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【香港】多国籍企業グループのグローバルミニマム課税および香港ミニマムトップアップ税

 

経済協力開発機構(以下「OECD」)の税源侵食・利益移転(以下「BEPS」)2.0の第2の柱(Piller Two)におけるグローバル税源侵食防止規定(Global Anti-Base Erosion Model Rules、以下「GloBE規定」)および香港ミニマムトップアップ税(以下「HKMTT」)は、香港税務(改正)(多国籍企業グループに対するミニマム税)条例法案2025が2025年6月6日に可決され、香港税務条例(IRO)に新たに規定された。

 

 

法案可決に伴い、香港税務局(以下「IRD」)は、GloBE規定およびHKMTTの実施フレームワークに関する新情報を提供する専用ページを開設した。

 

さらにIRDは、対象となり得る多国籍企業グループに対し、一般的ガイダンスおよび情報収集のためのレターの送付を2025年9月24日より開始した。

 

 

本ニュースレターでは、新たに税務条例に規定されたGloBE規定およびHKMTTの主な内容を要約する。

 

 

香港での実施フレームワーク

改正条例により、税務条例に新たに第4AA部および付表61〜64が追加された。このうち、OECDが公表したGloBE規定およびセーフハーバー条項は限定的な調整を施したうえで付表61に直接組み込まれ、HKMTTおよび税務制度の運用(その他のGloBE関連規定)はそれぞれ付表62および63に規定された。

 

本改正により、直前の4会計年度のうち少なくとも2会計年度において年間連結総収入額が7.5億ユーロ以上である多国籍企業グループ(以下「対象MNEグループ」)は、GloBE規定およびHKMTTに基づく追加課税という形で、15%のグローバルミニマム税が課されることとなる。

 

適用時期は以下のとおりである。

課税メカニズム

適用時期

IIR(所得合算ルール)

2025年1月1日以降に開始する会計年度

UTPR(軽課税所得ルール)

今後の官報での公布により実施

HKMTT(香港ミニマムトップアップ税)

2025年1月1日以降に開始する会計年度

 

 

この税務制度の運用フレームワークは、香港の構成事業体(Hong Kong Constituent Entities、以下「HKCE」)に適用されるのと同様に、香港で所在または事業を行う対象MNEグループのその他の企業体(合弁事業体、合弁事業体の子会社、また課税上の居住地を持たない構成事業体)にも適用される。

 

加えて、改正により対象MNEグループすべての香港に所在する企業は、2025/26税務年度以降の法人税申告書において電子申告をしなければならないことを明確化した。

 

この強制的な電子申告要件は「一度対象となれば継続適用(once-in, always-in)」の仕組みを採用しており、ある年度に電子申告が義務付けられた企業については、その後のすべての課税年度でも電子申告が義務付けられる。

 

また、トップアップ税の通知および申告の電子対応を可能にする「Pillar Twoポータル」を開発中であり、2026年1月以降、段階的に導入される予定である。

 

 

 

香港の対象MNEグループの特定

企業グループが対象MNEグループであることが確認された場合、次の重要なステップは、電子申告およびトップアップ税の徴収を行うために、企業が香港に所在するかどうかを判断することである。

 

GloBE規定においては、企業の税務上の居住地または設立された場所が、その企業の所在地とされ、本改正により香港居住企業の定義も導入されており、これは香港の包括的二重課税防止協定(CDTAs)で一般的に採用されている定義とおおむね一致する。

 

この定義(下記)は2024年1月1日から遡及的に効力を持ち、2024年1月1日以降に開始する会計年度においてGloBE規定を実施している他の管轄区域でのトップアップ税課税リスクを最小限に抑えることを目的とする。

 

 

企業は、以下のいずれかに該当する場合、香港の税務居住者となる:

a) 香港で設立された、または設立されている。

b) 香港外で設立された、または構成された場合でも、通常香港で管理または支配されている。

 

 

企業の特定および税務制度の運用管理目的として、各対象MNEグループ、HK単独合弁事業体または合弁事業体グループに対して、トップアップ税通知書および申告書の提出と対応のために、固有のグループコードが割り当てられる。

 

この目的のために、IRDは対象MNEグループ、HK単独合弁事業体または合弁事業体グループに対して、グループコードの申請書(フォームIR1485)を送付し、対象MNEグループに2025/26税務年度の法人税申告を電子申告する必要がある香港企業リストを提供するよう要求する。

 

 

 

セーフハーバー

次のステップは、対象MNEグループのセーフハーバーの適格性を評価するものである。

 

香港では、一定の条件を満たす場合に、対象MNEグループが完全なGloBE計算実施義務を免除するため、OECDのGloBE規定に基づくすべてのセーフハーバーを採用している。これらのセーフハーバーには以下が含まれる。

 

 

  1. 移行期間CbCRセーフハーバー
  2. 移行期間UTPRセーフハーバー
  3. QDMTT(適格国内ミニマム課税) セーフハーバー
  4. 非重要構成事業体のための簡易計算セーフハーバー

