2021年9月14日発行:仏山のデジタル・インテリジェント化が巨大な市場需要を生み出す【大湾区情報レター Vol.20】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。

 

仏山のデジタル・インテリジェント化が巨大な市場需要を生み出す

 深圳証券取引所上場の中国国内大手家電メーカー、美的(Midea)グループ(仏山市順徳) の子会社でドイツに本社を置く産業用ロボット製造の庫卡(KUKA)社は、2021年の上半期業績報告書を公表しました。 当報告期間中のKUKAの受注高は18億8,800万ユーロ(前年同期比52.2%増)、売上高は15億2,900万ユーロ(前年同期比30.9%増)、税引後利益は2,600万ユーロ(前年同期比100%以上増)となりました。

 マーケットの絶好のチャンスをとらえ、今年4月、仏山市順徳にて「Midea-KUKA インテリジェント製造科技園」の第2期工事が開始されました。今後3~5年の開発ニーズに対応するため、1年半以内に6棟の建設を完了させる予定です。 この計画によると、同科技園では、今年14,000台のロボットを生産販売、その生産額は20億人民元に達する予定です。

 国内のロボットの5分の1を生産する産業ハブである仏山は、ロボット企業にとって益々魅力的な場所になっています。 今年の上半期だけでも、エクストン(ESTUN)、川崎重工、藍胖子(Dorabot)などの国内外の主要なロボット企業が進出してきており、現存企業の拡大と相まって、現地のロボット産業は拡大を続けけており、急速な発展の時期を迎えています。

 仏山市の「第14次5ヵ年計画」によると、2025年までに、インテリジェント生産設備やロボットなどの4つの主要産業クラスタの生産額が3,000億人民元に達するとしています。 仏山のロボット産業は更なる飛躍の転機を迎えており、製造業もデジタルインテリジェンスによる変革の新しい波を引き起こし、かつてない発展のチャンスが訪れています。

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大手企業が製造ハブに集結 拠点を先取り

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南京エクストン社 × CLOOS社

 Nanjing Estun Automation Company(南京エクストン)は、三龍湾順徳潭州コンベンションセンター 南区にある土地を落札し、その持株会社が隣接する土地を落札しました。 2つの敷地は合計70畝(ムー)*で、4億人民元以上の投資を行い、2つのインテリジェント製造拠点を建設します。
*畝(ムー):中国の伝統的な面積の単位で、1畝は6000平方尺(6.67アール)にあたる。 

 1993年に設立されたエクストンは、当初はコンピューター数値制御(CNC)工作機械のビジネスを展開していましたが、2011年よりロボット分野に進出しています。同社は、仏山市三龍湾に投資し大湾区本部を設置し、買収したヨーロッパの溶接ロボットのトップ企業であるCLOOS社と共にCLOOS 溶接ロボット(華南)技術センターを建設し、仏山市が産業用ロボットからシステムインテグレーションまでの産業チェーン全体の発展パターンを形成するのに役立つと期待しています。

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カワサキロボティクス社 × ROSSUM社

 エクストンのみならず、4月、川崎重工業グループのカワサキロボティクス(川崎機器人; Kawasaki Robotics)は地元仏山の隆深機器人有限公司(ROSSUM)と手を結び、1億人民元を投じて合弁会社を設立しました。 合弁工場への投資額は10億人民元に達し、2021年8月の生産開始を予定しており、年間売上高は8億人民元となります。

  カワサキロボティクスは、産業用ロボットの研究開発と製造に強みを持つ、世界5大ロボットブランドの1つです。ROSSUMは、仏山の新興ロボット企業であり、家電ロボットの研究開発・製造で主導的な優位性を持っています。2015年には中国の家電業界における代表的なシステムインテグレーターの分野のリーダーとなりました。

 両社の協力関係には長い歴史があります。2014年にROSSUMとカワサキロボティクスは代理店関係を確立し、2017年には両社が共同で中国初のエンジニアリング研究開発センターを設立し、ROSSUMの自動車産業への参入に大きな弾みをつけました。 現在、両社は合弁での工場建設のために深く手を取り合っており、ロボット本体製造におけるさらなる飛躍を目指しています。

