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【香港】移転価格税制文書化(国別報告書編)

昨今、経済活動の国際化の進展に伴い、各国税務当局間での関連する情報交換がより一層進む中、移転価格税制への対策の重要性がますます高まっております。

 

以前ご紹介させていただいた移転価格文書化制度の記事では、経済協力開発機構(OECD)により開発された移転価格文書化の要求に関する標準的な3層構造アプローチのうち、マスターファイル、ローカルファイルの文書化についてご紹介をさせていただきましたが、今回はその3層構造の残り一つ「国別報告書(Country-by-Country Reporting、通称“CbCレポート”)」の文書化についてご紹介させていただきます。

 

 

国別報告書(Country-by-Country Reporting、“CbCレポート”)

国別報告書とは、多国籍企業グループの国または地域毎の活動状況(収入、利益、人員、資産など)に関する情報が記載される文書です。英語では、”Country-by-Country Report “と言い、通称CbCレポートといわれています。

 

多国籍企業グループの最終親会社は、以下の二つの条件をいずれも満たしている場合、国別報告書(CbCレポート)を提出する必要があります。

 

(1) 前年度の多国籍企業グループの年間連結グループ売上高が68億香港ドル(日本では1,000億円)を超えている

(2) 多国籍企業グループの最終親会社の税務居民地が香港である

 

 

ただし、最終親会社の税務居民地が香港ではない場合においても、以下のいずれかの基準を満たしている場合、連結グループの年間売上高が68億香港ドルを超える多国籍企業グループに属する香港法人は、国別報告書の提出義務が発生します。

 

1) 最終親会社の税務居住地の管轄区域において、国別報告書の提出義務がない

2) 当管轄区域と香港との間に国際協定が結ばれており、税務情報の自動情報交換(Automatic Exchange of Information)が行われているが、国別報告書の提出締切日までに、当管轄区域と香港の間で国別報告書の共有協定が結ばれていない

3) 当管轄区域との間で国別報告書の共有が全面的に機能しておらず、その旨を監督庁より香港法人に通知されている。

 

 

また、上記条件の1つでも満たしていたとしても、以下のいずれかに当てはまる場合は、香港企業は国別報告書の提出義務が免除されます。

 

(1) 多国籍企業グループに属する他の香港法人により、当該会計年度の国別報告書が提出されている

(2) 多国籍企業グループが、グループを代理して国別報告書を提出する代理親会社へその権限を委任しており、国別報告書はその代理親会社により香港または香港と国別報告書の共有アレンジを行っている管轄区域にて提出されている

 

 

 

国別報告書の提出義務に関する事前通知について

当記事をご覧いただいている方のほとんどが、最終親会社は香港法人ではなく、日本法人である場合が多いかと思いますので、国別報告書の作成および提出は日本側で対応するため、香港側での手続きは必要ないのではと考えてしまうかもしれません。しかし、日本本社が国別報告書を日本の税務局へ提出義務が発生した場合においても、香港側でそのことを香港税務局へ通知する義務があることに注意してください。

 

2018年1月1日以降に開始する会計年度より、香港法人が属する多国籍企業グループのいずれかの企業が、(最終親会社または代理親会社の税務居住地にどこであるかに関わらず)国別報告書の提出を求められている場合、グループに属する香港法人は、最終親会社、代理親会社およびグループに属するその他のメンバーの関連情報が記載された書面での通知を、関連する会計年度末から3ヶ月以内に香港税務局に届出をする必要があります。

 

また、香港法人自身が国別報告書の提出義務要件を満たしている場合は、該当する会計年度末から12ヶ月以内に国別報告書を提出する必要があります。

 

例:日本の最終親会社の202112月期連結決算売上高が1,000億円を超えていた場合

 

⇒ 最終親会社は2022年12月期の国別報告書が報告対象年度となる。

⇒ 香港子会社は2023年3月末までにIRD(香港税務局)へ国別報告書が提出される旨を通知しなければならない。

 

*香港子会社が国別報告書を香港税務局へ提出するというわけではなく、日本の親会社が2022年12月期の国別報告書を作成し、2023年に日本の税務局へ提出される予定であることを、香港子会社が香港税務局へ通知するということ。

*通知期限は、報告対象年度の期末から3ヶ月以内となる。

 

 

その他注記事項

提出遅延に対する罰則金は最高でHKD50,000(レベル5)となっております。

 

 

 

弊社では、これまでこの国別報告書の作成ならびに通知業務を含む移転価格税制文書を作成をしてきた経験と実績がございますので、当件に関するお悩みやご依頼などございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください

 

 

 

 

参照リンク:

香港税務局「Country-by-Country Reporting」

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
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