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大湾区における国際金融ハブの構築 南沙は魅力満載【大湾区情報レター Vol.50】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。


  

  

 

 12月4日、国際金融フォーラム(IFF)2022グローバル会議が広州・南沙で「新しい仕組み、新モデル、新ダイナミクス:国家戦略と「南沙計画」のもとで大湾区に国際金融ハブを構築する」をテーマに円卓会議を開催し、金融と政治の専門家が集まり、大湾区の国際金融ハブの構築に向けて、それぞれの見識を共有しました。 

 


南沙の金融セクター イノベーション成果は顕著

 今年6月、中国政府は「広州南沙が広東・香港・マカオと世界に向けての包括的協力を深めるための全体計画(南沙計画)」を公布し、南沙は「大湾区に軸足を置き、香港・マカオと協力し、世界に向き合う」重要戦略プラットフォームとして新たな位置付けを確立しました。円卓会議では、広州市南沙区人民政府の呉揚区長は「金融は経済の血脈であり、近年、南沙は重要戦略プラットフォーム、開放性、政策の優位性を最大限に活かし、金融セクターのイノベーション発展を積極的に推進し、大湾区の金融セクター開放のパイロット窓口を構築する顕著な成果を上げ、2022 年の第3 四半期までにおいて、金融業界の付加価値は約 130 億人民元になり、前年比14.3% 増加しています。」とスピーチしました。

 

 現在、南沙ではハイエンド金融産業プラットフォームの集積が加速しており、登録金融機関15社を含む7,000社近くの金融企業が拠点を設け、市全体の4分の1を占めています。広州先物取引所、国際金融フォーラム、大湾区における上海証券取引所資本市場サービス拠点、中国ベンチャーキャピタルフォーラムなど、主要なプラットフォームが立ち上がり、金融サービス機能は引き続き大きく強化されてきました。

 

 中国における金融自由化の最前線にあり、クロスボーダー貿易と投資の高度発展のための最初のパイロット拠点の一つとして承認され、ビジネス規模は100億米ドル以上、クロスボーダー人民元決済額は6,000億米ドルを超えています。過去3年間、平均付加価値額は16.8%に達し、6,000以上のFT口座 (自由貿易口座)が開設され、160以上のFT資金プールが設立され、450以上の国内外の企業が集まり、金融改革開放の実験場としての役割を発揮しました。

 

 同時に、現在注目を集めている金融分野の発展も盛んで、中国初の気候投融資のパイロット拠点の一つとして承認されました。広州航運取引所は取引規模が全国2位で、大湾区で航空機と船舶リースの最大の集積地となり、クロスボーダー金融、ファイナンスリース、航海運金融、グリーンファイナンスなど8つの特色ある金融が注目されています。金融の資金が実体経済に力を与え、南沙が質の高い発展を遂げるのを助けているのです。「第13次5カ年計画」期間中、南沙の主要経済指標は年率2桁の成長を遂げ、2021年には国内総生産が2,000億人民元、固定資産投資が1,000億人民元、一般公共予算収入が100億人民元、一定規模以上工業生産額が3,400億人民元をそれぞれ超えました。今年1月から9月までのGRPは前年同期比4.9%増、一定規模以上工業生産額は12.2%増、一般公共予算収入は13.7%増、外国投資の実質利用率は2.58倍で、多くの指標の成長率は市内でもトップクラスに位置しています。

 

広東省・香港・マカオの総合的協力実証区の構築

 「南沙計画」では、南沙はさらに、世界にシステムを開放する金融センタープラットフォームとなるべきとしています。金融は大湾区の経済発展にどのように貢献できるのか、金融イノベーションにおいて自由貿易区はどのような役割を果たすことができるについて、広州南沙開発区管理委員会の林少礼チーフエコノミストは、「大湾区発展計画綱要」(以下、「綱要」)が南沙を広東・香港・マカオの総合協力実証区とすることを明確に支持し、大湾区を国際航運・金融・科技のイノベーション機能の担い手として発展を加速し、航海運金融、科技金融、航空機・船舶リースなどの特殊金融を開発する努力が必要である、と語っています。

 

 「鋼要」では、南沙は金融サービスを発展させ、実体経済への貢献度を高め、南沙の経済社会特性や産業配置に基づき、クロスボーダー金融、航海運金融、グリーンファイナンス、フィンテック、ファイナンスリース、商業ファクタリング、株式投資、先物取引など8分野での金融セクターを形成します。全国クロスボーダー貿易と投資のオープンパイロットスキームの実施以来、実施されたビジネス取引は4,241件、取引額は104億米ドルに達し、QFLP(適格海外投資事業有限責任組合)パイロットスキームの承認企業は6社、承認額は155億人民元を超え、グリーンファイナンス・サービスのためのエコシティ開発モデルは効果的に構築され、合計航空機238機、船舶90隻がリースされました。


