2021年4月13日発行【大湾区情報レター Vol.9】より
【中国がRCEP協定に合意 広州市が率先して支援策を公表 香港も将来の参加に期待】   

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。

 

【中国がRCEP協定に合意 広州市が率先して支援策を公表 香港も将来の参加に期待】   

8年間の交渉を経て、「地域的な包括的経済連携協定(RCEP)」が昨年11月にようやく締結されました。 日本、中国、ASEAN 10ヶ国を含む加盟15ヶ国の総人口は22.7億人、GDPは26兆ドル、輸出総額は5.2兆ドルと世界全体の約30%を占めています。 これにより、世界最大の人口、最大の経済規模、最大の発展可能性を擁する自由貿易地域が誕生しました。香港は現状加盟地域に含まれていませんが、RCEPの加盟国と頻繁に経済貿易取引を行っており、中華人民共和国商務部は、協定の規定と香港の実際の発展ニーズに従って、香港ができるだけ早くRCEPに参加することを支援すると述べました。これにより新しいサプライチェーンを拡大し、新しい貿易と金融の領域を拡大させていくこととなります。

輸入関税の免除

 香港貿易発展局(HKTDC)のニコラス・クワン(関家明)リサーチ・ダイレクターによると、今回のRCEPの重大な意義は、経済規模の拡大だけでなく、これらの地域が先進国、発展途上国、そして後発開発途上国を広くカバーしており、特に後発開発途上国に対して柔軟的な待遇を提供する、ということにあるとされています。また、ほとんどの加盟国はすでに相互に自由貿易協定(FTA)を締結しているものの、RCEPの条文はそれらの協定の内容よりも広義であり、特に、日本はこれまで二大貿易相手国である中国と韓国との間においてFTAを締結しておらず、今回の  RCEP協定により、日中間の関税減免対象製品の割合が現在の約8%から約86%へ、日本の韓国向け輸出貨物の関税減免を享受できる貨物が現在の約19%から約92%へと急増することは注目に値する、と述べられています。

 さらにクワン氏は、「RCEP加盟国は今後20年の間に、各国の関税減免実行表に従い、大部分(約92%)の工業製品の輸入関税の免除を徐々に実施していくだろう。一部加盟国の関税率表が一律に他国に適用されるケースもあるが、中国、インドネシア、韓国、フィリピン、ベトナムなどの国においては、各加盟国に対してそれぞれ個別の関税率表を制定している。」と付け加えました。

非関税障壁の撤廃

 さらに、RCEPのもう一つの大きな意義は、加盟国間の貨物貿易における非関税障壁の撤廃です。 15ヶ国すべてが単一の原産地規則を採用することに合意し、また付加価値基準を40%と各国が合意した水準と同じかそれ以上の水準に設定しました。 つまり、RCEP加盟国の企業は、FTAで取引を行う際に、1つのルールと手続きに従えばよいため、原産地証明に関してより多くの選択肢と柔軟性を享受することができ、通関にかかる時間と手続きの軽減にもつながります。

 RCEPの貿易上のコミットメントが徐々に展開されていく中で、クワン氏は、域内のバリューチェーンの変革を促進するのに役立つことが期待されると述べています。例えば、上述の原産地規則により域内の商品の輸送がより便利になり、中国から他国へのサプライチェーン拡大を推し進めることが可能となります。「現在、中国の日本からの自動車部品の輸入は、二国間貿易の約27%を占めています。 RCEPでは、日本の自動車部品の対中輸出の約9割が無関税となります。RCEP協定で日本が中国や韓国に対して行った新たなコミットメントは、自動車産業の発展に寄与することが期待されています 」と述べました。

広東省は準備万端

 RCEPにより、広東省の対外貿易発展に新たな勢いが加わり、企業の発展に新たな機会がもたらされようとしています。

 現在、ASEAN加盟国は広東省の第一の貿易相手国となっています。 税関のデータによると、広東省-ASEAN間の輸出入は、2015年の7,040億9,000万人民元から2020年には1兆900億人民元に成長し、年平均成長率は9.1%と、同時期の広東省の対外貿易全体の成長率よりも6.9%高くなっています。その背景には、広東省-ASEAN間における貿易・産業ネットワークがますます強化されてきていることが挙げられます。

 輸入の面では、中華人民共和国税関総署広東支局統計分析作業部の責任者、辛楊(シン・ヤン)氏の分析によると、他のRCEP加盟国14ヶ国は2020年における広東省の消費財の主要な輸入元となっており、広東省はこれらの国から786.5億人民元の消費財を輸入し、こちらの金額は輸入全体の34.2%を占めています。

