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香港の税務リスクシリーズー第八回:香港法人の債権貸倒損失の取り扱いについて

 

日ごろからよくいただくお問い合わせの中の一つに、債権・売掛金の貸倒れの処理に関するご相談があげられます。今回は、香港法人において売掛金などの債権に対して貸倒れの引当金及び実際に貸倒れが発生した場合、税務上の損失の取り扱いがどうなるのかについて説明させていただきます。

 

 

貸倒引当金(Allowance for doubtful debts)について

貸倒引当金は、債務者である相手方の財務状況や経営状況に応じて、顧客や貸付先から将来どの程度の債権の回収が出来るのか考慮した結果、回収できない可能性が高い場合に備え、回収が見込めない債権の金額を見積り、当初の債権額をあらかじめ減額した部分がこの引当金となります。

 

借方 貸方
貸倒費用
Bad Debts Expense
貸倒引当金
Allowance for Doubtful Debts

 

 

また、この貸倒引当金には、大きく一般引当金(General allowance)と個別引当金(Specific allowance)と呼ばれるものの二つあります。

 

 

 

一般引当金(General allowance)とは

一般引当金とは、実際に債権の貸倒が発生してはいないものの、これまでの実績を基に、ある程度の貸倒が発生することを見込んだ上で、引当金を計上しておくことを指します。

 

たとえば、過去の実績により、期末時点において債権残高の3%程度は貸倒れが起こっていた場合、同じように当年度の期末残高に対しても同等の貸倒れが生じるであろうという仮定の下、総残高の3%を貸倒引当金として計上しておく引当金となります。

 

 

 

個別引当金(Specific allowance)とは

一方、個別引当金は、特定の債務者など個別の債権に対する貸倒が発生する可能性が高い場合において、具体的に回収が見込めない金額を見積り、貸倒引当金として計上することを指します。

 

たとえば、商品を卸した取引先A社に対する売掛金において、支払い期限が過ぎても決済されず、支払いの催促をしても決済されなかったため、当債務者であるA社の財務状況や経営状況を調査したところ、かなり悪化していることが判明したとします。そのため、このままでは売掛金が全額回収できない見込みが高い場合は、具体的に回収できないと見込まれる金額を見積り、貸倒引当金として計上することとなります。

 

一般引当金(General allowance) 過去に発生した貸倒れの実績を基に貸倒の発生を見込んで、債権総額に対して一定の割合をを認識した引当金。
個別引当金(Specific allowance) 貸倒が発生する可能性の高い個別の債権に対して認識された引当金。

 

 

 

 

税務上の取り扱いについて

税務局は、一般引当金として計上された貸倒損失について、実際に発生するまでは原則損金算入費用として認めません。一方で、個別引当として計上されている貸倒損失は、計上時点ですでに回収が見込めないということが客観的に判断され、信頼できる見積りである場合においてのみ損金としての取り扱いが認められる可能性があります。

 

実際に貸倒れとなったため、税務上損金として取り扱った場合においても、以下の状況に当てはまらない場合は、税務局より損金として認められないなど税務上の一定のリスクを伴う場合があります。

 

 

  • 債務者自身が破産手続開始の申立てをしている場合
  • 債務者がすでに閉鎖、法人登記が抹消している場合
  • 債務者は存在するものの、当債権回収において、一定の期間を費やしての回収努力を試みている場合
  • 貸倒となった債権が当初債権を認識した時点で税務上課税対象として申告されている場合

 

 

税務局は貸倒損失の損金計上において、これらに該当するかどうかなど、損金としての取り扱いが適当であるを判断するため、質問状を発行する場合もあります。(税務調査)そのため、各状況における証拠書類を準備しておくことが推奨されます。

 

 

 

債務者自身が破産手続開始の申立てをしている場合

債務者が破産手続中であることが確認できる公的な資料がある場合、当債務者からの債権回収が難しいという客観的な証拠として取り扱われるため、貸倒損失を損金として認められやすくなるといえます。

 

 

 

債務者(法人の場合)がすでに閉鎖、法人登記が抹消している場合

この場合も、当該債務者の法人登記が閉鎖、まはた登記が抹消していることを確認できる公的な資料があれば、物的に回収ができないということで、同じく損金として認められ安いと考えられます。

 

 

 

債務者が現存しているものの、当債権回収において、一定の期間を費やしての回収努力を試みている場合

貸倒として判断する前に債務者に対して回収のための努力がなされていることが前提となるため、税務局からの指摘に備え、メールによる催促や、対面により回収交渉が行われたことを示す証拠、または弁護士等による督促状の発行など、回収努力が証明できる書類や資料を事前に用意、保管されておくことをお勧めいたします。

 

 

 

貸倒となった債権が当初債権を認識した時点で税務上課税対象として申告されている

こちらは証拠書類の準備という話しではなく、前提条件として貸倒損失を税務上の損金として認めてもらう上で、貸倒引当金の対象となる債権が、認識当初において税務上の課税収益として認識されていたことが必要となります。

 

つまりは、当債権を認識する際に一緒に計上された売上や収益が課税対象となっているが故に、貸倒れとなった際の損失が、損金として認められるという考えに基づいています。

 

 

 

 

以上のように、税務局に対しては貸倒損失がやむを得ず発生したことを証明できる客観的な書類や資料を以て説明付けを行う必要がございます。そのために、帳簿上の債権等において貸倒れとなる疑いがある場合は、日ごろから関連の書類や記録を常に維持、保管されておかれることをお勧めいたします。

 

具体的な処理方法や税務アドバイス、証拠書類の作成などについて、ご相談があればお気軽にお問い合わせください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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