【第1回】2026年度版増値税法の影響を徹底解説:まずは電気通信サービスと長期資産について
記念すべき第一回目となる今回は、
① 電気通信サービスの税目変更について
② 長期資産に関する仕入税額控除の取扱い
の2つのテーマに焦点をあてて解説したいと思います。ぜひご一読ください!
Contents
電気通信サービスの税目変更について
電気通信サービスの税目に含まれる内容が、2026年1月1日の施行後とそれより前とで、以下のように変更となりました。
| 施行前 |
|
| 施行後 | 基礎的電気通信サービスとは、固定通信網、移動通信網、衛星通信、インターネットを利用して、音声通話サービス、携帯電話のデータ通信サービス、SMS・MMSサービス、インターネットブロードバンド接続サービスを提供する業務活動、並びに帯域幅や波長等のネットワーク要素の貸出し又は販売を行う業務活動をいう。 |
一、主な変更点
新規定による、主な変更点は以下の通りとなります。
税目の変更:携帯電話のデータ通信、SMS・MMS、インターネットブロードバンド接続などは、従来の「付加価値型電気通信サービス」から「基礎的電気通信サービス」に分類。
税率の変更:この変更に伴い、該当するサービスの税率は6%から9%に引き上げ。
つまり、携帯電話のデータ通信、SMS・MMS、インターネットブロードバンド接続などの増値税の税率が6%から9%になりました。
二、企業への影響:間接的に通信費が増額
一般企業においては、この増値税の税率引き上げにおいて直接負担するわけではなく、納税主体である電気通信事業者(中国移動、中国電信、中国聯通など)が、この影響を直接受けることになります。
そのため、以下のように一般企業が利用している電気通信業者の料金にその影響が出ることが予想されます。
- 電機通信事業者の3%上昇した税負担の一部が料金改定に繋がり、そのキャリアの利用者である企業の通信費用に転嫁される可能性があります。
- 企業の主にオフィス向けネットワーク接続費用や従業員のモバイル通信プランなどの運営コストが、小幅ながら上昇する可能性があります。
三、影響の程度について
上記の今回予想される通信業者の費用増加の影響については、賃借料や人件費などの主な支出項目と比べると、データ通信料やインターネット接続費用は、多くの企業の費用構成において、総費用に占める割合がそれほど高くないため、この部分の変動が全体の営業費用に与える影響は限定的かと思います。
ただし、データ通信への依存度が高い業種(インターネット関連、リモートサービス、コンテンツ配信など)においては、今後の料金動向について注視されることをお勧めします。
四、実務上の対応について:契約更新時にご注意を
①更新時の料金改定について
通信事業者との契約を更新される際や、料金プランを見直される際には、税制改正の影響が価格に反映されているかどうか、一度ご確認いただくことをお勧めいたします。その上で、市場の状況も踏まえて総合的にご判断いただければと思います。
長期資産に関する仕入税額控除の取扱い
今回の増値税法及び関連文書政策施行により定められた、「長期資産」の概念と、関連する特筆事項とその変更点については以下の通りとなります。
定められた「長期資産」の概念
取得した長期資産とは、直接購入、自社による生産・研究開発・建設、出資・贈与・債務の引受け等の各種方法により取得した長期資産をいい、賃借した長期資産、工事現場に建設された仮設建造物・構築物、及び不動産開発企業が自ら開発し棚卸資産として会計処理する不動産プロジェクトは含まない。
長期資産のうち、有形固定資産には、その本体を構成する付帯設備、工具、器具等を含む。無形固定資産には、その中核的価値及び権利の基礎を構成する関連する法的権利及び知的財産を含む。不動産には、その本体を構成する内装材、給排水、暖房、衛生、換気、照明、通信、ガス、消火設備、セントラル空調、エレベーター、電気設備、太陽光発電設備、ビルオートメーション設備及び付帯施設等を含む。
変更点:
有形固定資産、無形資産又は不動産を総称して長期資産とした。
一般課税方法を用いた課税項目に専用する場合
一般課税方法を用いた課税項目に専用する長期資産を取得した場合、その長期資産に係る仕入税額は、全額を売上税額から控除することができる。
変更点:
特に変更はなく、資産の分類毎の説明から「長期資産」という概念にまとめて説明する形に改められただけとなる。
そのため、従来どおり一般課税方法を用いた課税項目に専用される場合、対応する仕入税額は全額を売上税額から控除することができる。
5種類の控除不可項目に専用する場合
納税者が取得した長期資産を、①簡易課税方法を用いた課税項目、②増值税免除項目、③控除対象外の非課税取引、④社内における福利厚生または⑤個人消費(これらを、以下「5種類の控除不可項目」という)のために使用する場合、その長期資産に係る仕入税額は売上税額から控除することができない。
変更点:
従来の増值税政策では、非課税取引に使用する場合の仕入税額を控除できないとする規定はなく、非課税売上に対応する仕入税額は控除可能であった。
新たな増值税政策では、控除不可項目として「非課税取引」が新たに追加されるとともに、取得した長期資産に係る仕入税額の控除ルールが明確化された。
混合用途に用いた場合の原価が500万元以下の場合
混合用途に用いられる、つまり長期資産が一般課税方法の課税項目および5種類の控除不可項目に兼用する場合であっても、当該資産の原価が500万元以下であれば、これに対応する仕入税額は全額控除することができる。
変更点:計算方法の変更
2026年1月1日以降において取得した長期資産が、混合用途に用いられ、かつ原価が500万元を超えている場合、財政部・税務総局公告2026年第15号の規定に基づき、調整が必要な仕入税額を次のとおり計算する必要があります。
(1)当年度の混合用途期間における仕入税額の按分調整基数の計算方法
按分調整基数とは、当年度における調整計算の対象となる仕入税額をいいます。
計算式:
按分調整基数 = 調整対象仕入税総額 ×(当年の混合用途期間月数÷(調整年数 × 12))
【ケース例】
以下を前提とした場合、
- 2026年7月に設備を取得(原価1,200万元、仕入税総額120万元)
- 調整年数:10年(120か月)
- 当年の混合用途期間:6か月(7月~12月)
計算式は、以下の通りとなります。
計算式:
按分調整基数 = 120万元 ×(6か月 ÷ 120か月)= 6万元
計算式:
当年度2種類控除不可項目に対応する税額 = 按分調整基数×(当該長期資産が混合用途期間における2種類控除不可項目に按分された減価償却費÷ 当該長期資産の当年度の会計上の減価償却費)
【ケース例】
上記(1)のケース例からの続きで、以下の前提を追加した場合
- 按分調整基数:6万元
- 当年の会計上の減価償却費:1,200万元 ÷ 10年 = 120万元
- 当年度2種類控除不可項目に按分された減価償却費:20万元
計算式は、以下の通りとなります。
計算式:
当年度2種類控除不可対応税額 = 6万元 ×(20万元 ÷ 120万元)= 1万元
計算式:
当年度3種類控除不可対応税額 =(按分調整基数− 2種類控除不可対応税額*)×(3種類控除不可項目の売上高 ÷(当年度混合用途期間における総売上高 +当年度混合用途期間における非課税取引収入))
※なぜ(2)で算出した金額を引くのか?