 RCEPの枠組みで輸入関税の引き下げが進み、「ゼロ関税」までさらに引き下げられていくことで、消費財の輸入コストは引き続き減少し、広東省および中国国内の消費者市場のさらなる活性化につながります。

 広州市は、その中でもより一層のRCEPによる飛躍を目指しています。 今年の2月初め、広州市は中国全国で初めてRCEP推進のための地方支援策として「広州市がRCEPのチャンスを捉え、越境EC取引の革新的な発展を促進するためのいくつかの措置(意見募集稿)」を公表しました。

 この措置は、港湾ビジネス環境の最適化、革新的な開発主体の育成、自主的なイノベーション能力の強化、国際的なマーケティングネットワークの拡大、専門的な人材育成の強化などが含まれた豊富な内容となっています。

 例えば、越境EC企業の新規上場に対して最高1,100万人民元の奨励金が支給されます。また、海外倉庫に対する最高150万人民元の補助金を支給し、企業が独立した海外ステーションを開設することを奨励しています。その他にも、企業がイノベーション要素を含む事業への投資を増やすことに対する支援、グローバル越境EC規則の策定、越境EC専門業者に対する100万人民元の奨励金支給、ハイエンド人材に対する個人所得税の優遇措置 などが述べられています。

 広州市商務局によると、支援策はまもなく正式に発表され、実施される予定です。 RCEPによるチャンスを得た広州市はより多くの期待を集めています。

香港もRCEPへ参加希望

 行政長官の2020年の施政方針演説でも述べられているように、香港は、地域の主要な金融・貿易の中心、交通のハブであり、中国本土、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランドを含むRCEP加盟国のうち13ヶ国とFTAを締結しており、RCEPへの参加に適した条件を十分に備えています。エドワード・ヤウ(邱騰華)商務・経済発展局局長は、2019年のRCEP加盟13ヶ国と香港との貿易総額は7,655億米ドルとなり、香港の貿易総額の71%を占めると述べました。

 香港政府は、香港の協定への正式加入に向けた協議をできるだけ早く進め、協定発効後、香港が一番乗りで正式加入する経済体となることを積極的に目指していきます。

 また、ヤウ氏は「RCEPへの参加は、香港が地域経済協力により深く参加していくための重要なマイルストーンである。これにより、香港の、地域産業チェーンへのさらなる統合が促進され、香港とRCEP参加経済圏との経済・貿易・投資の結びつきが強化されるだけでなく、RCEPの関税減免、市場開放、貿易障壁の解消、通関手続簡易化などの措置により、貿易コストの低減など、香港の貨物、企業に大きな恩恵がもたらされ、域内での市場拡大のための新たなチャンスをもたらし、コロナ後の世界経済の回復に大きな原動力になるであろう。」と考えています。

 RCEPは、人民元のさらなる国際化を始めとし、世界の経済・貿易システムに多大な影響を与えます。ヤウ氏は「中国本土は加盟国の中で最大の経済体であり、RCEPは国境を越えた人民元の貿易決済や投資を促進するための有利な環境を提供し、地域における人民元の使用を促進することが期待されている。」と説明しています。 香港は、地域内の第一の国際金融センターとして、オフショア人民元決済センターとしての役割も十分に果たすことができます。

 「香港は世界に先駆けた人民元貿易決済センターとして、さまざまな種類のクロスボーダーおよびオフショア人民元取引活動をサポートしてきました。 また、香港のオフショア人民元金融・外国為替市場やさまざまな相互利用措置は、市場参加者に人民元のリスク管理や金融投資のための多様な選択肢と便利なチャンネルを提供しています。 」 ヤウ氏は、2020年1月~11月に香港経由で取り扱われた人民元の貿易決済取引量が5.7兆人民元を超え、2019年同期比で20%増加していること、香港のオフショア人民元プーリングの規模が7,000億人民元を超え、世界最大であると述べました。 政府は引き続きRCEPの発展を注意深く見守り、オフショア人民元ビジネスの世界的なハブとしての香港の地位を強固なものにするために、オフショア人民元市場のさらなる発展に注力していきます。

【参考資料】

中国がRCEP協定に同意 広州市が率先し支援策を公表


RECP: A New Milestone for Regional Cooperation (CGCC VISION 2021年3月号)

 

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*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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