 

 

「移行期間CbCRセーフハーバー」は、2026年12月31日以前に開始し、かつ2028年6月30日までに終了する会計年度に適用可能である。このセーフハーバーの要件を満たす対象MNEグループにとって、その移行期間中の該当年度における当該管轄区域トップアップ税はゼロとみなされる。

 

当セーフハーバーは年単位の選択適用となり、「一度適用外となった場合は以後適用不可(once-out, always-out)」のメカニズムが適用されるため、初年度において当該管轄地域で「移行期間CbCRセーフハーバー」の適用対象とならなかった場合、以後の年度における適用資格をも失うことになる。

 

 

 

HKMTTの主な最新情報

HKMTTは、国内ミニマム課税(QDMTT)の要件を満たすことを目的としている。これにより、対象MNEグループは「QDMTTセーフハーバー」の適用を受けることができ、香港の管轄地域においてIIRまたはUTPRによる再計算を行う必要がなくなる。

 

HKMTTの主な更新点は以下のとおりである。

 

  • 国際事業活動の初期段階にあるMNEグループに対する除外措置はHKMTTにも適用される。ただし、HKCEの所有持分が、適格IIRの対象である親事業体によって直接または間接的に保有されていないことが条件となる。

 

  • HKMTTの算定のために、対象MNEグループのHKCEの会計年度における会計上の純損益は、以下の所定条件を満たす場合、現地の会計基準に従って決定されなければならない

 

  1. 各HKCEが現地の会計基準に従って財務諸表を作成している。
  2. 各事業体の会計期間が多国籍企業グループの最終親会社(UPE)の連結財務諸表の会計年度と一致している。
  3. 各HKCEは、香港での納税額の決定またはその他の香港法令遵守のために財務諸表の作成が義務付けられている、あるいは外部監査の対象となっている。

 

 

 

トップアップ税のコンプライアンス要件の主な最新情報

ステークホルダーからの意見を踏まえ、政府は香港における実務性を向上させるために、複数の税務コ ンプライアンス期限を変更した。更新後の重要なコンプライアンス期限は以下のとおりである。

 

コンプライアンス義務

 期限

トップアップ税通知書の提出

  • 会計年度末から6ヶ月以内

トップアップ税申告書の提出

  • 会計年度末から15ヶ月以内
  • 初年度の移行期間に限り、提出期限は18ヶ月に延長

トップアップ税の査定および納付

(トップアップ税の予定納税はなし)

  • 申告書提出期限日から1ヶ月後、または査定通知書の記載日付のいずれか遅い方

トップアップ税の査定に対する異議申立て

  • 査定通知書の日付から2ヶ月以内

トップアップ税の追徴課税査定

  • 該当会計年度が終了した課税年度の末日から8年以内
  • ただし、詐欺または故意の脱税が認められる場合は12年以内

申告内容の修正

  • 該当会計年度が終了した課税年度の末日から8年以内、

または

  • 査定通知書発行日から6ヶ月以内、のいずれか遅い方

記録保管期間

  • トップアップ税の計算に関連する取引・行為・運営の完了後、最低9年間保管

 

さらに、香港税法における従来の一般的な租税回避防止規定である「唯一または支配的な目的テスト」が修正され、GloBEおよびHKMTT制度に適用される。これに伴い、以前提案されていた「主要目的テスト」は削除された。

 

 

 

推奨事項

GloBE規定およびHKMTTの導入は、香港で事業を行う大規模多国籍企業にとって、税務上大きな変化をもたらしている。

 

コンプライアンスの確保および事業計画策定のため、対象MNEグループは、グループ構造および合弁(JV)構造を見直し、すべての事業体の税務上居住地ステータスを確認し、またコンプライアンス遵守を簡素化するために、グループがいずれかのセーフハーバー規定の適用対象となるかどうかを分析する必要がある。

 

さらに、対象MNEグループは、各管轄地域ごとに必要な財務および税務データを取得するための現行システム対応、ならびに法人税およびトップアップ税の電子申告(e-filing)対応できるかについて評価する必要がある。

 

また、グループ全体のトップアップ税を申告するために任命されたHKCEとUPEの税務責任者の間で、コミュニケーション体制を確立することが望まれる。

 

GloBE規定およびHKMTTの導入は継続的に更新されているため、対象MNEグループは、特にIRDの専用ページで最新情報を注視し、必要に応じて税務アドバイザーの助言を受ける事が推奨される。

 

 

 

参照記事一覧

・その他の重要な経過措置およびセーフハーバーに関する詳細情報については、2024年2月28日付の弊社ニュースレター記事香港におけるグローバルミニマム課税と香港ミニマムトップアップ税の導入”を参照:

 

・法人税申告書(BIR51)の電子申告に関する詳細情報については、2025年2月26日付の弊社ニュースレター記事2025-26-年度香港財政予算案および今後の展望”を参照

 

 

 

 

 

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