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【香港】オフショア受動所得に対する免除制度の改正について

香港政府は、香港に実質的な経済的実体を持たない企業が享受する香港外を源泉とするオフショア受動所得の免税制度の適用における二重非課税の状況に対する欧州連合(EU)からの懸念を受け、受動所得に対する外国源泉所得免税(“Foreign Source Income Exemption”、以下「FSIE」)制度の改正提案に関する協議を開始した。改正法案は2022年10月に立法会に提出される予定で、2023年1月1日に発効する見込みである。

 

 

対象となる所得と納税者

改正後のFSIE制度の下では、オフショア受動所得となる、利息、配当、株式または持分に関する処分益(総称して「非知的財産所得」)および知的財産からの所得(「知的財産所得」)は、以下の場合において香港内を源泉としているとみなされ、法人税(Profits Tax)が課されることになる。

 

  • 多国籍企業(“Multinational Enterprise”、以下「MNE」)グループの構成事業体が香港内で受け取った所得である場合
  • 「非知的財産所得」において、所得を受領した企業が経済的実体の要件を満たさない、   または「知的財産所得」において、ネクサスアプローチに従っていない場合

 

 MNEグループの構成事業体とは、MNEグループに含まれる事業体または恒久的施設で、その資産、負債、収益、費用及びキャッシュ・フローがグループの最終親会社の連結財務諸表に含まれている、あるいは規模、重要性または売却目的であるという理由のみで連結財務諸表から除外されている事業体または恒久的施設を指す。そのため、純粋な現地グループに属する企業や、オフショア事業を行わない独立した現地企業のオフショア所得は、引き続き非課税扱いとされる。

 

 

 

非知的財産所得に対する経済的実体の要件

対象納税者が香港で受け取ったオフショアを源泉とする非知的財産所得は、対象納税者が香港内で当該受動所得に関する実質的な経済活動を行っている場合、引き続き非課税対象となる。香港税務局(IRD)は、経済実態の要件が満たされるかどうかを判断する際に、事業の性質、関連業務の実効性、十分な人数の適格な従業員の雇用、十分な金額の営業経費、収益性などについて、各事例ごとに総合的に検討するとしている。一般的なガイダンスは以下のとおりである。

事業内容

関連業務

純粋持株会社でない場合

必要となる戦略的な決断を行うと共に、資産の取得・保有・処分に関する原則的なリスクの管理および引受けを行っている。

純粋持株会社である場合

株式の保有と管理、および香港会社法に基づく会社の申告要件を遵守している。(簡易経済的実体テスト「Reduced Substantial Activities Test」)

 

また、関連業務をアウトソーシングする場合、納税者がアウトソーシングされた業務を適切に監視し、関連業務が香港で行われていることが証明できる場合においてのみ許可される。

 

 

 

配当金および株式処分益に対する資本参加免除制度

株式や持分に関する配当や処分益については、以下の条件をすべて満たす場合、オフショアの配当収入や処分益が引き続き非課税となるような資本参加免除制度が導入される予定である。

 

  • 投資家企業は香港の居住者または香港に恒久的施設を有する非香港居住者である。
  • 投資家企業が投資先企業の株式または持分を5%以上保有している。
  • 投資先企業の収益のうち、受動所得の割合が50%を超えていない。

 

 さらに、資本参加免除制度には以下のような濫用防止に関する規則が適用される。

 

濫用防止のためのルール

条件

スイッチオーバールール

Switch-over rule

配当収入については、当該収入または投資先企業の利益が、15%未満の税率が適用される海外の国や地域において課税されている場合、投資家企業は資本参加免除を受けることができず、代わりに当該所得に帰属する香港の法人税額を限度とする外国税額控除が申請できる。

アンチハイブリッド・ミスマッチルール

Anti-hybrid mismatch rule

配当所得については、投資先企業が配当金の支払いを損金算入できる範囲では、資本参加免除制度は適用されない。

主要目的ルール

Main purpose rule

税制上の優遇措置を得ることを唯一または主要な目的とし、免税の目的または趣旨を逸脱するような取り決めは却下される。

 

 

 

知的財産権所得に対するネクサスアプローチ

経済協力開発機構(OECD)によるネクサスアプローチは、オフショアを源泉とする知的財産所得の免税範囲を決定する際に採用される。ネクサスアプローチでは、適格知的財産資産からの所得のみが、ネクサス比率(適格知的財産資産を開発するために納税者が負担した全支出に対する適格支出の比率)に基づき、免除の対象となる。 

 

 適格知的財産資産とは、特許およびその他の知的財産資産のうち、法的に保護されており、特許と同様の承認・登録手続きの対象となるものを指す。そのため、商標権や著作権などのマーケティングに関連する知的財産は適格知的財産資産とはみなされない。

 

 適格支出とは、知的財産資産に直接関連する研究開発(「R&D」)支出で、納税者が香港内で実行するもの、非関連者に委託して香港内外で実行されるもの、または香港居住者の関連者に委託して香港内で実行されるもののいずれかを指す。また、適格支出には知的財産の取得費用は含まれないことに留意すべきである。  

 

 知的財産を取得したり、あるいは適格支出としてはみなされない関連者へ支払ったR&Dの外注委託費用において、これらが納税者にとって過大に不利な状況となることを避けるため、非適格支出が発生した場合、納税者は適格支出額の30%を割増控除として申請することが出来る。

 

 

 

片務的(ユニラテラル)税額控除

 FSIE制度の改正に伴いMNEグループにもたらされる負担を軽減するために、IRDは対象範囲内の受動所得に特化し、二重課税を避けるために、片務的税額控除を導入する予定である。言い換えれば、改正後のFSIE制度の下で課税対象となり、かつ香港と包括的な二重課税協定を締結していない国・地域で課税対象となるオフショアの受動所得に対しては、片務的税額控除を受けることが出来る。一方で、その他の所得に対しては、片務的税額控除を受けることができないため、香港とその他の国・地域とで二重課税となる恐れがあり、注意が必要となる。

 

 

 

アドバイス

 今回提案される法案は税務条例にとって新しい概念の導入となるため、IRDは今後関連のガイダンス及び実務方針を発行し、当該概念を明確化させ、改正されたFSIE制度の実施を詳細に説明する予定である。一方で、MNEグループの構成企業は、株式/持分保有構造、知的財産保有構造、ローン契約など、オフショア受動所得を生み出す、または生み出す可能性のある資産保有構造を事前に見直し、(1)経済実態要件を満たしているか、(2)資本参加免除を満たしているか、(3)ネクサス・アプローチに従っているか、(4)税額控除が適用可能か、などについてケースバイケースで検討すべきである。

 

 

 

 

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