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2022/23年度香港財政予算案及び今後の見通し

2022年2月23日、香港政府より2022/2023年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の財政予算案が発表されました。同案内容の概要速報及び今後の見通し・見解については、以下の通りとなります。

 

概況

2022年2月23日、香港特別行政区政府の立法議会にて、財務長官の陳茂波(ポール・チャン)にとって6度目となる2022/2023年度の香港財政予算案が発表された。

 

  新型コロナウィルス変異株・オミクロン株の蔓延は、世界中に度重なるロックダウン規制の実施や世界経済の成長にさらなる重石を与えている。一方で、香港経済は2021年第4四半期に堅調な成長を遂げ、2021年度のGDP実質成長率は全体で6.4%に達する見込みであるものの、パンデミック前の2018年度の実質GDPの水準を依然として2%程度下回るものに収まっている。

 

  2021年においては、感染症対策とワクチン接種率の増加により新型コロナウイルス感染の波の影響が抑えられたことから、失業率は2020年度の7%から2021年第4四半期の3.9%にまで低下し、改善を見せているものの、労働市場の状況がさらにどの程度改善されるかは、景気回復のペースに左右されるといえる。特に、消費・観光関連産業における失業率はここ数ヶ月間において顕著な低下を示しており、同様に芸術・エンターテイメント・レジャー産業、建設、郵便・宅配業など他の多くの産業においても失業率の低下が確認されている。 さらに、消費者物価指数の上昇率が2020年度の1.3%から2021年1~11月においては平均0.6%にまで低下している。しかしながら、直近のオミクロン変異が社会にもたらしている状況を考慮すると、香港のみならず世界経済の短期的な見通しは依然不透明である。

 

2021/22年の財政黒字は189億香港ドルとなり、これは当初予想されていた1,016億香港ドルの財政赤字を1205億香港ドル上回った。COVID-19から香港の経済を復興させ、都市の長期的な競争力における復元力を構築するために、政府は経済を安定させ、市民の将来の負担を軽減するための財政措置を採用する。そのため、当予算は以下の救済措置が提案した。

 

注目すべきポイント

 

 

財政・税務優遇政策案

1

2021/2022年度の法人税、個人所得税ならびにパーソナルアセスメントから10,000香港ドルを上限として100%減額

2

2022/2023年度の各四半期の居住用不動産に対する固定資産税(レート)を第1、2四半期において1,500香港ドルずつ、第3、4四半期において1,000香港ドルずつを上限として免除

3

2022/2023 年度の各四半期の非居住用不動産に対するレートを、第1、2四半期において5,000香港ドルずつ、第3、4四半期において2,000香港ドルずつを上限として免除

4

2022/2023年度の商業登記証費用を免除

5

香港永久居民ならびに18 歳以上の新規入国者に対して10,000香港ドルの電子クーポンを分割で発行

6

100%の特別保証となる個人向けローンを上限100,000香港ドル、返済期間最長10年へ延長

7

居住用不動産を保有していない個人を対象に、2022/23年度の個人所得税から居住用賃貸費用を100,000香港ドルを上限に控除

8

特定業種のテナントから家賃の支払いに遅延が生じた際に、家主が賃貸契約を解除する、もしくはサービスの提供を停止することを禁止する「賃貸執行モラトリアム」を3か月間実行、状況に応じて更に3か月間延長

 

 

長期的発展のための政策

1

感染対策の強化に総額675憶香港ドルを充当し、その内220億香港ドルを検査手続きの強化および病院管理局への追加支援に充当

2

テクノロジー企業やテクノロジー分野のプロジェクトへの投資、ならびにグレーターベイエリアにおける投資機会へより注力するため、未来基金 (フューチャーファンド)の香港成長ポートフォリオへ100億香港ドルを割当

3

テクノロジー企業の資金調達ニーズに合わせ、上場要件の見直しを検討

 

香港企業の裁判所外合併の法人税処理の導入

 

2021年6月11日より「税務(改正)(雑則)条例2021」(以下、「改正」)が制定され、会社条例に基づく適格な合併(※すなわち、合併する一方が他方の完全子会社であるか、両者が共に別の同一法人の完全子会社であること)における香港企業の裁判所外合併の特別税務処理が成文化された。

