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『民事訴訟法』改正要点【ニューズレター Vol.89】

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として、青葉グループの広東省広州市天河区に拠点を構える弁護士事務所より作成しております。

 

 

【背景】

現行の『民事訴訟法』は、1991年の第7回全国人民代表大会第4回会議で可決され、その後2007年、2012年、2017年に3回改正された。近年、経済社会情勢の発展の変化に伴い、一部分の『民事訴訟法』の規定はすでに公衆の司法ニーズに十分には応えられなくなり、更なる改善が急がれる。そのため、2021年12月24日に、全国人民代表大会常務委員会は『「中華人民共和国民事訴訟法」の改正に関する決定』を採択し、改正後の『民事訴訟法』が2022年1月1日より施行される。

 

 

【影響】

今回の「民事訴訟法」の改正は、主にオンライン訴訟と送達規則、独任制審理[1]、簡易手続き、少額訴訟手続き、司法確認手続きなどの内容に関与し、公衆と企業の訴訟権利の保障に対し重要な意義がある。

[1] 独任制審理とは、裁判員一人が単独で案件を裁判し、またその案件に対して責任を負う裁判制度を指す。

 

 

【主要内容】

  • 参考のため、今回の「民事訴訟法」の主な改正要点は以下のように整理される。

    改正要点

    新旧条文の対照

    改正前

    改正後

    オンライン訴訟の法的効力の確立

     

    第十六条(増加)

    当事者の同意を経て、民事訴訟活動は情報ネットワークプラットフォームを通じてオンラインで行われることができる。民事訴訟活動が情報ネットワークプラットフォームを通じてオンラインで行われた場合、オフライン訴訟活動と同等の法的効力を有する。

     

    一般手続の独任制審理モデルの構築

    第三十九条第二項

    簡易手続を適用して審理する民事事件は、裁判員一人が単独で審理する。

    第四十条第二項

    簡易手続を適用して審理する民事事件は、裁判員一人が単独で審理する。基層人民法院が審理する基本事実と権利義務関係が明確である第一審民事事件は、裁判員一人が一般手続を適用して単独で審理することができる。

    二審の独任制審理モデルの構築

     

    第四十一条第二項(増加)

    中級人民法院は、第一審に簡易手続を適用して結審し、又は裁定不服申し立ての第二審民事事件について、事実と権利義務関係が明確である場合には、双方当事者の同意を経て、裁判員一人が単独で審理することができる。

    独任制の適用に
    対する制約監督の強化

     

    第四十二条(增加)

    人民法院は以下の民事事件を審理する時、裁判員一人が単独で審理してはならない:(一)国家利益、社会公共利益にかかわる事件。(二)集団的な紛争にかかわり、社会の安定に影響し得る事件。(三)人民大衆が広く注目しているか、またはその他の社会影響が大きい事件。(四)新しいタイプまたは複雑な事件。 (五)法律の規定により合議庭[1]の形で審理すべき事件。 (六)他の裁判員が一人で審理してはいけない事件。

     

    第四十三条(増加)

    人民法院は審理の過程時に、本事件が裁判員一人単独で審理すべきではないと判断した場合、合議庭の審理に変更するように裁定されなければならない。当事者は、裁判員一人が単独で事件を審理することが法律規定に違反すると判断した場合、人民法院に異議を申し立てることができる。人民法院は当事者からの異議に対して審査するものとし、異議が成立した場合、裁定は合議庭の審理に変更される。異議が不成立の場合、裁定は却下される。

    電子送達規則の
    整備

    第八十七条

    送達者の同意を得た場合、人民法院はファックス、電子メール等の受領を確認できる方式で判決書、裁定書、調停書以外の訴訟文書を送達することができる。 前項の方式で送達する場合、ファックス、電子メールなどが送達対象者の特定のシステムに到着した日を送達日とする。

    第九十条

    送達者の同意を得た場合、人民法院は、その受領を確認できる電子方式を採用して訴訟文書を送達することができる。電子方式で送達された判決書、裁定書、調停書について、送達対象者が紙版文書の提出を要求する場合、人民法院は提供するものとする。 前項の方式で送達する場合、送達情報が送達対象者の特定のシステムに到着した日を送達日とする。

