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【中国】社会保険料の納付が、初めて納税信用管理システムに組み込まれることに!

 

2025年7月1日より、国家税務総局が公布した『納税・納付信用管理弁法』(以下「弁法」という)が正式に施行されました。これにより、社会保険の納付が初めて納税信用管理に組み込まれ、企業の信用評価と社会保険コンプライアンスが直接連動することとなります。

 

主な内容を、下記の通りご案内いたします。

 

 

社会保険の税制統合による企業信用評価への影響

「弁法」では、社会保険料および非税収入*が信用評価システムに組み込まれ、企業が社会保険料を期限通りに全額納付しなかったり、虚偽の労働関係を構築して社会保険を不正受給したりする行為は、直接信用評価に影響を及ぼすこととなります。要するに、企業の税務と社会保険の管理がより密接に連携することになり、いかなる違反行為も重大な結果を招く可能性があります。例えば、信用評価が低下した場合、企業は税制優遇、融資審査、政府入札などにおいて制限を受ける可能性があります。

 

※非税収入とは、当局の税金以外の行政事業の手数料、国有資源の使用料、罰則金などによる収入を指す。

 

 

 

評価期間と評価レベル

  • 評価期間:毎年の1月1日~12月31日

 

  • 信用評価レベル:A・B・C・D・Mの5段階に設定されています。
信用評価レベル 判定基準
A級納税信用 年度評価指標スコア90点以上かつA評価不可指標がない場合
B級納税信用 年度評価指標スコア70点以上90点未満
C級納税信用 年度評価指標スコア40点以上70点未満
D級納税信用 年度評価指標スコア40点未満、または直接判定された場合

※脱税、納税義務を履行しなかったため税務局に「非正常戸」と認定される、または重大な税務違法信用失墜主体など、複数の状況に該当する場合は、スコアに関係なく直接D判定となります。

M級納税信用 新設企業、または評価年度内に営業収入がなく、かつ年度評価指標スコアが70点以上の企業

 

 

 

評価メカニズムの最適化

1. 減点メカニズムによる合理的な調整

申告期限を過ぎた場合の減点方式が「回数ベース」から「月ベース」に変更されることにより、単一項目が評価結果に過度に影響することを防止、小さなミスが積み重なることで、与える影響が大きくなることがなくなります。

 

 

2. 信用回復メカニズムの柔軟化

企業は、自発的な信用失墜行為の是正や信用誓約の提出などによって信用ポイントを回復できるようになります。詳細はこちらです。

 

信用失墜行為の是正期間 信用ポイントの回復率
信用失墜行為発生から3日以内に是正 100% 回復(減点分を全額返済)
30日以内に是正 80% 回復
90日以内に是正 60% 回復
90日超で是正 40% 回復

 

また、年度評価に反映されていない信用失墜行為については、企業が年度評価時点より前に是正した場合、税務当局が是正状況を確認の上、評価を調整することになりますが、年度評価時点を過ぎ、信用失墜行為が年度評価に反映された場合、信用回復の申請をしなければならなりません。

 

 

 

二、当局が社会保険料に対する監督を強化、企業はコンプライアンス対応が急務

2025年以降、各地の税務局が、従業員全員分の社会保険料を全額納付していない企業に対し「是正勧告通知書」を発行し、所定期間内の追加納付を義務付けており、これに違反した場合、延滞金や罰金の対象となり、企業信用評価の低下リスクが生じることになります。

 

 

コンプライアンスの重要ポイント:

従業員の社会保険料算定基礎は、原則として前年度の月平均給与(または前月給与)を基準とし、同時に上限と下限が設定されています。

 

  • 下限:各地で定められた最低算定基礎(当地の社会平均賃金の60%)
  • 上限:各地で定められた最高算定基礎(当地の社会平均賃金の300%)

 

現在、多くの企業が最低賃金もしくは、最低算定基礎を基準として社会保険料を納付していますが、最低賃金は法律で定められた社会保険料納付の最低基準であって、算定基礎そのものではありません。さらに、一部の省・市では、企業が最低算定基礎で従業員の社会保険を納付していた場合、従業員が退職した際に企業が経済的補償を支払う必要があると規定しています。

 

 

 

三、納税信用を確保するための、社会保険納付に関する注意事項6選

 

①「従業員が自発的に社会保険を放棄」しても合法か?

→ 違法です。社会保険への加入と保険料納付は、雇用主と労働者双方に課された法的義務です。

 

②「試用期間は社会保険不要」か?

→ 違法です。試用期間であったとしても、雇用主は労働契約開始日から30日以内に社会保険登録手続きを行う必要があります。

 

③「契約書未締結=社会保険免除」か?

違法です。労働関係は契約書の有無だけでなく、事実上の労働関係がある限り、社会保険納付は必要となります。

 

④「他社に社会保険の納付代行を委託」できるか?

→ 違法です。虚偽の労働関係を構築することで、社会保険給付を受けるということは、詐欺行為に該当します。

 

⑤「通勤中の怪我は全て労災」か?

→ 条件付きです

    1. 合理的な時間・経路での「通勤中」であること
    2. 「交通事故(自動車・鉄道・船舶等)」が原因であること
    3. 「本人の主たる過失でない」こと

 

の3つの要件を満たす必要があります。

 

⑥「法人代表には必ず社会保険納付が必要」か?

→ 労働関係の有無で判断

法人代表が会社と実質的な労働関係を有する場合、社会保険への加入が義務付けられます。

 

 

 

中国での労務や税務に関するお悩みや問題を抱えている場合は、お気軽にお問い合わせください。弊社グループの弁護士および税理士に加え日系企業様の事情に詳しいコンサルタントを交えながら対応させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考リンク先:

国家税务总局关于发布《纳税缴费信用管理办法》的公告
关于《国家税务总局关于发布〈纳税缴费信用管理办法〉的公告》的解读

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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