三大環境ポテンシャルを活性化 南沙の発展を刺激

 南沙開発区管理委員会秘書長の欧陽劉兵氏は、南沙の現状について、南沙の開発可能建設面積は240平方キロメートル以上に及ぶも、現時点での開発の進捗率はわずか23%となっており、2025年までに南沙の域内総生産 (GRP)は3,000億人民元に達する予定である、と述べており、その将来性には大いなる期待をかきたてられます。

 

 今回の会議では、南沙で活性化させるべき環境ポテンシャルとして、以下の3つのタイプが挙げられました。

 

 PwCの広東省マーケット統括パートナーである王斌氏は「ビジネス環境」のポテンシャルを挙げました。南沙の3つのパイロット・ゾーンと蕉門河などにおける実地調査によると、AION(自動車)、小鵬汽車、Pony.ai、BYDなどの企業が広州や深圳などに集積しており、南沙がその地の利を生かしてスマート交通、路車協調などの完全産業エコロジー試行区を構築することができれば、広東省の支柱産業の高度化に役立つと期待されます。南沙の慶盛パイロット・ゾーンに設けられた香港人国際生活ゾーン、香港人向けの学校などの生活環境は、税制優遇措置よりもより人材を引きつける魅力があり、南沙の産業アップグレードは自然と国際的な影響を帯びるようになってきます。

 

 南沙にて投資を行っているPony.aiの副社長で広州・深圳R&Dセンターの責任者である莫璐怡氏は、南沙は「産業環境」として大きなポテンシャルを持っている、と考えています。Pony.aiが中国と米国で蓄積した自動走行距離1,700万kmのうち、60%が南沙において行われています。莫璐怡氏によると、今後5年間は自動走行にとって重要な産業変革期であり、中国と米国の企業がこの産業の技術の最前線にいると言えます。自動走行分野に関する法規が未整備である中で、南沙が率先して関連基準を制定することができれば、自動走行技術の産業化・商業化の機会を迅速につかむのに有利な、川上・川下と、産業全体の投資を呼び込む産業環境が形成されます。

 

 広州市地方金融監督局の邱億通局長は「大湾区国際商業銀行は開設準備中であり、次のステップは、大湾区金融管理・資本管理センターを中心に、南沙の「政策環境」を整備することです」と明らかにしました。一方で、大湾区の金融市場の相互接続と相互運用に有利な多くの政策試行地区となることを目指し、南沙に大湾区保険サービスセンターを設立します。他方では、南沙明珠湾に資産管理コリドーを建設し、全市が一同に協力して大湾区の金融管理及び資産管理センターを建設できるようにします。

 

世界の重心は東へシフト 大湾区の発展エネルギー向上

 南沙の3つの環境のポテンシャルを引き出すにも、大湾区の金融・航海運ハブを整備するにも、開発を支える十分な機運が必要です。

 

 今回の会議で、中国国際経済交流センター首席研究員で、元国家発展改革委員会学術委員会事務総長の張燕生氏は、世界の重心が東に移動しているという観点から、南沙、大湾区のさらなる発展のチャンスの存在を示しました。

 

 彼は、少なくとも3つの点において、世界の重心が東に移動すると考えています。第一は、世界の需要の重心の移動であり、市場が常に欧米に依存し、東アジアが世界に製造と労働力を提供していた過去とは異なり、今後15年で、中国が内需を拡大し新しい発展パターンを構築すれば、中国の消費市場規模は米国のそれに近づき、中国は世界最大の市場になるとさえ予想され、中国における需要は経済成長を牽引する原動力と予想されます。

 

 第二に、技術面における重心の東へのシフトになります。東アジアにおける生産ネットワークの大きな変革、東アジアにおける生産方式の大きな変化に伴い、中国、日本、韓国、そして東アジア地域全体が技術の現地化、人材の現地化、主要部品生産の現地化を推進します。

 

 3つ目は、グイノベーションの重心が東にシフトしていることです。最新のグローバル・イノベーション・インデックスのレポートでは、世界のイノベーションの風景が東にシフトしていることが、今後、世界のテクノロジークラスタとイノベーションにおいて明確なトレンドになると予測し、重要なポイントであると述べています。

 