    公告の送達時間を短縮する

    第九十二条第一項

    受取人が行方不明になり、若しくは本節に規定されたその他の方法で届かなかった場合は、送達したと公告する。公告日から60日間を経過した場合、送達と見なされる。

    第九十五条第一項

    受取人が行方不明になり、若しくは本節に規定されたその他の方法で届かなかった場合は、送達したと公告する。公告日から30日間を経過した場合、送達と見なされる。

    簡易手続の最長審理期間の短縮

    第一百六十一条

    人民法院は簡易手続を適用して事件を審理する場合、立件日から3月以内に結審するものとする。

    第一百六十四条

    人民法院は簡易手続を適用して事件を審理する場合、立件日から3ヶ月以内に結審するものとする。特別な事情があって延長する必要がある場合は、人民法院院長の許可を得て、1ヶ月間延長することができる。

    小額訴訟手続の
    適用範囲と方式の改善

    第一百六十二条

    基層人民法院とそこが派遣した法廷は本法第百五十七条第一項の規定に合致する簡単な民事事件を審理し、対象額が各省、自治区、直轄市の前年度就業者の年間平均賃金の30%以下である場合、一審終審を実施する。

    第一百六十五条

    基層人民法院とそこが派遣した法廷は事実が明らかで、権利義務関係が明確で、争議が少なく簡単な金銭に支払われる民事事件を審理し、対象額が各省、自治区、直轄市の前年度就業者の年間平均賃金の50%以下である場合、小額訴訟の手続審理を適用し、一審終審を実行する。基層人民法院とそこが派遣した法廷は前項に規定された民事事件を審理し、対象額が各省、自治区、直轄市の前年度就業者の年間平均賃金の50%を超えたが2倍以下の場合、当事者双方も小額訴訟の適用手続きを相談及び確定することができる。

    小額訴訟手続事件が適用できない
    場合の明記

     

    第一百六十六条(増加)

    人民法院は以下の民事事件を審理し、小額訴訟の手続きを適用しない。(一)人的関係・財産確認の事件(二)渉外事件(三)評価、鑑定または訴訟前の評価、鑑定結果に異議をしなくてはいけない事件(四)当事者一方の行方不明の事件(五)当事者が反訴した事件(六)その他小額訴訟の手続審理を適用すべきでない事件。

    小額訴訟事件の
    審理方式の簡素化

     

    第一百六十七条(増加)

    人民法院は小額訴訟の手続きを適用して事件を審理し、開廷して一度で審理及びその場で判決を下すことができる。

     

    第一百六十八条(増加)

    人民法院は小額訴訟の手続きを適用して事件を審理し、立件の日から2ヶ月以内に審理しなければならない。特別な場合、延長が必要な場合は、本院院長の承認を得て、1ヶ月延長することができる。

    当事者に手続きへの異議を唱える
    権利の付与

     

    第一百六十九条(増加)

    人民法院は、その手続きの過程で、小額訴訟手続きに適さないと判断された場合、簡易手続きのその他規則の審理もしくは裁定を普通の手続きに変更しなければならない。当事者が事件に小額訴訟を適用する手続の審理が法律の規定に違反すると判断した場合、人民法院に異議を申し立てることができる。人民法院は当事者が提出した異議に対して審査し、異議が成立した場合、簡易手続を適用しなければならないその他の規定の審理または裁定は一般手続に変更しなければならない。異議が成立しない場合、裁定は却下される。

    司法認定手続きの最適化

    第一百九十四条

    司法確認調停協議を申請し、双方の当事者が人民調停法などの法律に基づいて、調停協議が発効した日から30日以内に、調停組織の所在地の基層人民法院に共同で提出する。

    第二百零一条

    法に基づいて設立された調停組織の調停を経て調停合意に達し、司法確認を申請し、双方の当事者が調停協議の発効日から30日以内に、共同で以下の人民法院に提出する:(一)人民法院が調停組織を招いて先行調停を行った場合、招待した人民法院に提出する。(二)調停組織が自ら調停を行った場合、当事者の住所地、標的物の所在地、調停組織の所在地の基層人民法院に提出する。調停協議に関連する紛争は中級人民法院が管轄しなければならない場合、相応の中級人民法院に提出しなければならない。

    [1] 合議庭とは、数名の審判員が共同で事件を審理する審判組織形式を指す。

 

 

 

【法規リンク】

全国人民代表大会常務委員会による『中華人民共和国民事訴訟法』の改正に関する決定

 

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