2種類控除不可項目(福利厚生・個人消費)は、会計上「福利厚生費」「個人消費」などの独立した科目で直接管理されているため、当該長期資産の減価償却費のうち、これらの用途に按分された金額を直接的に特定することが可能です。
一方、3種類控除不可項目(簡易課税・免税・非課税取引)は、一般課税項目と同一の部門・資産で混在して使用されることが多く、直接的な按分が困難です。そのため、事業全体の収入に占める3種類控除不可項目の割合に基づき、合理的な按分計算を行う必要があります。
(2)で算出した2種類控除不可対応税額は、すでに控除不可と確定している部分です。もし(3)の計算で調整基数全体を使用すると、この確定部分が「3種類控除不可項目」として二重に控除不可として含まれてしまいます。これを防ぐため、按分調整基数から当年度2種類控除不可対応税額を差し引いた上で、按分計算を行います。
【ケース例】
上記(1)(2)のケース例からの続きで、以下の前提を追加した場合
- 按分調整基数:6万元
- 2種類控除不可対応税額:1万元按分調整基数 − 2種類税額 = 5万元
- 当該長期資産に係る当年度総売上高:1,000万元
- 当該長期資産に係る当年度の非課税取引収入:200万元
- 3種類控除不可項目の売上高:300万元
- 売上高比率 = 300万元 ÷ (1,000万元 + 200万元) = 0.25(25%)
計算式は、以下の通りとなります。
計算式:
3種類控除不可対応税額 = 5万元 × 0.25 =1.25万元
計算式:
5種類総控除不可税額 = 2種類控除不可対応税額 + 3種類控除不可対応税額
- 2種類控除不可対応税額:1万元
- 3種類控除不可対応税額:1.25万元
計算式は、以下の通りとなります。
計算式:
5種類総控除不可税額 = 1万元 + 1.25万元 =2.25万元
純額率 = 当該長期資産の帳簿価額 ÷ 当該長期資産の原価× 100%
※「帳簿価額」とは、原価から減価償却累計額を差し引いた金額をいいます。
(2)用途変更に伴う仕入税額の調整
【ケース例】
以下を前提とします。
- 2020年に設備を取得(原価:1,000万元、仕入税額:90万元)
- 2026年時点での減価償却累計額:400万元
- 帳簿価額:1,000万元 − 400万元 = 600万元
- 純額率:600万元 ÷ 1,000万元 = 60%
■ ケースA:控除可能 → 控除不可に変更した場合
(例:一般課税用から免税項目用に転用)
控除不可税額 = 仕入税額× 純額率
= 90万元 × 60% = 54万元
控除可能税額 = 仕入税額×(1 − 純額率)
= 90万元 × 40% = 36万元
- 資産価値がまだ60%残っているため、その部分に相当する仕入税額54万元は控除不可(仕入税額控除の調整対象)
- すでに消耗した40%分の36万元は、これまで通りの取扱いで問題ありません。
控除可能税額 = 仕入税額× 純額率
= 90万元 × 60% = 54万元
控除不可税額 = 仕入税額×(1 − 純額率)
= 90万元 × 40% = 36万元
- 資産価値がまだ60%残っているため、その部分に相当する仕入税額54万元は新たに控除可能となります。
- すでに消耗した40%分の36万元は、これまで控除できなかった期間に対応するため、引き続き控除不可です。
注意事項:
上記の計算は、あくまでも現行の増値税法に基づく試算例です。
現時点では、税務当局による詳細な計算方法の解釈やガイダンスは公表されておりません。そのため、実際の計算にあたっては、今後当局より公表される細則等に従っていただく必要がございます。今後の関連情報の公表にご留意いただけますと幸いです。
増値税の実務においては、各企業の状況によりケースバイケースでの対応が必要となる場合もございます。中国における増値税または関連事項につきましてご不明な点がございましたら、Aobaグループには経験豊富な税理士や弁護士が多数在籍しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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本記事の目的:
本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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