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【中国】一部の都市で仲介業者による社会保険の代行納付が禁止に

中国でも日本と同様に、年金や医療保険などの保障のため、社会保険に加入しなければなりません。

通常、会社のオフィスがある所在地の社会保険局へ、雇用主である会社が従業員の社会保険料を納付することになります。

 

そしてこの社会保険は、中国の各都市毎の社会保険局が管轄しているため、会社の所在地以外の都市で事業を行う場合は、その都市を管轄している当局へ納付しなければなりません。そのため、その都市に、

 

  • 子会社や分公司(支店)を設立していない、
  • 非営利性の分公司を設立している、

 

といった場合において、その都市に勤務する従業員の社会保険料は、「仲介業者に依頼し代行納付してもらう」という対処をとる企業がほとんどだと思います。

 

 

社会保険の不正受給を行う詐欺が横行

この「仲介業者に依頼して代行納付をしてもらう」という方法を利用して、詐欺を行う事例が散見されています。

 

例えば、実際には勤務していないにも関わらず、仲介業者にいくらか支払い、定年退職後の年金を給付してもらうために、「勤務していたと偽って社会保険を納付する」といったような事例です。

 

そこで、一部の都市では上記のような詐欺行為による社会保険基金の受給を規制するために、仲介業者による社会保険の代行納付を禁止することになりました

 

 

 

「社会保険基金に関する監督・通報工作管理弁法」が2023年5月1日から施行

さらに、この度、人的資源社会保障部は、2023年5月1日から施行される「社会保険基金に関する監督・通報工作管理弁法」(以下は「弁法」という)を公布し、社会保険基金を騙し取る行為を厳しく監督する告発体制を定めました。

 

当弁法により、社会保険に加入している会社・機関、個人、仲介機関は、以下のいずれかの疑いのある行為を見つけた場合、いかなる組織または個人であったとしても、本弁法に基づき告発することができるようになります。

 

 

  • 虚偽の証明資料の提供などの手段により、社会保険加入条件を偽装し、規則に違反して社会保険料を追納した場合。
  • 関連の証明書、記録文書、資料を偽造または捏造し、社会保険基金を詐取した場合。
  • 第三者と組織的に、または協力し、記録文書、資料の偽造・捏造などの手段で、社会保険料の追納、早期定年退職の資格を得たり、規則に違反して社会保険の待遇を申請した場合。
  • 個人が社会保険の待遇を享受する資格を喪失した後、本人又は関連の受益者が規定に従って告知義務を履行せず、その事実を隠蔽し、規則に違反して社会保険の待遇を享受した場合。
  • その他の社会保険基金を騙し取ったり、不正に流用したりした場合。

 

 

 

青葉が推奨する2つの対処例

しかし、これまで仲介業者を通して社会保険料を納付していた企業の多くは、社会保険基金を騙し取るためではなく、冒頭で紹介したように、あくまでも業務上必要となったために、仲介会社を通して、社会保険納付手続きを行われていたかと思います。

 

そこで、仲介業者による社会保険の代行納付が出来なくなった場合、どのように対応したらよいか、コンプライアンス上問題になりにくい2つの方法を、ご紹介いたします。

 

 

「非経営性の分公司」の名義に変更する方法。

例えば、深セン市に設立したA社が、広州市に非営利性の分公司を設立している場合、

 

→ 広州分公司が従業員と労働契約を結び、広州分公司から給与を支払い、広州分公司の名義で社会保険を納付する。

 

という対処することが推奨されます。

勤務地、給与負担、社会保険納付は一致させる必要がありますので、コンプライアンスの観点により、これが一番正しい処理方法となります。

 

しかし、広州分公司で給与負担が発生することによって、広州で個人所得税の申告義務が発生します。(個人所得税の申告は、オンラインで申告可能です)

 

また、企業所得税の面では、広州の税務局から広州で予定納付をする、又は「独立採算」を要求される可能性があります。

 

「独立採算」とは:分公司の単独の財務諸表を作成することを意味します。

本来非経営性の分公司であれば本店と合算した財務諸表のみの作成で問題ありませんが、広州分公司の単独の収入を確定させるために、作成を要求される可能性があります。組織形態を分公司(法人資格なし)から子会社(法人資格あり)に変更するということではありません。

 

税務局から要求される前に、広州分公司が自ら独立採算の上、広州にて納税を行うという対応策であれば、一番最善の方法ではありますが、実務作業の手間が増えることは事実です。

 

そのため、現地での納税および独立採算の手続きを不要にする許可をもらうため、この分公司は、従業員も主に連絡業務に従事し、収入はなく、給与などの費用だけ発生する”非営利性の分公司”である旨を、事前に税務局へ相談しておくのも一つの方法として考えられます。

 

華南地区では、その許可をもらえる可能性はありますが、

 

  • 実際に税務局から現地納税/独立採算不要という通知書等を受けることはない
  • 担当管の変更により、後日却下される可能性もある

 

という点に注意しておく必要があります。

 

税務局の認可のもとで実行しているため、後日却下されるようなケースは多くはありませんが、絶対的な保証はしてもらえません。また、故意的な脱税ではない限り、追加徴税のような税務リスクは低いといえます。

 

 

 

労働契約を役務契約(業務委託)へ変更する方法

労働契約から役務契約(業務委託契約)に変更することが出来れば、その従業員は外注業者としての契約となるため、個人として社会保険に加入することになり、関連手続きにおいても現地でその個人が行うことになります。

 

この方法を行う際に重要となる2つのポイントがあります。

 

 

  1. 従来の労働契約の合法的な解除

必ず従業員の同意を得た上で、合法的に現在の労働契約を解除すること。(経済補償金の支払い等も発生)

それであれば、別途会社と個人の間で、役務提供の契約を締結することは可能となります。(日本と同じ)

 

 

  1. 実態に則した役務契約の締結

役務契約であれば、その個人は会社の従業員ではなくなり、外注業者となるため、従業員規則、出勤時間の規定等実質的には労働関係であるような状況を避ける必要はあります。

 

なぜならば、実質的に従業員と同様に勤務し、形だけの役務契約になっているのであれば、従業員に訴えられた際に、裁判では形式ではなく実質に基づいて判断されることになるからです。

 

 

 

元の労働契約の合法的な解除、そして実態に則した役務契約の締結は、この方法の重要なポイントとなり、この2点を確保できれば、中国の法律に反することはありません。

 

ちなみに、個人所得税税金計算については、月次申告の際に、役務提供による収入の税率が、労働契約の下での賃金収入の税率より高くなりますが、年度末の確定申告の際に、役務収入も賃金収入も、総合的収入として同一税率で計算することになりますので、実質的には変化がありません。

 

 

 

 

今回ご紹介させていただいたの2つの対応方法以外に、企業の状況に合わせた対応方法が見つかる可能性もあります。

 

Aobaグループには経験豊富な弁護士、税理士が多数在籍していますので、もし今回の取り上げた社会保険の納付に関して懸念事項がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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