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香港の金融ビジネス、中国の対外開放の新たな局面に大きく寄与【大湾区情報レター Vol.41】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。


  

 

 長い年月に渡り、中国大陸をバックにして、香港は東洋と西洋を渡す架け橋となってきました。多くの優秀な人材、整ったインフラ、国際基準に沿った規制機関、自由な資金の流れ、オープンで透明性の高い国際化マーケットにより、香港金融は中国の発展とともに成長してきました。香港は、最新の世界金融センター指数(GFCI)で再び第3位にランクされました。

 

 中国の対外開放をさらに拡大し、国内外の双循環の新しい発展パターンを構築する過程において、香港は引き続き中国と海外との「窓口」の役割を果たし、人民元国際化およびグリーン金融方面において独自の役割を担っていくでしょう。

 

困難を乗り越えてきた「たくましさ」

 

 中国に返還されて25年、香港は国際金融危機の浮き沈みを経験しましたが、国際金融センターとしての地位は揺るがず、市場の「たくましさ」を強く発揮しています。

 

 香港の金融セクターが活況であることは以下のデータが示しています。返還から25年の香港の銀行セクターの資産額は8.7兆香港ドルから27兆香港ドル、銀行預金は1.6兆香港ドルから7.5兆香港ドルと3.7倍以上、外貨準備資産は800億米ドル超から4,600億米ドル超、株式市場の時価総額は4兆6千億香港ドルから約38兆香港ドルへ上昇しました。

 

 国際的な金融センターである香港は、中国本土の投資家だけでなく、海外の投資家にも注目しています。香港は中国本土の企業にとって好ましい国際金融センターであると同時に、国際資産管理センター、リスク管理センター、世界最大のオフショア人民元市場でもあり、香港の人民元預金は2022年5月末には8,504億人民元に達しています。

 

 また、香港はニューエコノミー企業にとって主要な融資拠点となっています。香港市場のIPO資金調達額全体に占めるニューエコノミー企業からの調達割合は、2019年の49%から2020年には64%、2021年には87%と、年々上昇しています。香港はすでにアジア最大、世界第2位のバイオテクノロジー企業の調節センターとなっています。2021年には34社のバイオテクノロジー・ヘルスケア企業が香港に上場し、上場件数で世界第1位、調達総額で世界第2位となります。

 

中国本土との金融市場の相互接続強化

 

 2017年には、中国本土と香港の債券市場を相互接続する「ボンドコネクト(債券通)」が正式稼働し、中国の金融市場の対外開放のマイルストーンとなりました。

 

 香港の返還25周年を機に、香港・中国本土金利スワップ市場相互接続(スワップコネクト)が正式にスタートしました。これは、香港と中国本土の金融市場インフラの接続を通じて、国内外投資家が両地の金融デリバティブ市場に参加できる仕組みで、投資家の金利リスク管理ニーズを満たすことにつながります。

 

 香港は、第14次5ヵ年計画において、中国本土との金融市場の相互接続をさらに拡大し、国際資産管理センターおよびリスク管理センターとしての機能を強化することが提案されています。近年、香港と中国本土の金融市場の相互接続メカニズムが徐々に成熟し、国内外の投資家に利便性の高い環境を提供しています。香港証券取引所の情報によると、2021年の上海-香港ストック・コネクト、深圳-香港ストック・コネクトにおける1日の平均取引金額はそれぞれ200億7,900万香港ドル、216億3,000万香港ドルであり、香港の資本市場を強力にサポートする存在となっています。

 

 「大湾区発展計画概要」では、香港、マカオ、広州、深圳の4つの中心都市を地域開発の中核的なエンジンとして活用することが提案されています。大湾区における様々な要素の円滑な流れと最適な配分を促進し、広東省・香港・マカオ間の市場接続レベルをさらに高めると言及しています。

 

 人民元の国際化の推進においては、香港の金融市場が重要な使命を負っています。この点において、香港は最大のオフショア人民元資金プールおよび最大のオフショア人民元為替市場を持つグローバルなオフショア人民元センターとして、人民元の国際的な利用促進にさらに貢献できる、と香港金融管理局(HKMA)総裁ユー・ワイマン(余偉文)氏は考えています。HKMAは、人民元金融インフラがオフショア市場の長期的な発展を支える十分な「キャパシティ」を確保するため、CMUシステム(債券中央決済システム)をアップグレードし、アジアをリードする中央証券信託プラットフォームとして発展させるよう努力します。

 

グリーン金融、中国本土のグリーン経済への移行を支援


 グリーン金融とは、環境保護、省エネルギー、クリーンエネルギー、グリーン交通、グリーン建築の分野におけるプロジェクト投融資、プロジェクト運営、リスク管理などの金融サービスを指します。近年、中国の「カーボンピーク」「カーボンニュートラル」目標の導入に伴い、金融市場を使って国内のグリーン経済の発展をいかにサポートするかが、香港の金融セクターにとって重要な命題になっています。

 

 香港特区政府の継続的な推進により、香港のグリーンボンド市場は好調に推移し、グリーンローン市場も新たな展開を見せています。2021年には、香港で手配・発行されたグリーンおよびサステナブル債務融資額は、前年比4倍増の570億米ドルとなり、過去最高となりました。このうち、国際債券は合計313億米ドルとアジア市場の3分の1を占め、手配発行額は1位となりました。

 

 2019年5月に初のグリーンボンドを発行して以来、香港特区政府は定期的にグリーンボンドを発行し続けており、これまでに機関投資家と個人投資家の両方を対象に、複数の通貨と期間により90億米ドル相当以上のグリーンボンドを発行し、地域の潜在的発行体に対して重要なベンチマークを提供しています。2021年5月、香港は新たに「グリーン・サステナブル金融財政援助スキーム」を立ち上げ、対象となる債券発行人や借入人に対し、債券発行や外部審査サービスなどに掛かる費用を援助しています。今年5月、香港特区政府は、香港の持続可能な発展の成果を投資を通じて一般市民が参加・共有できるようにするため、第1回グリーン・リテール・ボンドを発行し、一般市民から好評を得ています。

 

 2020年9月、大湾区の金融機関やグリーン企業を発起人とする「大湾区 グリーンファイナンス・アライアンス」が発足しました。中国大陸におけるグリーンファイナンスの巨大な需要と相互接続の仕組みは、香港の架け橋としての役割を誘発し、香港がグリーンファイナンスを発展させるための新たな機会を提供することになるでしょう。

 

 2021年10月、深圳市人民政府は香港で、39億元の人民元グリーンボンドを含む総額50億元のオフショア人民元建て地方債を発行しました。香港で中国本土の地方政府がオフショアの人民元建て国債が発行されるのはこれが初めてです。これにより、中国本土の多くの組織が香港でさまざまなグリーン製品やサステナブル製品を発行することを後押しすることになるでしょう。

 

 香港金融管理局によると、将来的には、世界の炭素・グリーン金融市場の機会をつかみ、香港の金融セクターが国際的なトレンドに先行し、さらに多様な発展を遂げることで、香港は中国がグリーン経済への移行という目標を達成できるように支援していきます。

 

 

【参考資料】

 

・香港の金融ビジネス、中国の対外開放の新たな局面に大きく寄与 

 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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