2021年3月16日発行【大湾区情報レター Vol.7】:
クロスボーダー・ウェルスマネジメント・コネクト

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。

 

跨境理財通(クロスボーダー・ウェルスマネジメント・コネクト)

2021年2月5日、中国人民銀行及び中国銀行保険監督管理委員会、中国証券監督管理委員会(CSRC)、国家外貨管理局(SAFE)、香港金融管理局(HKMA)、香港証券先物事務監察委員会(SFC)、マカオ金融管理局(AMCM)は、「広東、香港、マカオ大湾区における【跨境理財通】パイロットプロジェクトに関する覚書」に署名しました。

 「跨境理財通」(クロスボーダー・ウェルスマネジメント・コネクト)とは、広東、香港、マカオの居住者である個人による、同地区内の銀行が販売する金融商品への、大湾区の個々の居住者の国境を越えた投資を指します。購入者の居住地に応じて「南向通」(サウスバウンド)と「北向通」(ノースバウンド)に分けられます。

 「南向通」とは、広東省内の大湾区の居住者である個人が香港及びマカオの銀行に投資口座を開設し、香港及びマカオの銀行が販売する適格投資商品を購入することを指します。一方、「北向通」とは、大湾区の香港・マカオの居住者である個人が、広東省内の大湾区の銀行で投資口座を開設し、当銀行が販売する適格投資商品を購入することを指します。

 跨境理財通は、国際慣行を尊重しつつ、3地域の個人資産運用商品の管理に関する法令を遵守する必要があります。南向通と北向通の投資家資格、投資方法、投資商品の範囲、投資家の権利利益の保護、紛争の処理などについては、中国人民銀行、中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)、CSRC、SAFE、HKMA、SFC、AMCMが決定します。

 南向通と北向通の業務資金使途は対象となる投資商品の購入のみに限定されています。資金移動はクロスボーダー人民元により決済され、資金の換金はオフショアマーケットにて行われます。南向通と北向通に対するクロスボーダーの資金の流れの総額上限と個人投資家枠は、マクロプルーデンス調整係数によって流動的に調整されます。

 時を遡って2020年6月29日に、跨境理財通のフレームワークの内容はHKMA、中国人民銀行及びAMCMにより共同発表されており、HKMA総裁ユー・ワイマン(余偉文)氏は「双方向の跨境理財通は、股票通(ストック・コネクト)と債券通(ボンド・コネクト)に続く、本土の資本勘定の自由化におけるもう一つの重要なマイルストーンであり、香港人民元オフショアビジネスの発展を促進する上での大きな突破口であり、大湾区の金融協力を深める上でのハイライトでもある。大湾区における国境を越えた金融サービスや投資の必要が高まっていることから、両地の金融業界は跨境理財通に大きな期待を寄せています。跨境理財通の立ち上げは、香港の金融機関が中国本土の金融自由化に参加し、両地の住民の資産管理ニーズに応える上での戦略的優位性を示している。我々は、香港証監会(SFC)や関連の中国本土当局と緊密に連携し、本日発表された枠組みに沿って、跨境理財通の早期立ち上げに向けて、関連業界と緊密に協議し、詳細を確定の上できるだけ早く実施するように努力します。」と述べています。

 

高まるマーケットニーズ

 2020年の「方太胡潤財富報告」(FOTILE · Hurun Wealth Report 2020)によると、大湾区には600萬人民元を超える投資可能資産を有する富裕層が45万5000世帯存在しています。

 広東省政府の2021年全省金融工作会議で公開されたデータによると、2020年末時点で香港市場に上場している広東省企業は274社に達しており、深港通(深セン・香港ストックコネクト)の取引規模は拡大を続け、年間取引額は14.3兆人民元でした。大湾区のクロスボーダー人民元決済額は17.2兆人民元に達し、米ドルに代わって人民元が大湾区のクロスボーダーの決済通貨のトップに躍り出ました。

 現在、中国内居住者の海外資産への主要投資チャネルとしては、港股通(香港ストック・コネクト)、中国と香港のファンドの相互承認(MRF)、QDII(適格国内機関投資家)ファンド、滬倫通 (上海・ロンドン・ストック・コネクト)などが主なものとなっていますが、跨境理財通の登場により、中国居住者にとっては、ファンドや株式に加えて、香港やマカオの銀行が販売する適格投資商品の購入がより便利になり、香港居住者にとっても魅力的である人民元資産は大いに歓迎されることは間違いないと思われます。

 

実施に向けた準備

 今回署名された覚書では、情報の交換の管理監督、法律執行に関する協力、投資家の保護、連絡・協議メカニズムなどが取り上げられています。例えば、資金管理の原則に関して、香港とマカオの投資家が北向通のために送金された資金を確実に対象となる投資商品の購入のみに使われるのと、投資商品から換金された資金も同様に人民元でクロスボーダーで送金され、クローズド・ループ管理を実現できるように、中国人民銀行とSAFEが中国本土の銀行に対し投資口座の管理を強化するように指示することを合意したとされています。南向通についても同様に、HKMAとAMCMは、香港とマカオの銀行へ投資口座の管理を強化するように指示することを合意したとされています。

 また、跨境理財通のパイロットスキームでは、「業務発生地管理」を原則とし、広東省、香港、マカオ3地のウェルスマネジメント商品の販売に関する法規制にそれぞれ従います。中国本土、香港、マカオの銀行は、投資家が南向通と北向通のために使用された資金や金融商品を担保、保証など、他の目的に利用されないように経営管理を強化します。

 現在、跨境理財通の準備作業は各地各部門の協力により積極的に進められており、関連の規則及びシステム構築が完了した後、正式にパイロットスキームが開始されると思われます。

 

【参考資料】

跨境理財通間もなくスタート、中国本土、香港、マカオ7部門が覚書に署名

中国人民銀行、香港金融管理局とマカオ金融管理局が、大湾区における「跨境理財通」パイロットスキームに関する共同発表

香港金融管理局は「跨境理財通」を歓迎

FOTILE·Hurun Wealth Report 2020 (2020方太胡潤財富報告)

広東省、多くの金融指標で中国国内1位にランクイン 大湾区での国際金融ハブの建設を支援

「跨境理財通」年末までに実施か、具体的な詳細は未定 (第一財経)

 

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*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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