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「中華人民共和国独占禁止法」改正要点解釈【ニューズレター Vol.91】

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として、青葉グループの広東省広州市天河区に拠点を構える弁護士事務所より作成しております。

 

 

背景

中国の改正前の「独占禁止法」は2007年8月30日に可決され、2008年8月1日から施行された。デジタル経済時代の急速な到来に伴い、前例のない経営モデルや競争制限が多く発生し、中国の独占禁止規則の早急な改正が必要となっている。2022年6月24日、第13期全国人民代表大会常務委員会第35回会議での採決では「「独占禁止法」の改正に関する決定」を可決し、改正された「独占禁止法」(以下新「独占禁止法」と略す)は、2022年8月1日から施行される。

 

 

影響

全般的に、新「独占禁止法」は経済情勢の変化に応じて、時代の流れに合わせた改正がされ、デジタル時代に新たに出現した多くの問題に対応し、制度と条項が新たに追加され、競争秩序をよりよく維持する。また、新「独占禁止法」では、独占的な行為をより厳しく取り締まるようになり、企業の法を犯す場合のコストが大幅に増加する。この点から、企業はリスクをできる限り回避するため、独占禁止法の遵守にもっと注意を払い、独占禁止作業をしっかりと行い、経営や取引中において起こりうる独占禁止問題に注意を払う必要がある。

 

 

 

主要内容

 

新「独占禁止法」は計36カ所が改正され、本文では主に今回の改正要点を紹介する。

 

(一)公正な競争の審査制度を確立し、健全化する

新「独占禁止法」の第5条では、「国家は、公正な競争の審査制度を確立・健全化し、行政機関及び法律法規により公共事務を管理する機能を有する組織が、市場主体の経済活動に関わる規制を制定する際に、公正な競争の審査を行わなければならない」と明確に規定している。

 

(二)デジタルプラットフォームに対する管理を強化する

新「独占禁止法」第9条では、経営者がデータとアルゴリズム、技術、資本優勢及びプラットフォーム規則などを利用して、本法で禁止されている独占行為をしてはならないことを明確に規定している。 また、第22条では、市場支配地位を有する経営者に対し、データとアルゴリズム、技術及びプラットフォーム規則などを利用して市場支配地位を濫用する行為をしてはならないことを強調している。

 

(三)「セーフハーバー(安全港)」制度を確立する

新「独占禁止法」第18条では、経営者が関連市場における市場占有率が国務院独占禁止執行機関の定める基準を下回ることを証明でき、且つ国務院独占禁止執行機関の定める他の条件に合致する場合は、その垂直的協定の関連問題が禁止されないと定めている。

 

この規定は法律面から独占協定「セーフハーバー(安全港)」制度を創設し、中小企業が独占協定リスクに対する予測性の向上に役に立つ。

 

(四)ハブ・アンド・スポーク型協定への管理を規定する 

新「独占禁止法」の第19条では、「経営者は、他の経営者と組織して独占協定を締結したり、又は他の経営者が独占協定を締結することを実質的に援助してはならない」と規定されている。現実には、独占協定を維持するために、一般参加者の他、仲介役も存在する場面が多いため、多くの独占協定が「ハブ・アンド・スポーク型談合」となっている。仲介役は「ハブ」で、一般参加者は「スポーク」である。改正前の独占禁止法では、規制の重要対象は一般参加者であったが、新「独占禁止法」では、一般参加者が責任を負う必要があるほか、援助を提供する仲介役も関連責任を負う必要がある。

 

(五)経営者集中審査制度を完全化する

新「独占禁止法」第32条では、経営者集中の審査期限について「ストップクロック」制度(停鐘制度)を規定し、経営者が規定通りに書類や資料を提出せず、それにより審査業務を行うのができない場合、また経営者集中の審査に重大な影響を与える新状況、新事実が確認されていないことにより審査業務を行うのができない場合等、独占禁止執行機関は、経営者集中の審査期限の計算を中止することを決定することができると規定されている。

 

第26条では、経営者集中が国務院の定める申告基準に満たさないが、当該経営者集中が、競争を排除、制限する効果がある、又はありうることを証明する証拠がある場合、国務院独占禁止執行機関は経営者に申告を要求することができる。経営者が申告を行っていない場合、国務院独占禁止執行機関は法律に基づき調査を行うものとする。 この規定は、独占禁止執行機関に自主的に申告を要求する権利を与え、競争に実質的な損害を与える集中行為を回避することができる。ただし、この規定は、企業の取引に関するリスクへの評価に対してもより高い要求を出している。

 

また、第37条では、「国務院独占禁止執行機構は、経営者集中の「分類・分級」[1]審査制度を健全化し、法に基づき国の経済と民生などの重要分野に関わる経営者集中の審査を強化し、審査の質と効率を高める」と規定されている。この規定によって、すべての経営者集中が一律に国家局に受理、審査される現状が変わり、「分類・分級」審査制度の実施に伴い、今後地方執行機関も経営者集中の審査により大きな役割を果たすようになる。

[1] 経営者集中の分類審査とは、独占禁止執行機関が異業種の経営者集中の特徴に注目し、分類して審査を行い、また法に基づき民生、金融、科学技術、メディアなどの重点業種と分野における経営者集中の審査を強化することを指す。

経営者集中の分級審査とは、異なるレベルの独占禁止執行機関が異なる規模またはタイプの経営者集中を審査することを指す。

 

(六)違法行為への処罰力を強化する

新「独占禁止法」第7章の法律責任部分は関連違法行為に対する罰金額を大幅に引き上げ、独占行為に対して、会社のみならず、関連責任者も処罰する「二重処罰制度」を実行するとともに、信用喪失による懲戒、刑事責任などより多くの違法処罰責任の形式を増加する。

 

例えば、独占協定について、改正前の独占禁止法では、合意が成立し実施された場合は、違法行為の停止を命じ、違法所得を没収し、前年度の売上高の1%以上10%以下の罰金を処するほか、実施されていない場合は、50万元以下の罰金を処する。一方、新「独占禁止法」第56条では、合意が成立し実施された場合は、前年度に売上がなくても、500万元以下の罰金、実施されていない場合は300万元以下の罰金を処することができると調整されている。

 

違法な経営者集中行為に対して、改正前の独占禁止法で定めされた罰金の上限は50万元で、多くの企業にとって拘束力はない。 一方、新「独占禁止法」第58条では、違法な経営者集中で、競争を排除、制限する効果がある場合、前年度の売上高の10%以下の罰金を処することができる。たとえ競争を排除、制限する効果がない場合でも、処罰額が500万元以下に達することができると規定されている。

 



【法規リンク】

・全国人民代表大会常務委員会の「中華人民共和国独占禁止法」の改正に関する決定

 

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