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香港-深圳の「クロスリバー」研究開発 次なる「DJI」の伝説へ【大湾区情報レター Vol.41】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。


  

 

 

 

 

 香港中文大学香港・深圳イノベーション研究院は、1年半前に河套港深科技創新協力区(以下、「協力区」)に入居して以来、中国初のオープン式医療用ロボット実験基地の構築に成功し、低侵襲腹腔鏡手術などの医療ロボットを開発、その一部は臨床試験に入っています。

 

  一方では、世界的に有名な高等教育や基礎研究の成果を有しており、もう一方では、世界でも類を見ない科学技術イノベーションの産業クラスタである香港と深圳は、科学技術イノベーションの分野で補完し合っており、深圳と香港の接点に位置するこのエリアは、自然にそれぞれの強みを融合させる場所となっており、「基礎研究+産業化」の発展の道を模索しています。この小さな場所においても、香港、深圳の協力があれば大いに力を発揮できます。無数の「DJI」がここで産声をあげることが期待されています。

 

「天を支え、大地にも立つ」

 

 「アイデアさえあれば、ここですぐに実現できる」、深圳のスピードについて、香港科技大学港深創新協力研究院の高凌雲エグゼクティブディレクターは、こう賞賛しています。最も完全なサプライチェーンがここにあり、スピードと適合度が非常に高い、と語りました。

 

 香港の大学として初めて協力区の深圳園区に入居した香港科技大学(以下、「HKUST」)は、2019年、協力区に「香港・深圳イノベーション協力研究院」を設立しました。香港の大学の有利な資源と深圳の良好な産業環境、科学イノベーションの土壌を組み合わせるために建設されたブルー・オーシャン(未開拓市場)インキュベーションポート、科学研究実験室群、および生涯教育のための学部を設置しました。そのうち、インキュベートされた19の企業は、すべてHKUSTの教授や卒業生、香港の青年によって起業されています。

 

 「香港の大学による科学研究+深圳のイノベーション産業」の組み合わせは、この協力区では珍しい例ではありません。その背景には、深圳と香港の科学技術イノベーションの優位性を重ね合わせ、結合させたことがあります。

 

 中国(深圳)総合開発研究院の郭万達常務副院長は、香港の5つの大学が世界のトップ100に入り、そのうち4大学がトップ50にランクインしていると紹介しました。ランキングとは別に、香港の大学は人工知能、情報技術、生命科学、新素材、エネルギーなどの基礎研究分野で明らかに優位に立っており、多くの国家重点実験室や技術センターを有します。同時に、香港の大学はより国際的で、多くの国際的な才能を引きつけており、香港の人事科学研究システムや規制基準もより国際的なものとなっています。一方、深圳は、伝統的な製造業からハイエンドな製造業まであらゆる分野をカバーする強力な製造業を有し、科学技術イノベーション企業が多く、企業を中心とした研究開発投資のGDPに占める割合が5%を超えるなど、イノベーションエコロジーが確立されています。

 

 「香港には深圳にない独自性があり、深圳は香港にない独自性があり、この2つの独自性が合わさった地域は世界でもなかなかありません」と郭万達氏は述べました。

 

 「研究院に深圳と香港の二大「ブランド」が積み重なっており、ここでプロジェクトを行うことにより「天を支え、大地にも立つ」(全世界を背負って立つ)ことができます」と香港城市大学深圳福田研究院院長の陳福栄氏も述べています。

 

研究室からマーケットへのイノベーション・エコシステム

 

 2017年、深圳と香港は、「港深科技創新協力区」と「一区二園」のレイアウトを明確にしました。2019年には「大湾区開発計画概要」が発表され、協力区は大湾区で唯一、科学技術イノベーションに特化した特別なプラットフォームとなっています。2021年、この協力区は国家第14次5カ年計画の「2つの回廊と2つの点」の枠組みの重要なポイントとなります。

 

 この戦略的位置付けの変化により、協力区が科学技術イノベーションにおいて「ゼロの突破」から「クラスタ発展」へと移行することができました。現在、協力区の深圳園区では、香港大学、香港科技大学、香港中文大学、香港城市大学、香港理工大学の香港の5大学から10件の質の高い科学研究プロジェクトが導入されています。「量子バレー」、「ベイエリア・コア・バレー」、エネルギー科学技術、ビッグデータ・人工知能、生物医学、香港の大学プロジェクトなど、140以上のハイエンド科学研究プロジェクトが協力区で実質的に推進・展開されており、クラスタの発展を実現しています。

 

 生物医学分野では、2021年末までに協力区に設立された国家薬品監督管理局の医薬品審査検査大湾区センターが、214品種の審査の受け入れに関する実務研修を終え、大湾区内における3つの新薬マーケット投入補助審査レポートを完了し、医療器械技術審査検査大湾区センターにおいては審査レポート888件を発行、4,704件の申請を処理しました。また、世界有数の「AI+医薬品研究開発」企業である晶泰科技(XtalPi)、中国で唯一7T人体全身MRI装置を自社開発したユナイテッド・イメージング(聯影医療/ United Imaging) も協力区に入居しました。

 香港・深圳科学技術イノベーション開放協力先進区、国際先進イノベーションルールの試験区、大湾区のパイロット、実用化クラスタ、は協力区の「三大ポジション」であり、「基礎研究+技術突破+成果の産業化+科学技術金融+人材支援」というイノベーションのエコロジーチェーン全体が、この協力区で徐々に形作られ、科学技術の成果が大学や研究所からマーケットへと向かって進んでいます。

 

 

 

 

【参考資料】

 

・香港-深圳の「クロスリバー」研究開発 次なる「DJI」の伝説へ

 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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