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広東省高等法院が発表した、労働争議にまつわる典型例10件【前編】

 

 

 5月1日は中国を含む多くの国では労働者の日として知られていますが、その日の前夜、広東省高等人民法院が、「労働争議にまつわる典型的な10件の判例」を公表しました。

 

今回公表された、10件の判例には、

 - 労働報酬、

 - 年次有給休暇、

 - 経済補償金、

 - 新しい産業での雇用をめぐる争議、及び

 - コロナ期間中の労働者の正当な権利と利益の保護

 

など、多岐に渡る事例が含まれていたため、中国に進出されている日系企業の方々にとって、この「労働争議」について参考になるのではと思い、今回当社にて和訳したこの判例集をご紹介させていただきます。 

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判例一: 郭被告の労働報酬支払拒否罪 

労働報酬の支払拒否は、法に基づき刑事責任が追及されるという判例

 【事件の概要】

 2019年2月、郭被告はある会社の工事の一部を下請けし、多数の出稼ぎ労働者を雇って施工させた。工事期間中、郭被告に代わって会社が一部の出稼ぎ労働者に賃金を支払い、さらに郭被告に工事代金として32万元を支払われた。

 

 同年3月、郭被告は立て続けに67人の出稼ぎ労働者に対して賃金を支払わず、その未払金額は約41万元に及んだ。

 

 同年5月16日、人力資源・社会保障局は、出稼ぎ労働者からの集団訴訟を受理し、郭被告に対し「労働保障監察の期限付き賃金支払書」を発行、そして郭被告に10日以内に未払い賃金を支払うよう命じた。しかし郭被告は依然として指定期間内に支払わなかった。

 

 同年8月23日、検察当局は郭氏を起訴。その後当事件の審理期間中、郭被告の家族により、未払い賃金の約41万元が、人力資源・社会保障局の口座へ支払われた。

 

 

【判決結果】

湛江市麻章区人民法院は、

 

「郭被告は多額の労働報酬の支払いを拒否したため労働報酬支払拒否罪が成立したが、その後被告は、捜査開始後、事実を供述し法廷で罪を認め、処罰を受け入れる意思があり、さらに未払賃金を支払ったことにより、一部労働者の理解が得られたため、処罰を軽減することができる」

 

と判示し、法律に基づき、懲役6ヶ月、執行猶予1年、罰金1万元の判決を下した。

 

 

【典型的とされる要素】

建設分野において、この出稼ぎ労働者に対する賃金未払いが多発するため、重要な問題となっている。本件において人民法院は、労働報酬の支払いを拒否した被告の刑事責任の追及のみに留まらず、未払い賃金を支払わせるように促し、さらに労働者との和解を得られるよう、平和的解決を促進させた。

 

 

 

判例二 :馬氏 vs 某アルミ会社の労働争議事件 

雇用契約書ではなく請負契約書等の代替手段による雇用責任の回避は禁止、認められないという判例

 【事件概要】

2016年4月、馬氏は某アルミ会社に入社し、ボイラー作業員として働いていた。その際、雇用契約は締結せず、馬氏に対する社会保険も加入されなかった。

 

2018年4月、アルミ会社と馬氏を含むアルミインゴットの生産に従事する各従業員は、それぞれ「請負契約」を締結し、当事者間に労働関係は存在しないものとして取り決められた。

 

2018年8月、馬氏は仕事中に転倒、骨折により入院した。退院後、労災認定を申請するが労働関係の存在が労災認定の前提であるために認定してもらえず、アルミ会社との労働関係の存在を認めてもらうために訴訟を起こした。

 

 

【判決結果】

広東省高級人民法院は、再審の際、

 

「雇用主が手配した有給労働に従事している労働者は、アルミニウムインゴットの生産ラインの労働生産に従事し、雇用主による労働管理を受けていたため、両者の間に労働関係は成立している。として認められるべきであり、労働関係が存在しないと当事者が取り決めたこと(請負契約)を理由に、両者の実際の労働関係を否定することはできない」

 

と判示した。調停の結果、アルミ会社から馬氏に5万元の補償金を支払うことで双方は合意した。

 

 

【典型的とされる要素】

労働者と請負契約を締結し、雇用主が雇用責任を回避しようとする事例がよく見受けられます。しかしながら、実際に請負契約を締結していたとしても、実際の状況が「労働関係の特徴」を満たす場合、人民人民法院は法律に基づいて労働関係を認めることになります。そして雇用主と労働者の間で和解を促すため、労働者の合法的な権益を保護することに努めます。

 

 

 

判例三: 沈氏vs.某設備製造会社の労働争議案件 

年次有給休暇の日数は、累積勤務年数によって計算しなければならないという事例

 【事件概要】

沈氏は1996年9月に就職して以来、いくつかの企業で勤務していた。

 

2006年4月、前の会社を退職後、沈氏はある設備会社に入社した。

 

2019年7月、沈氏は入社後、年次有給休暇の権利を享受したことがないという理由で、設備会社と労働契約を解除し、労働仲裁の後さらに訴訟を起こし、設備会社に未消化の年次有給休暇の買取代金などを支払うように訴えた。

 

 

