点

コロナ以降、ワーキングスタイルの多様化が進み「従業員が必ずしもオフィスに出勤しなければならない」という従来の形式が大きく変わってきています。そこで今回は、いくつかの働き方の例を元に個人所得税申告の観点から、雇用主が留意すべき点についてご紹介させていただきたいと思います。
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<香港税務居民の定義>
(A) 香港に通常居住*している場合
※「通常居住」とは、本人またはその家族が居住する恒久的な住まいが香港にある場合を指します。
(B) 課税年度中に香港に180日を超えて滞在している、または2課税年度*(そのうち1つが該当年度)にわたり合計300日を超えて滞在している場合
※香港の課税年度は4月1日から翌3月31日
物価の高い香港を離れてファミリーで中国に引っ越し。中国から香港のオフィスに毎日通勤
MTR(地下鉄)やバス、高速鉄道など交通機関の発達、ボーダーでの出入境手続きの高速化などにより、香港との中国本土の距離はますます近くなってきています。併せて香港の物価高も相まって、レジャー、飲食や日用品の買い物などを隣接の深圳市でおこなう「北上消費」という流れもできています。
こんな中、香港人の方が中国に居住し、香港のオフィスに通う、ということも起きていています。中国での仕事ではなく、あくまで香港域内で香港企業の従業員として働き、寝るのは中国、週末は中国で過ごす場合、中国で個人所得税の申告や納税しなくてもよいのでしょうか。
中国本土での業務は全く行わないこと、中国本土での他の所得がないこと前提で、中国での個人所得税申告は必要ありません。
中国本土では、税務上の中国滞在日数の計算は、中国本土滞在24時間を以て「1日」と計算し、滞在時間が24時間に満たない場合には計算に入りません。一税務年度(1月~12月)の間の滞在日数がこの計算により183日未満であれば、香港で受領した給与所得を中国で申告納税する必要はありません。
今回の例の場合、一税務年度の中国滞在日数が183日を下回ることが考えられるため、従来通り、香港で所得税申告、納税のみを行えばよいことになります。
会社がオフィスをクローズ。でも一部の従業員には業務委託契約をして在宅勤務をしてほしい。
物価の高い香港でオフィスや人件費コストが重荷となり、オフィスをなくして自宅などで勤務をしてもらうケースも多くあります。オフィスがなくなってもそのまま従業員として雇用を継続することも可能ではありますが、業務量の減少などから、雇用ではなく個人との業務委託契約を行うケースも見受けられます。
業務の提供場所が香港か香港外か、当個人が香港の税務居民とされるか否かで、申告要否、申告方法が変わってきます。
①香港税務居民でなく、香港以外で業務を提供した場合
⇒支払者(法人側)から香港税務局への通知は不要
②香港税務居民の個人による業務の提供の場合
⇒業務提供場所が香港内外であるかを問わず、IR56M(Notification of Remuneration paid to persons other than Employees)を提出する必要がある。(IR56Bと同じく、4月~3月の支払額を翌4月に報告)
③香港税務居民でない個人が、香港に滞在して業務を提供した場合
⇒香港の業務委託料の支払者がIR623P (Notification of Payments Made to Non-resident Individuals Rendering Services in Hong Kong) を記入し香港税務局へ提出する必要があります。
(注:業務提供者ではなく、エンターテイナー、スポーツ選手については別のIR623というフォームがあります)
配偶者の転勤に伴い香港に居住しながら日本の仕事を在宅勤務で続ける
この例の前提事項として、配偶者の転勤に伴い、一年のほとんどは香港に居住。ただし日本の勤務先の仕事を香港にいながらにして在宅勤務で続ける。でも勤務先に香港法人や香港支店はない、とします。
この場合、香港内で日本の会社のために業務を提供をすることとなるため、香港での申告、納税義務が発生します。
ただし、香港に拠点のある法人が雇用主として従業員へ支払った報酬金額を申告するIR56ABフォームによる報告ができないため、自ら書面で所得額を香港税務局へ通知し、申告を行う必要があります。
【関連記事】
給与報酬支払通知・IR56ABフォームについてはこちらの過去記事をご参照ください。:香港4月の税務季語”Employer’s Return”(雇用主支払い申告書)
いくつか例を紹介させていただきましたが、これらは、香港の税務居民(Tax Resident)と見なされるか否か、といった点により申告の要否や申告方法が変わってくることがありますので、具体的なケースにつきましては、まず弊社のような専門家にご相談をされることをお勧めいたします。
また、居住や就労、業務の提供については、各滞在地で有効なビザや居住許可を持っていることが前提となる点、十分お気を付けください。また併せて滞在地が複数地にまたがる場合には、各地の税務についてもじゅうぶんに確認しなければならない点についても注意が必要です。弊社へのご相談については、いつでもお気軽にお問い合わせ下さい。
参考リンク先:
Completion and Filing of Tax Return – Individuals (BIR60)
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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