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中国2024年第一四半期のGDP成長率は予想を上回ったにもかかわらず、アナリストがまだ悲観的である理由

  • 公開日 2024.05.3 | 中国

 

この記事のハイライト:

・アナリストによる中国の不安材料は、弱い消費マインド、続く不動産セクターの不況、貿易の不確実性。

・第1四半期のGDPデータが好調ではあったが、政府関係者たちは需要と政策支援の導入が必要であることを示唆している。

 

 

好調な滑り出しとなった第1四半期の国内総生産(GDP)

中国の第1四半期の各種経済データは、不動産市場が低迷を続ける中であったにもかかわらず、2023年度に急成長を遂げた電気自動車のような新たな成長市場へ海外からの注目度が高まり、第1四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.3%増、前期比1.6%増と、予想を上回る数字が発表され、ひとまず好スタートを切った。

 

項目 2024年第一四半期
実質GDP成長率 5.3%
工業生産増加伸び率 6.1%
民間投資 0.5%
インフラ投資 6.5%
不動産開発投資 – 9.5%
社会消費品小売総額伸び率 4.7%
インターネット上実物商品小売り額伸び率 11.6%
消費者物価上昇率 0
都市部調査失業率 5.2%
貿易総額伸び率 1.5%

 

 

数字を細かく見ると、全国の一定規模以上の工業各社は生産額合計が前年同期比6.1%増、一般消費財の小売り総額は同4.7%増、そして過年度から続くインターネットによるECでの小売り伸び率が大きく上昇している。また全国の固定資産投資額(農家を除く)は、不動産開発投資が引き続き不調であるものの、製造業やインフラ関連が大きく伸びた。

 

ただ、このような好調な滑り出しにもかかわらず、経済アナリストたちはこぞって中国経済の回復に対して懸念を指摘している。

 

 

 

続く中国経済の下振れリスク

「今後数四半期は成長が緩やかに減速する可能性が高いため、センチメントの完全な回復を期待するのは時期尚早だ。中国経済の下振れリスクは、不動産投資による足かせがどの程度で解消されるか、そして家計が支出を増やし貯蓄を減らすかどうかだ。」

 

 

不動産不況

政府の発表によると、国内の不動産セクターは引き続き下押し圧力に直面しており、第1四半期の投資額は前年同期比9.5%減と、1~2月期の9%減からさらに抑制された。そのため、ANZ銀行は、予想を上回る四半期の成長率を受けて中国の成長予測を上方修正したものの、不動産危機が通年のGDP成長率の足を0.3%ポイント引っ張り、不動産投資は12%減少すると予測している。

 

国家統計局(NBS)によると、第1四半期の新規建設プロジェクトの開始は前年同期比で27.8%減少し、販売床面積は前年同期比で19.4%減少した。

 

 

 

雇用と収入の不透明感により冷え込む消費

国家統計局(NBS)の発表によると、消費の主要な指標である小売売上高の前年比伸び率は、1月と2月の合計値の5.5%増から、3月は3.1%増に減速した。また消費者物価指数が0%成長であった第一四半期の数字が、内需の逆風を反映している。

 

中国の消費マインドは依然として低調で、今後数ヶ月の間、内需を回復させ需要を刺激するために、より的を絞った政策措置がまだ必要だという。雇用と収入の不透明感が依然として強い中国の家計に対して、どのように財布の紐を緩めるかを思案していた政府は、家電製品や自動車に重点を置いた下取り政策を導入した。要するに、これら製品の買い替えを支援する政策で、’買い替え’による景気回復の原動力となることに大きな期待を寄せている。

 

第1四半期のデータでは、通年のGDP成長率目標である「5%前後」を達成する方向であることが示されたが、アナリストは、「成長を持続させるためには、中国は消費の低迷を含む構造的な問題への対処、そしてより強力な不動産支援の導入が必要である」と述べている。

 

 

 

不動産不況と内需の低迷を助ける輸出

堅調な輸出は、GDP成長率の目標達成に貢献しており、中国が不動産不況やデフレから脱却する時間を稼いでいる。しかし、政府が輸出に影響を与える新たな貿易摩擦の問題に直面すれば、必然的に内需の強化、そして不動産支援の政策を早急に実施する必要がある。

 

中国経済は輸出の増加と内需の低迷という不均衡において回復している状況で、このモデルは貿易摩擦や過剰生産能力の問題に直面する可能性がある。実際、EUは10月、中国製電気自動車に対する反補助金調査を開始し、米国もまた、生産能力過剰の脅威において中国を批判しているため、米中間での貿易摩擦は長期化する見込みである。

 

この中国とEUや米国との間で蓄積してきた貿易不均衡により、輸出に頼るといった経済成長にいつストップがかかるか不安な状況となっている。

 

 

 

 

今後の成長率維持には緩和政策が必要

どのアナリストも口を揃えて発しているのは、中国が成長の回復を押し上げるためには、さらなる支援を提供することであるとしている。

 

ゴールドマン・サックスのエコノミストはメモの中で、不動産不況による構造的な課題、依然として脆弱な信頼感、地方政府金融機関のデレバレッジなどを挙げ、「特に需要サイド(財政、住宅、消費など)については、引き続き政策緩和が必要だと考えている」と述べている。

 

スタンダード・チャータード銀行のエコノミストは、政府は今年下半期の経済成長を支えるため、特別国債や地方債を適時に発行し、財政手段を活用すべきだと述べた。

 

 

 

政府は今年、1兆元相当の「超長期特別国債」を発行する意向で、これらは景気浮揚策、技術革新、都市と農村の一体開発などの資金源になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考URL】

China’s GDP growth beat expectations – so why are analysts and business groups still downbeat?

国家統計局

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

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