 カワサキロボティクスとROSSUMの協力関係は、典型的な例といえます。 近年、産業構造の変化に伴い、ROSSUMやJaten Robotics(嘉騰機器人)など、仏山の地場のロボット企業が台頭してきました。「カワサキ前」には、ABB、KUKA、ファナック、安川電機の世界4大産業ロボットメーカーが進出しており、「カワサキ後」には、国内のリード企業エクストンが頭角を現してきました。

 

異業種であったMideaと碧桂園のロボット分野への進出

 4年前、Mideaと大手不動産業者の碧桂園(Country Garden)はロボット分野に異業種から進出し、MideaはドイツのKUKAを292億人民元(36.2%のプレミアム)で買収、Country Gardenは順徳ロボットバレーの建設に800億人民元を投資することを発表しました。

 MideaがKUKAと手を組んだ2年目(2018年)、KUKAのCEOであるティル・ロイター氏の退任が年初に報道されました。 当年度KUKA社の業績は急激に悪化し、売上高6.8%減、利益80%減となりました。 また、KUKA社を含むロボティクス&オートメーションシステム事業は、Mideaグループの中で唯一減収の業務となりました。

 2019年、KUKA社の年間総売上高は31億9,070万ユーロで、2018年の同時期に比べて1.6%減少しました。2020年は、新型コロナ肺炎流行の影響により、KUKA社のビジネスはさらに後退し、年間の売上高は前年比19%減となりました。 このように下落傾向が継続された状況で、Mideaは何度も批判の的となりました。

 KUKAの業績が低下する中、MideaはKUKAに事業戦略の調整を促し、特にKUKAの現地化プロセスを積極的に推進しました。 2018年には、前述のように、順徳に「Midea-KUKA インテリジェント製造科技園」の建設をスタートさせました。

 今年の上半期の営業データを見ると、KUKA社の国内での業績は顕著です。 KUKAグループ中国支部の上半期の受注総額は3億5710万ユーロ(前年同期比43.2%増)、売上高は2億6230万ユーロ(前年同期比97.2%増)であったと開示されています。 KUKAグループの上半期の累積受注額は、前年同期比52.2%増の18億8,800万ユーロとなりました。 業績の面からみると、KUKA社は状況を好転させることに成功しました。

 Country Garden傘下の博智林(Bright Dream Robotics)についてはしばらくの沈黙を経て、今年の上半期に明るいニュースが多くありました。 2月には、同社が50種類近くの建設用ロボットとインテリジェント製品を開発していると発表され、3月には最初の商用利用プロジェクトの公開と合わせて18種の建設用ロボットが商用化されたことが発表されました。8月24日、Country Gardenの莫斌社長は中間決算会見において、Bright Dream Roboticsの建設用ロボットとインテリジェント建設ビジネスは来年には黒字転換が可能であろうと述べました。

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産業用ロボット産業パークを仏山市に建設

 仏山市は、いち早く産業用ロボットの産業パークを建設し、中国の主要なロボット生産地の一つとして発展してきましたが、中国国内の他のライバル地域との競争もますます激しくなってきました。

 大規模な製造業の都市である江蘇省蘇州市のロボット産業の発展見通しは近年非常に明るく、産業用ロボットとインテリジェントロボットの2つのカテゴリの製品には、完全な産業チェーンが形成されています。 蘇州市昆山には、100ムー以上の面積を持つ国家レベルのロボット産業パークがあり、哈工大機器人グループ(HRG)や艾博機器人(ABLE ROBOTICS)など、すでに数十社のロボット企業が集まっていることは特筆すべきことです。

 広東省では、仏山にほど近い東莞市でも、近年ロボット産業の発展を積極的に推進しており、今年上半期において東莞の産業ロボット市場のプレイヤー数は大幅に上昇し、産業用ロボット生産量は前年比で123.3%増加しました。

 2020年末の統計によると、仏山市の規上企業(**)でロボットを使用しているのは7.5%に過ぎません。 これは製造業がデジタル化やインテリジェント化を推進するにつれて、仏山でのロボット需要の爆発的増加が到来する大きな可能性を示しており、仏山のロボット産業の発展にとって大きなチャンスとなることが予想されます。ロボットの需要急増のチャンスをいかに活用し、産業の欠点を補い、新たな段階に進むかということが仏山にとっての課題となっています。  **規上企業:年間主要事業収入が2,000万人民元以上の産業企業のことを指す。

 

【参考資料】

・佛山のデジタル・インテリジェント化が巨大な市場需要を生み出す

 

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*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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