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香港、「一国二制度」の利点を生かし 国のニーズに応える【大湾区情報レター Vol.40】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。


  

 小さな漁港から今日の国際的な金融、貿易、海運センターへと、香港経済は幾度となく変貌を遂げてきましたが、返還前、返還後いずれにおいても、香港は中国本土の発展と緊密にかかわってきました。 改革開放政策の一層の深化、大湾区の発展という国家戦略、国家第14次5カ年計画における香港の「8つのセンター」としての位置付けの制定、といった要素がいずれも香港に無限のチャンスをもたらしています。金融、海運、貿易、航空、イノベーション、法律サービス、知的財産権取引、文化芸術交流などの分野で、中央政府の政策と積極的に連携し、「一国二制度」の利点を生かし、中国全体の発展への統合において新たなブレークスルーを達成しています。

 

改革開放の推進者と受益者

 

 1970年代末、改革開放の春の風が広東省の大地に吹き込まれました。霍英東氏(Fok Ying Tung)を始めとする香港の実業家が第一弾として、中国本土への投資を敢行しました。

 

 広州のホワイトスワンホテル(白天鵞賓館)や中山温泉のオープンに始まり、沙湾大橋、洛溪大橋、三善大橋など100近い建設プロジェクトの推進まで、3代にわたる霍一族は広東省の改革開放の歴史的プロセスにおいて活躍をしてきました。

 

 香港は長きにおいて、中国本土における最大の海外直接投資源となってきました。 データによると、2020年末までに香港からの実行ベースの外貨導入額の累計は1兆3,013億米ドルに達し、全体の56%を占めています。 同時に、香港は中国本土からの対外直接投資においてもトップとなっています。 2020年までの中国本土から香港への直接投資額は1兆4,385億米ドルに達し、対外直接投資総額の55.7%を占めました。

 

 香港のポール・チャン(陳茂波)財務長官も、香港の転換成功は中国本土の恩恵によるものであると述べました。中国本土の改革開放の追い風に乗って、香港は製造業の中心地から、国際金融、貿易、海運などのサービス業を中心とする国際都市に変貌を遂げることになりました。

 

 1993年7月15日、青島(チンタオ)ビールは中国本土企業として初めて香港に上場し、本土資本市場と香港資本市場の歴史に新たな1ページを刻みました。2022年4月現在、香港に上場している中国本土系企業は1,370社で、香港証券取引所の上場企業総数の53.3%を占め、時価総額は37兆6,000億香港ドル、香港株式の時価総額全体の77.7%を占めています。

 

 中国本土企業の香港への上場は、香港の証券市場規模を大幅に拡大させました。一連の経済データを見てみると、1997年当時、香港のGDPに占める金融業の割合は11%未満だったが、現在は23%を超えており、過去25年間で香港株は着実に拡大し、時価総額は3兆香港ドル超から40兆香港ドル超と、約12倍となりました。上場企業数は600社強から3倍の2,500社強、1日の平均取引額は1997年の150億香港ドルから1,667億香港ドルに増加しています。

 

 同時に、香港は、中国本土企業を株式市場に取り込む過程において、多くの国際資金、金融機関、専門家人材を集め、香港の金融産業の発展を促進させ、国際金融センターとしての香港の地位を固め、向上させることができました。

 

積極的な大湾区との融合 地域連携を模索

 

  2017年からの5年間で以下3つのクロスボーダーインフラが開通しました。

 

① 香港の西九龍駅から深圳の福田駅まで10数分でいける広州・深圳・香港高速鉄道の香港区間

② 香港・珠海・マカオ間の陸路交通の利便性を高めた香港珠海マカオ大橋

③ 香港・深圳間の通関手続きを改善させた蓮塘/香園圍口岸イミグレーション

 

 キャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官(当時)は、この3大インフラによって、広東省、香港、マカオ間の人、モノ、資金の流れが促進され、さらに1時間の生活圏を作り出し、香港人が大湾区の中国本土側各都市で学習・仕事をすることも容易になった、と述べています。

 

  大湾区のインフラ接続とルール統合が進むにつれ、資本、技術、人材、情報などの重要な要素の流通が加速しています。昨年9月には、「跨境理財通」(クロスボーダー・ウェルスマネジメント・コネクト)が開始されました。クロスボーダー・ウェルスマネジメント・コネクトの円滑な実施と着実な発展は、香港のウェルスマネジメント事業、金融テクノロジー、オフショア人民元ビジネスの長期的に持続可能な発展を促進することになるでしょう。

 

 製造業、貿易、金融といった伝統的な分野以外においても、香港と大湾区の各都市の間には、協力と発展の余地が多くあります。

 

 今年9月には、広州市南沙において香港科技大学(広州)が正式に開校します。政協委員会副主席で前香港特別行政区行政長官の梁振英(C.Y.リョン)氏は、香港科技大学と広州南沙の組み合わせを「2つの剣の結合」による相乗効果があり、香港と大湾区の都市間の協力分野におけるイノベーションである、と表現しています。今後、香港と広東省の間には、科学研究、教育、文化産業など、さまざまな分野で協力の余地があると梁氏は考えています。

 

大湾区の開発、香港への外国投資導入を促進

 

 香港が中国に返還されてからの25年間において、中国中央政府は香港特区政府が法に従って統治を行い、経済の発展、人々の生活の向上、国家の需要との結合を進め、香港の強みを生かし、香港の繁栄と安定を維持することに全面的にサポートしてきました。


 第14次5カ年計画では、香港の国際金融・海運・貿易センターとしての地位向上、香港のグローバルなオフショア人民元ビジネスハブ、国際資産管理センター、リスク管理センターとしての強化、アジア太平洋地域の国際法律・紛争解決サービスセンターの構築、香港のサービス産業のハイエンド・高付加価値発展への支援を提案しています。さらに、香港の国際航空ハブとしての地位向上への支援、香港のイノベーションとテクノロジーの国際センターおよび知的財産権取引の地域センター構築への支援、香港の中国と海外の文化芸術交流センターの整備への支援など、新たな位置付けが割り当てられました。

 

 「大湾区への進出チャンスは、香港をアピールする時の不可欠な要素です。」香港経済貿易代表部投資推進室(インベスト香港)副所長のジミー・チェン(蔣學禮)氏は、香港にオフィスを構える中国本土企業と海外企業の総数は、2021年末までに過去最高の9,049社に達し、そのうち1,457社が香港に地域本部を設置していると述べました。

 

 「昨年は、333社の香港での事業立ち上げや拡大を支援しました。そのうち186社は、大湾区への進出チャンスを見込んで香港への投資を選択し、大湾区の開発が香港への外資導入に果たす役割がますます重要になっていることを反映しています。」とチェン氏は述べました。昨年、インベスト香港は大湾区ビジネスデベロップメントチームを新設し、大湾区の各都市との連携を強化することで、大湾区ならではのビジネスの優位性や機会をグローバルにアピールしています。

 

 

【参考資料】

 

・香港、「一国二制度」の利点を生かし 国のニーズに応える

 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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