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香港北部都会区シリーズ – ① 深圳前海と連携する士業・物流ハブエリア

 

2023年10月30日に香港政府により発表された「北部都会区アクション・アジェンダ2023」。

当計画では、香港総面積の約3分の1を占め、およそ3万ヘクタールとなる北部都会区を4つの地域にわけ、それぞれ異なる産業およびテーマにて開発されることが計画されています。

 

 

この4つに分けられた香港北部都会区の各エリアについて、1つずつ紹介していきたいと思います。今回は最西部のエリア(上図紫色の円で囲まれているエリア)、「①深圳前海と連携する士業・物流ハブエリア」について解説いたします。

 

 

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産業:ハイエンド専門サービスと物流ハブに特化したエリア

 

当エリアは香港北都の西側に位置し、既に開発されている元朗、天水圍がある場所です。現在開発中、洪水橋(Hung Shui Kiu)/厦村(Ha Tsuen)と元朗南(Yuen Long South)、そして今後開発されることになる、流浮山(Lau Fau Shan)/尖鼻咀(Tsim Bei Tsui)/白泥(Pak Nai)が含まれています。

 

当エリアは、深セン側にある前海深圳・香港現代サービス産業協力区(以下、前海協力区)と南山区に隣接し、深圳湾大橋で深圳湾港で結ばれています。また西部にある海岸線とその近くにはマングローブ林が生い茂り、香港湿地公園が設置されているなど、豊かな生態資源を有している。

 

 

 

始まりは深圳・前海協力区の発展計画

当エリアは、海を挟み隣接している深圳側の前海協力区および南山区の開発計画の拡張と相互補完が主題であるといえます。

 

 

前海協力区・南山区

前海協力区の開発は、既に2010年に開始され、長年にわたり、税制優遇措置、実施支援基金、専門サービスの開放などの措置を通じて、香港企業を誘致するための優遇措置を提供してきました。

 

2021年9月、中国政府は前海合作区の総面積を14.92平方キロメートルから120.56平方キロメートルに大幅に拡大する計画を発表し、同計画は、前海協力区で香港および国際標準に適合した「現代サービス業」の発展を促進することが強調されました。この現代サービス業には、金融サービス、法律サービス、情報サービス、技術サービス、現代物流 ロジスティクス、文化・クリエイティブ産業などを意味し、これらの産業において国際的なビジネス環境を構築するため、香港をはじめ世界各地から企業や人材を積極的に誘致しています。

 

現在前海協力区は金融サービスの拠点として機能しており、そして南山区はイノベーション技術、金融、クリエイティブ産業、その他の専門サービスの発展に力を入れています。また前海協力区と南山区には、世界的な企業が多数進出しています。

 

 

 

前海協力区・南山区の産業相互補完エリアとして

前海協力区や南山区が既に発展を推進している産業、金融、専門サービス、物流サービスなどの分野において経済協力を促進・深化させるため、当エリアの開発が行われる予定となっています。

 

 

洪水橋/厦村地区

 

洪水橋/厦村は、ハイエンドの専門サービスと物流サービスが主要産業となる予定です。

まずこのハイエンドの専門サービスとは、香港の主要産業である金融、保険、資産管理、リスク管理などの専門分野と、国際的な慣例に沿った法律、調停・仲裁、会計の士業など専門サービスが含まれており、これら香港が得意とする分野を洪水橋/厦村で発展させ活用することで、前海、南山をはじめとする中国本土の企業が海外市場へ拡大することを支援します。イメージとしてはアメリカのナスダックのような機能とすることを目標としています。

 

アメリカのナスダック

 

洪水橋/厦村は、少なくとも200万平方メートルの用地をこれらハイエンドの専門サービスを提供する国内外の企業に対し提供する予定で、2026年に着工、2030年に建物が完成予定で、またその年に洪水橋駅の開業も予定されています。

 

 

 

また洪水橋/厦村は、深セン湾港に隣接していおり、国境を越えた貨物輸送が行われていることから、主要物流拠点となる可能性が高いため、物流センターとしても開発予定となっています。

洪水橋/厦村および元朗南には70ヘクタール以上の工業用地が確保されておりその大半は、近代的産業向けの多層ビル(MSB)の用地として開発可能で、当用地の第一陣は、主に近代物流、自動車の販売、サービス、メンテナンス用として、順次入札が行われており、早ければ、2027-28年から約72万平方メートルの総床面積を提供する予定です。

イメ-ジ図

 

これらのMSBは、2024年に試運転が予定されているマイクロエレクトロニクス・センターを含まれており、元朗にある香港科学技術パーク公社のイノパークとともに、製造業者が香港の当エリアに生産拠点を設け、スマート生産を促進し、高付加価値の技術産業や製造業を誘致するのに活用されるようになるのではと考えられています。

 

 

 

流浮山/尖鼻咀/白泥地区

 