【判決結果】

広東省高級人民法院は再審において、

 

「人力資源・社会保障部門の“企業従業員の年次有給休暇実施弁法 第4条”では、年次有給休暇の日数は従業員の累積勤務年数に基づいて決定されると規定されており、従業員が同一または異なる雇用主のもとで働いた期間、および法律、行政法規、国務院の定めにより働いたとみなされる期間は、累積勤務年数として認められるものとする。」

 

と判示した。再審の判決は、沈氏が設備会社に入社する前の勤務年数を積算し、権利のある年次有給休暇の日数を確定し、それに応じて未消化の年次休暇買取給与を認定した。

 

 

【典型的とされる要素】

有給年次休暇は、労働者の重要な権利である。労働者が就職してから複数の雇用主のもとで勤務していた場合、取得できる年次休暇の日数は、累積勤務年数に基づいて確定されることになる。この判例は、雇用主が積極的に、法律に基づき労働者の年次休暇の権利を保護するよう促進する上で大きな意義がある。

 

 

 

判例四: 某電子会社vs.符氏の労働契約紛争 

雇用主が退職を強要して労働契約を違法解除してはならないという事例

 【事件概要】

某電子会社が、符氏の役職手当を査定給に変更し、一定の基準を満たした場合にのみ役職手当が全額支給され、満たさない場合は全額が支給されないといった、実質的な賃金の減額処置を行っていた。

 

符氏は、この役職手当の減額に同意しなかったため、会社と従業員の連絡手段として作られたSNSのグループチャットから削除されたりするなど、実質的に退職を強要されていたも同然の状況に追い込まれた。

 

しかし符氏は、その後も引き続き顧客対応をしていたため、会社から口頭で符氏に解雇が通知された。その後、符氏は労働仲裁の裁定を不服として、さらに人民法院に訴訟を起こし、電子会社へ労働契約の違法解除に対する補償金の支払いを求めた。

 

 

【判決結果】

深セン市中級人民法院は、以下のような判決を下した。

 

「電子会社は、両者の間で合意された査定ノルマと符氏の業績、およびノルマ未達成時の処理に関する従業員規則などを証明できる証拠を提出していない。一方、符氏は、役職手当が当初の2,000元から0元に減額されたことを示す給与明細書を提出した。

よって、電子会社は符氏の賃金の減額の合理性と合法性および、給料調整について両者が合意したことを証明すことが出来ないため、電子会社は、符氏との労働関係を解除する場合、符氏に労働契約の違法解除に対する賠償金を支払うべきである。」

 

 

【典型的とされる要素】

雇用主により強制的に労働契約を解除するケースの一例。労働に対する報酬を得ることは、平等性、自発性、合意の原則に則り法律や行政法規に規定された労働者の重要な権利である。

 

しかし、雇用主が労働者の賃金待遇の調整といった、実質的な雇用契約の合意内容の変更といった、法律の違反行為により労働契約を解除した場合、労働者へ労働契約の違法解除に対する補償金を支払わなければならない。

 

 

判例五: 廖氏vs.某サービス会社の労働契約紛争 

雇用主が派遣協議期間満了を理由に、労働契約を解除してしまうケース

 【事件概要】

廖氏は、某サービス会社と労働契約を結び、そのサービス会社からある通信会社に派遣された。労働契約の履行期間において、サービス会社は、通信会社との労務派遣契約が期限切れで更新されないことを理由に、廖氏に対して、

 

①新たな労務派遣先が廖氏と新規に“労働契約”を締結するか、

②双方合意の上で労働契約を解除するか

 

という2つの選択肢を提案した。廖氏はこれらの選択肢のいずれも受け入れず、サービス会社に労働契約を解除された後、賠償金を求めてサービス会社を訴えた。

 

 

【判決結果】

深セン市中級人民法院は、以下のような判決を下した。

 

「当サービス会社が、通信会社との「労務派遣契約」の契約満了後に廖氏に提案した2つの選択肢は、実質的にはいずれも廖氏との労働契約を解除するためのものであり、労働契約の変更を提案して廖氏と協議することを行っていなかった。従い、当サービス会社が廖氏との労働契約を解除したことは、労働契約法第40条の規定に適合しておらず、違法解除とみなされる。」

 

判決として、当サービス会社は廖氏に対して労働契約の違法解除に対する賠償金を支払うように命じられた。

 

 

【典型的とされる要素】

この案件のように、“労務派遣契約”に起因する労働争議も典型的な例である。

 

雇用主による労働契約の一方的な解除は、法律の規定に従わなければならないが、雇用主と派遣先の間で締結された労務派遣契約が満了したことにより、労働契約の更新が行われないことは、法律に基づいた雇用主による労働契約の解除に該当しない。

 

 このように法律に該当せず、また両者が労働契約の変更について合意していないにも関わらず、雇用主により一方的に労働契約を解除することは違法解除となり、労働者に労働契約の違法解除に対する補償金を支払わなければならない。

 

 

 

※注:

当記事は広東省高等人民法院公式アカウントから転載、和訳したものです。中国語原文は以下のリンク先となります。

広東省高等法院が労働争議の典型的な10事例を発表

 

 

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