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香港の税務リスクシリーズー第五回: 知的財産に対する源泉税について

 

香港では海外に所在する株主に対して支払われる配当や、香港非居住者に利息が支払われる際において、香港での源泉徴収税の対象とはなりません。

 

しかしながら、唯一、香港での源泉税の課税対象となるのが、海外の法人や個人が保有する知的財産などの無形資産を香港法人が使用したことの対価として支払われる「ロイヤルティ(Royalty)」や「ライセンス料」となります

 

香港法人から非居住者に支払われる 香港での源泉税
配当 なし
利息 なし
ロイヤルティ、ライセンス料 あり

 

 

今回は知的財産の使用料に対して課せられる源泉税について説明いたします。

 

 

香港非居住者への知的財産の使用料と申告状況

知的財産の使用料=ロイヤルティ・ライセンス料

「ロイヤルティ」とは、もともと、王位、王の権利を意味しておりますが、ここから転じて、権利を持つ者に支払う対価の意味として用いられ、「ライセンス料」まはた「ロイヤリティ」はともに特許権、商標権、著作権、ノウハウなどの無形の知的財産を使用することの対価として支払われるものを指します。

 

ただ、特許権や商標などの使用に対しては「ライセンス料」、フランチャイズの権利使用料に対しては「ロイヤルティ」として言葉が使い分けられている傾向がございますが、税務上の取り扱いは変わりません。

 

 

 

申告漏れが散見される源泉税

すべての企業に対して申告義務のある法人税と異なり、源泉税は該当する支払いがある場合においてのみ申告義務が発生するため、源泉税に関しては自らの会社がその申告対象であるかどうかについて認識できていないケースもたまに見受けられます。

 

そのため、弊社が新規でサポートさせていただくクライアントの決算書を確認した際に、費用項目に日本の親会社や関連会社に対する「ライセンス料」や「ロイヤルティ」などの支払いが行われているにも関わらず、適切に源泉税の申告が行われていないことが発覚し、過年度分を追加申告したというケースもございます。

 

 

 

 

 

知的財産権の使用料に対する源泉税の申告方法

1. 年度末決算日から4カ月以内に税務局に対して書面による通知

源泉税の対象となる「ライセンス料」や「ロイヤルティ」の支払いが発生した場合、初めて当該費用が発生した年度の年度末決算日から4カ月以内に税務局に対して書面による通知を行う必要がございます。

 

 

 

2. 支払主である香港法人に対して、源泉税申告書(フォームB.I.R54)が発行

通知を受けた税務局は、費用の受取主である海外法人や個人に直接課税することができないため、支払主である香港法人に対して、海外の受取主に対する源泉税申告書(フォームB.I.R54)を発行してまいります。

 

 

 

3. 香港法人により申告および納税

申告書を受け取った香港法人は、費用の受取主に代わって申告手続きを行います。申告後、納税が必要となる場合は、受取主に対する納税通知書が香港法人宛に発行されてまいりますので、香港法人が受取主に代わって納税する流れとなります。

 

 

 

 

源泉税の申告期限

源泉税の申告期限は、法人税の期限と同じ(下表参照)であり、源泉税対象となる費用が発生する限りは、申告書が発行され続けます。

 

決算日 申告期限
法人税 源泉税
毎年1~3月内 同年11月15日 同左
毎年4~11月内 翌年4月30日 同左
毎年12月内 翌年8月15日 同左

 

 

 

もしも使用料の支払いがなくなったら

契約終了などに伴い、支払う必要がなくなった際には、最終の支払いが発生した年度の申告書を提出する際に、税務局に次年度以降は関連の支払いが発生しない旨を書面で通知を行うことをお勧めします。

 

また、初めて源泉税の対象となる費用が発生した際に行うべき税務局への通知を怠り、後に税務局からの過去年度における申告義務を指摘された場合、通知を怠ったことに対する罰則金や、支払うべき源泉税に対する追徴税課税などが科せられてまいりますので、十分にご留意ください。

 

 

 

本来納税義務のある受取主(知的財産保有者)により負担する会計手続きを

支払主である香港会社が受取主に代わっての納税となるため、一般的にライセンス料やロイヤルティの支払主である香港法人は、受取主である海外法人・個人に当該費用を支払う際には、将来発生する源泉税分を差し引いた後の残額のみを送金し、差し引いておいた分は、いずれ支払うこととなる源泉税のために、引き当てしておくという対応が求められます。

 

 

 

知的財産権の使用料に対する源泉税率が異なる場合に要注意

また、ロイヤルティやラインセンス料は、受取主である海外法人の香港内での業務形態によって、源泉税の税率が支払額の16.5%、または4.95%と異なってまいります。

 

通常、香港では非居住者である海外法人や個人が香港で知的財産を使用した者からロイヤルティやラインセンス料を受け取る場合、支払額の内30%が課税所得として見なされますので、支払額に対して30%(みなし所得率) × 16.5%(法人税)、つまり4.95%の源泉税が課税されてまいります。

 

 

しかし、支払い先が、香港法人にとっての関連当事者(株式の過半数保有による支配関係や同一の者に支配されている会社)に対して支払われる場合は、みなし所得率が100%とされます。つまり支払額に対してそのまま16.5%の法人税が課せられることとなります。

 

ただし、この場合、過去において対象となる無形資産の全部または一部が香港内で保有されていたという事実がない場合は、関連当事者であったとしても30%のみなし所得税率が適用されることが可能となり、同様に4.95%の源泉税が課税されてまいります。

 

支払先 源泉税率
非関連当事者 支払額×4.95%
関連当事者 支払額×16.5%*

*過去において対象となる無形資産の全部または一部が香港内で保有されていたという事実がない場合は、30%のみなし所得税率が適用され、4.95%が適用。

 

 

 

 

 

 

海外法人や個人への費用の支払いなどがある企業においては、まずは自らが源泉税の申告対象であるかどうかを確認することをお勧めいたします。弊社での専門サービスが必要な際は、どうぞお気軽にお問合せください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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