 HSBC 大湾区の元チーフエコノミストの屈宏斌氏は、これらの重心の東への移動について、中高級人材のコスト優位性が不可欠だと考えています。大湾区は、韓国、シンガポール、日本に比べて、エンジニアや大卒者の賃金水準がまだまだ低く、毎年、新たに増加する中高級人材の数においてもスケールメリットがあるため、中高級人材の面では、まだまだ低コストで優位に立つことができると見ています。

 

大湾区での金融発展に明確な優位性

 「大湾区における国際金融ハブの構築には、中国本土、香港、マカオの統合、調整、協力が必要です。」IFF副理事長で前香港財務長官、南豊グループ会長兼CEOのアントニー・リョン(梁錦松)氏は、大湾区における金融開発の優位性を強調しました。

 

 「大湾区の広東省の9都市と香港、マカオを加えたGRPと人口は、ヨーロッパの比較的大きな国に匹敵し、大湾区の9都市と香港、マカオの産業と経済機能は非常に相互補完的で、諸外国との連携は非常に強く、これは国が提案する“国内循環を主軸とし、国内と国外のダブル循環”の方向性と一致しています。」と梁氏は述べました。

 

 梁氏は、香港が世界のオフショア人民元ビジネスハブとしての地位を強化することを前提に、大湾区におけるクロスボーダー人民元使用の規模と範囲が徐々に拡大することを期待しています。大湾区内の銀行機関は、双方の要求に応じて、クロスボーダー人民元取引、人民元為替予約業務、人民元デリバティブ業務、金融商品のクロス取引を行うことができるようになると期待しています。

大湾区における金融・シッピングハブの高度化の推進

 中国人民銀行広州支店の白鶴祥支店長は、大湾区の金融ハブをアップグレードするために、金融テクノロジー、イノベーションキャピタル、グリーンファイナンス、人民元資産配分、金融システムのイノベーションという5つのルートを計画しました。

 

 また、広東省、広州市、香港、マカオが共同で大湾区の金融科技発展計画を策定し、大湾区の中核都市金融技術発展の位置づけを明確にし、デジタル金融産業クラスタと応用シナリオ生態系の育成・発展を加速させ、イノベーション・エコロジカル・チェーン全体の金融サービスシステムの構築を模索し、科技イノベーション企業が二つの市場、二つの資源をうまく利用し、融資ルートを拡大し融資コストを低減することを支援すべきと提言しました。

 

 また、広州グリーンファイナンス改革革新実験区が国家レベルのグリーンファイナンス改革革新デモンストレーションゾーンに格上げされるよう積極的に努力し、炭素市場を積極的に開拓・発展させ、グリーンファイナンスにおける広東・香港・マカオの協力を深めるべきと提案しました。また、多国籍企業金融センターの整備を模索し、南沙国際仲裁センターなどのプラットフォームに依拠して、国際慣行に沿った金融分野の商業紛争解決メカニズムの確立を模索する必要があります。

 

 「製造業の移転は、大湾区港湾群の市場基盤と将来の成長に不確実性をもたらしています。」国新国際投資有限会社(CNIC)の余利明副ゼネラルマネージャーは大湾区の航海運ハブとしての発展に障害があると見ています。近年、大湾区の港湾群の国際競争力が著しく向上している一方で、大湾区の港湾は都市の境界線によって連携が難しくなっており、港と都市の矛盾がますます顕在化して来ており、これだけ大きな港湾集積地においては、構造的な調整が必要である、と述べました。

 

 「大湾区に世界向けのスーパー・シッピング・ハブを構築することを計画するべきだ。」と余利明氏は言いました。大湾区は、グローバルな製造拠点として、中国の内外の経済サイクルを戦略的に支える地域であり、グローバル・スーパー・シッピング・ハブの共同建設は、大湾区の経済発展に必要なだけでなく、国のグローバル資源配置能力を高める鍵になると述べました。

 

 香港珠海マカオ大橋を境界として、大湾区の内湾と外港を区分し、外港は大湾区にグローバル・スーパー・シッピング・ハブを計画し、黄金内湾は香港珠海マカオ大橋から100km以内の港湾保管量の最適化と調整、港湾都市の協調配置に集中し、資源の潜在能力をさらに引き出せるようスペースを確保し、産業の相互補完性を実現させようとするものです。黄金外港は、香港珠海マカオ大橋の50km先にあり、シンガポールや上海洋山港の経験を生かし、港湾運送業と港湾エコサイクルを統合した自動化され、インテリジェントなスーパー・グリーン・シッピング・ハブ複合施設を形成する、と余利明氏はスーパー・シッピング・ハブの建設プランを描きました。

 

 

 

 

 

【参考資料】

 

・大湾区における国際金融ハブの構築 南沙は魅力満載

・リンク1

・リンク2

 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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