 

 

香港内国歳入条例(IRO)のPart 6CおよびSchedule 17Jの概要

 

IRO の Part 6CおよびSchedule 17Jの改正 に規定された税制上の特例措置は、一定の条件を満たすことを前提に、資産の売却を伴わない適格合併において、合併会社(=存続会社)が被合併会社(=消滅会社)の後継者であり、同一であるかのように税務処理することを原則とするものである。

 

事業承継、固定資産、売買株式、商業・工業用建物・構築物、機械・設備に関する引当金、認定退職金制度、合併前の損失の活用などを対象とした税制上の特別措置を適用するには、存続会社は合併の日から1ヶ月以内に香港税務局(以下、IRD)に書面で通知する必要がある。この場合、消滅会社は合併の前日に事業を停止したものとして扱われ、存続会社はIROに基づき、消滅会社のすべての義務および負債を引き受け、すべての権利、権限、特権を享受する権利を得ることになる。 従って、存続会社は、消滅会社の消滅年度の税務申告を行う義務がある。

 

特別税務処理の適用を検討する際には、改正に盛り込まれた租税回避防止条件、特に存続会社及び消滅会社の合併前の税務上の損失の相殺に十分な注意を払う必要がある。 

 

 

合併前の税務上損失に対する税務処理について

 

税負担を軽減するための赤字会社の買収やグループ会社間の損失移転を防止するため、存続会社及び消滅会社の合併前未使用税務上損失を、特別税務処理により存続会社の課税所得と相殺するための制限と条件が設けられている。まず、裁判所外合併の主目的が租税回避や租税優遇措置の取得を目的としたものではないことを税務局へ証明する必要がある。 また、存続会社および消滅会社の合併前税務上損失を使用するための条件テストは以下の通りである;

 

 

消滅会社の合併前税務上損失の相殺

 

  • 同一事業テスト:消滅会社から繰り越された税務上の損失は、消滅会社から引き継いだ同一の事業から生じた存続会社の利益と相殺するためのみに使用することができる。
  • 適格関係テスト:消滅会社と存続会社が適格な関係(つまり、一方が他方の完全子会社である、または両者が別の同一法人の完全子会社である)となった後に発生した損失である。
  • 商業的理由テスト:合併を実行する正当な商業的理由がある。

 

 

存続会社の合併前税務上損失の相殺

 

  • 取引継続性テスト:対象となる税務上の損失が合併日までに発生しており、存続会社は取引もしくは事業を継続している。
  • 資金源テスト: 存続会社は合併直前時点において、消滅会社の取引もしくは事業を購入するための十分な資金源(グループ内ローンを除く)を有している。
  • 適格関係テストおよび商業的理由テスト:上記消滅会社のテストと同様

 

上記のテストが全て満たされない限り、存続会社の合併前の税務上損失は、元の事業から得られる利益と相殺するためにのみ使用可能である。

 

印紙税

 

政府側の見解では、存続会社による消滅会社の資産承継は、法律の運用によることとしている。従って、裁判所外合併手続きにおいて、香港の株式や不動産の承継に係るいかなる契約文書も締結されていないことから、印紙税発生の対象とはならない。 

 

 

結論

 

香港企業の裁判所外合併の申請による税効果は大きなものになる可能性があり、また特別税務処理は一度選択をしてしまうと改変できないため、実行前に潜在的な税効果の分析と本改正にて制定された条件を満たしているかを注意深く確認することが推奨される。 

 

本改訂可決前の法案委員会の発表によると、税務局は本改訂にて制定された条件が満たされているかを検討するにあたり、状況、合併の税務上以外の目的や想定される結果、税務上以外の目的を達成するためのその他の手段の有無、合併前後の事業内容など、関連する全ての事実や状況を考慮するとされている。そのため、検討には主観的な判断が含まれ、不確定要素を生み出す可能性があり、今後、IRDにより具体例を記載した実務解釈方針が発表されることが予想される。

 

 

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