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よくある監査の相談事項シリーズ 第六回 連結決算

 

弊社では香港へ進出されている多くの企業に対して会計監査を行っているため、日々様々なご相談をいただきます。その中から、多くの企業からいただいたご相談事項を、「よくある監査の相談事項シリーズ」と題しまして、皆様の監査のお悩み解決の一助となることを願い、ご紹介していきたいと思います。

 

今回はその第6回目となります「連結決算」についてお話いたします。

 

 

連結決算とは

連結決算とは、企業グループ全体の財政状態や経営実績およびキャッシュフローの状況を把握するために、グループ企業の財務諸表を集めて、1つの財務諸表を作ることを指します。

 

企業の通常の決算において財務諸表が作成されるように、連結決算では連結財務諸表が作成されます。

 

連結財務諸表を作成する際には、連結の対象となる各会社がそれぞれの経理業務として決算を行い、個別財務諸表を作成した上で、それらの数字を合算をする方法が用いられます。しかし、単純に合算をするだけではグループ企業間で行われたやり取りも計上されてしまうため、グループ企業内での取引を排除する連結修正などを行った上で、企業グループ全体の正確な事業結果を計上することが必要となります。

 

 

 

 

連結決算の範囲

香港財務報告基準 (HKFRS、国際財務報告基準 (IFRS)と同義)では、原則として全ての子会社を連結の範囲に含めなければなりません。しかし、香港会社条例では、一定の基準を満たすことで連結決算書の作成を免除することが認められています。作成免除条件については、こちらをご参照ください。

 

 

 

 

連結決算のメリットとは

連結決算を行うことで企業グループ全体の経営実態を正しく表すことが可能となり、企業グループ全体にわたる経営状況を網羅的に把握することが出来るようになります。その結果、グループ戦略の立案・検討をより総合的な視野で行えるようになります。また、グループ全体の財務の透明性が強化されることで、金融機関からの融資が有利になるのもメリットとして挙げられます。

 

また、連結決算を行うことは不正の防止にもつながります。

 

例えば、会社単体レベルでの経営状況を良く見せるために、グループ企業に対して架空の売上をたてたり、経営状況に悪影響を及ぼす損失や資産(含み損を抱えた不良債権など)を一時的にグループ企業に引き渡す、などの利益操作が不正の手口として挙げられます。しかし、連結決算ではグループ企業間の取引を消去することになるため、連結決算の過程の中で、このような不正の早期発見が可能となります。また、連結決算を行うこと自体が抑止力なり、不正を未然に防ぐ可能性を高めることが出来、内部統制の強化にもつながります。

 

 

 

 

連結決算のデメリットとは

連結財務諸表の作成は決して容易なものではありません。上述の通り、連結財務諸表を作成する際には、単純に個別財務諸表の数値を合算するのではなく、連結修正を行う必要があります。

 

国際的に展開しているでは、各グループ企業の所在地である国・地域により会計基準や会計方針が異なることは珍しくありません。しかし、連結決算書を作成する際にはこれらを統一する必要があり、異なる会計基準で作られた財務諸表を同一の会計基準へ切り替えるために行う修正も連結修正に含まれます。

 

例えば、香港会社の財務諸表をHKFRSに基づき発生主義で作成をし、その中国子会社の財務諸表を中国の企業会計制度に基づき現金主義・発票主義で作成をしているというケースでは、連結財務諸表の作成の中で、中国会社の財務諸表を親会社である香港会社と同じくHKFRSに基づき発生主義に組み替える作業が発生します。

 

その他の連結修正として、親子間の出資金と資本金の相殺、グループ企業間の取引に関する資産、負債、資本、収益、費用ならびにキャッシュ・フローの全額相殺、未実現損益の消去などが挙げられます。

 

これらの作業は複雑であり、また経理担当者は他のグループ企業と密に連絡を取りながら、グループ企業間の取引の管理などの作業を進めていかなければならないため、担当者への負担が非常に大きくなります。

 

 

 

 

連結決算に対する監査手続き

連結決算書の作成が企業に取って容易なものでは無いように、連結決算書への監査作業は監査法人に取っても比較的複雑なものとなります。

 

連結決算のデメリットとして挙げた複雑な連結修正が適切かどうかということを判断する必要があるため、監査法人としても状況に応じて他国・地域の監査法人と協力をしながら作業を進めることも珍しくありません。2023年12月15日以降に開始する事業年度においては、国際監査基準 (ISA)におけるグループ財務諸表監査に関する規定に改定が加えられることとなっており、親会社の監査人は連結決算対象となる子会社の監査人の手続き、作業内容を今まで以上に深く理解することが求められています。

 

また、HKFRSでは原則として全ての子会社が連結の範囲に含まれますが、連結財務諸表に含まれていない子会社がある場合、その重要性を分析することで、連結決算に含めないことを容認出来るのか、もしくは限定付き意見などを表明するべきかどうかを判断する必要が出てきます。

 

 

 

 

連結決算、連結決算監査の対策

このように連結決算書の作成、およびそれに対する監査というのは、企業側と監査法人側の双方に取って難易度の高い作業となります。特に今まで連結決算書を作成したことがない企業などでは、十分な事前準備が必要となります。連結作業を円滑に進めるために、通常は連結パッケージと呼ばれる、連結修正のために必要な情報をまとめた表を作成し、それを使用するケースが一般的ではあるものの、連結パッケージの作成に不備があった場合は連結決算書全体に影響が及んでしまうリスクがあります。

 

弊社グループでは、連結パッケージや連結決算書の作成、また企業側で作成された連結決算書のレビューなどといったサービスも提供しております。

また、弊社グループでは連結監査の対応も数多く行っており、日本の子会社として香港会社・中国会社が連結に含まれる場合と、香港会社・中国会社が親会社として他国・地域の会社を連結に含む場合の双方の対応が可能です。

 

連結監査を行う際には企業側とのコミュニケーションだけでなく、他の監査法人とのコミュニケーションも非常に重要となる中、弊社グループでは日本語、英語、中国語と多言語での対応をしております。また、必要に応じて弊社が加盟しているPrimeGlobalなどの国際ネットワークを利用し、他国・地域での連結監査対応を行うこともあります。

 

 

連結決算書の作成におけるサポートや、連結決算監査の対応につき、お困りなことございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<参考リンク先一覧>>

Hong Kong Financial Reporting Standard 10 – Consolidated Financial Statements

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
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