デジタル・テクノロジー・ハブが流浮山の主要産業となる予定です。

 

サイバーポートに匹敵する規模の象徴的なI&T施設が設置される予定で、金融技術、スマート・リビング、デジタル・エンターテインメントなどを網羅し、若者のスタートアップを支援する拠点となる。そのため、政府は当地にI&T施設を設立するための計画調査を委託するようサイバーポートへ要請しています。

 

イメ-ジ図

 

そして流浮山はエコツーリズムの観光地として発展させる可能性も検討しているようです。産業計画を含むこの土地利用案は、来年公開される予定です

 

 

 

 

元朗南地区

 

元朗南は、主に住宅地として3万戸以上の住宅を提供する予定となっています。

第1期開発のための工事資金と残りの段階の詳細設計は、2022年6月の立法評議会で承認され、用地造成とインフラ工事は2022年8月に開始、最初の受け入れは2029年に予定されています。さらに、第3期開発については、全体の開発計画に影響を与えない範囲で、隣接する農村部の土地まで開発区域を拡大する可能性を含め、集約化の見直しが行われています。

 

また、上述の通り、近代的産業向けの多層ビル用地(MSB)として開発される可能性があります。

 

 

 

 

住宅の供給と雇用について

この北部都会区発展計画の目的の一つとして、これまで香港が悩まされていた住宅地の不足問題です。香港の不動産高騰については周知の事実だとは思いますが、実は、香港全体の約70%の土地は、農地や森林、草原等が占めており、開発された住宅地は、香港全体の僅か7%程度で、このたった7%に対して香港の人口750 万人がひしめきあって住んでいる状況なのです。

 

そのため、何十年と住宅が不足している状態が続いており、香港の北部地域にて、大規模な住宅開発を行い、この住宅不足問題の解決を目指す、ということになっています。

 

このエリアの既に開発済みの住宅地と今後開発される住宅プロジェクトによる予想入居者は以下の図の通りとなります。

 

 

 

交通インフラ

当エリアは、深圳湾港、前海協力区、南山区に近いため、両地区を頻繁に行き来きできる人材のハブとして、そして大湾区エリアへの現代サービス業にかかる人材やサービスを送り込む拠点となることが期待されているため、様々な交通インフラの整備も計画されています。

 

 

 

鉄道:香港-深圳西部鉄道リンク(洪水橋~前海)

まず国境を越えに関しては、全長18キロの香港-深圳西部鉄道リンク(洪水橋~前海)が提案されており、香港-深圳西部鉄道リンクは、香港側の洪水橋に建設される駅から深圳湾を渡り前海に達する、香港-深圳を結ぶ全長18キロの鉄道リンクでとなります。

 

またこの鉄道は、中国本土の交通網に直接接続することが計画されており、2つの場所を珠江の東岸の交通回廊に沿った戦略的ハブとし、香港と他の大湾区都市の統合的発展を促進するが期待されています。香港政府と深セン市政府は現在、鉄道の計画、実現可能性、有効性、環境への影響、建設と運営に関する取り決めなどを対象として調査を行っており、この調査は2024年半ばに完了する予定です。

 

 

そしてこの洪水橋駅は、洪水橋/厦村の中心部に位置し、既存のMTR屯門ラインにある天水圍駅と兆康駅の間の駅としても建設予定で、2024年に着工、2030年の完成予定とされています。MTRと鉄道のインターセクションの駅として、当エリアの人口増加および産業発展をサポートします。

 

さらに、ランタオ島東側に建設予定の人工島プロジェクト(Kau Yi Chau)で提案された鉄道を北に延伸することで、この香港-深圳西部鉄道リンクへと接続することも提案されています。そうなれば、人口島と深圳の接続が強化され香港の鉄道ネットワークの利便性向上も期待されています。

 

 

 

エコ交通システム(GTS)<洪水橋/厦村~元朗南、白泥~尖鼻咀>

効率的で便利かつ快適な公共交通サービスを提供し、市民の生活の足を向上させるため、新世代の交通インターチェンジ・ハブが北部都会区のさまざまな場所に建設され予定です。

この交通インターチェンジ・ハブは、さまざまな公共交通サービスに接続されるようになり、駐輪場、電動自転車用駐車場、デジタル情報プラットフォームなどに対応した施設を備え、交通の利便性を高めます。当エリアにおいて、この新世代の交通インターチェンジ・ハブは、洪水橋駅近くに設置される予定です。

 

また住宅地や商業地、雇用の拠点、主要なコミュニティ施設を結ぶ、エコ交通システム(GTS)の設置も検討されており、調査結果を踏まえ、GTSを洪水橋/厦村~元朗南、白泥~尖鼻咀に建設し、そして香港-深圳西部鉄道リンクの駅まで延長する可能性も検討しています。実現可能性の検討は2024年に完了する予定となっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参照元】

北部都会区

香港発展局

Northern Metropolises Action Agenda 2023 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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