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2024/25年度香港個人所得税における生殖補助医療サービス費用の控除について

 

今年も、1年に1回の香港個人所得税申告の時期がやってまいりました。

 

香港では、毎年5月初めに各個人宛に個人所得税申告書(BIR60)が紙またはネット(e-tax)にて発行され、提出期限は紙申告の場合は発行日から1ヶ月以内、ネット申告(e-tax)の場合は2ヶ月以内となっております。税務局からの督促や無申告によるペナルティを防ぐためにも、期限内に申告を行うことが非常に重要となります。

 

各企業は、雇用主として従業員への給与を含む該当年度の報酬支払額を既に税務局へ申告済み(雇用主は毎年4月に申告)となりますので、雇用主の申告書(フォーム56B-Employer’s tax return)の控えを雇用主から受領し、報酬内容を確認の上、期限内に忘れずに申告を済ませましょう。

 

個人所得税申告書(BIR60)の記入および提出に関する責任は個人に帰属することになりますので、会社内で対応してもらえる場合でも任せきりにせず、内容や期限についてのモニタリングをしっかり行いましょう。

 

さて、今回はそんな個人所得税申告において新たに発表された控除項目「生殖補助医療サービス費用」についてご紹介いたします。

 

 

新たな個人所得税控除項目―生殖補助医療サービス費用の税額控除

2025年2月28日、香港政府より生殖補助医療(Assisted reproductive=AR)サービス費用の税額控除にかかる税務条例が公布されました。この改正条例は、個人所得税における生殖補助医療サービス(以下、ARサービス)費用の税額控除を規定するもので、課税年度中に支払われた適格のARサービス費用は、2024/25年度課税対象年度分から控除可能となります。

 

香港では近年、日本や他の先進国と同様に低い出生率となっており、その対策として本改正が施行され、不妊治療にかかる経済的負担を軽減することで出産を促進し、不妊治療で悩む夫婦が必要とする医療支援を行うことを目的としています。

 

 

税控除の対象者とは?

適格ARサービス費用を、控除できる対象者は、以下のいずれかの者となります。

-納税者

-納税者の配偶者(別居していない)

-納税者と納税者の配偶者(別居していない)

 

 

適格のARサービスを受ける者、または受ける予定の者は、以下のいずれかの者が対象となります:

-納税者

-納税者の配偶者

-納税者と納税者の配偶者

 

 

 

適格のARサービスの対象者:

条例に基づき、医学的な理由によりARサービスを受ける以下の2つのグループが税控除の対象となります:

 

-不妊カップルまたは特定の状況にある者*

-化学療法、放射線療法、手術、その他の医療処置の結果として、不妊となる可能性のあるがん患者、またはその他の患者

 

 

*特定の状況とは以下を含む:

-HRTO第15条(3)に規定された条件下で、胚の性別選択を受けることを許可されたカップル、

-生殖技術(RT)処置を継続して受ける者で、HRTO第15条(7)に記載されているような処置に従って配偶子または胚が女性の体内に置かれたときに婚姻の当事者であった者は、RT処置を受けた時点で婚姻関係である必要はない。

 

 

 

適格のARサービスとは:

-HRTO第2条(1)に基づき定義される生殖技術(RT)処置であり、関連する認可センターにおいて提供されるもの(RT処置に関連する医療サービス含む)。

 

-関連する認可センターで提供される配偶子または胚(RT処置に関連して使用されるか、または使用されることが予定されている)が取扱われ、保管および処分されるもの

 

 

 

認可センター

関連の認可センターは、HRTOの下で規制され、人類生殖科技管理局(Council on Human Reproductive Technology、以下「CHRT」) によって発行される以下のライセンスを保有するセンターを意味します。

 

-夫による人工授精(AIH)ライセンス

-治療ライセンス

-保管ライセンス

 

CHRTのウェブサイトで、認可されたセンターのリストを確認する事ができます。

 

 

*HRTO条例に基づき、関連ライセンスを付与されていない場合は、上記の治療行為を行ってはならない。

 

 

 

控除可能額と控除の申請について

納税者が課税年度中に支払われた適格なARサービス費用の金額、または課税年度の控除上限額10万ドルのいずれか少ない額が控除可能となります。

 

 

既婚者による控除申請

既婚納税者は、本人または配偶者(別居していない)が支払った適格なARサービス費用について控除を申請できます。ただし、配偶者が既に申請した費用は控除対象外となります。

 

既婚納税者、納税者の​​配偶者、または両者に認められる控除額は、課税年度中に両者が支払った費用の合計額、または課税年度の控除上限額である10万ドルのいずれか少ない金額となります。納税者と配偶者は、申請した控除額の配分を自由に決定できます。

 

課税年度中に納税者の婚姻状況が変更された場合でも、納税者、納税者の​​配偶者、または両者に認められる控除額は10万ドルが上限となります。

 

 

申告方法

納税者は、2024/25年度以降の個人所得税申告書(BIR60)において、対象となるARサービス費用の控除を申請することができます。

 

今回の改正に伴い、2024/25年度個人所得税申告書(フォームBIR60)では、以下の項目が追加されているため、こちらに当該費用を記入し申告することになります。

 

 

 

 

証明書類を受け取り保管しておくことをお勧めします。

税額控除申請予定の納税者は、関連するRT処置の臨床責任を負う認可センターの登録医師に、支払った費用の日付と金額、および納税者が税額控除を受ける資格があることを証明する適格 AR サービスの証明書の標準フォーム (証明書) に署名して発行するよう依頼する必要があります。

 

納税者が確定申告書を申告する際には、証明書類を添付する必要はありませんが、上記証明書と関連する領収書は、税務局から要求された際に提出できるように、該当する課税年度終了後6年間保管する必要があります。

 

 

 

 

 

 

香港個人所得税の控除項目は、年々増加しており、基礎控除や上記の控除以外にも、指定保険商品の購入などによる控除が可能になるなど、近年複雑化しています。また、日本から派遣の駐在員の皆様、および海外複数拠点で就労をされている場合において、ご自身や会社の人事スタッフでは対応が難しいといったこともございます。

 

弊社では、これまでに多くの企業の駐在員等の方々の申告代行をさせていただいております。個人所得税申告についてお困りの点がございましたら、ぜひ青葉へお問い合わせ下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参照元WEBサイト:

Tax Deduction for Assisted Reproductive (AR) Service Expenses

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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