NEWS

ニュース

【中国】新会社法により変化した取締役の職務責任について

 

中国では2024年7月1日より”新会社法”が実施される予定となっており、先日、この新会社法施行により、企業へどのような変化があるかについて解説させていただいた記事を発表させていただきました。

 

【関連記事】

・新会社法に関わる変更点9大項目の解説(上)

・新会社法改正後、企業に起こりうる7つの変化の解説(下)

 

 

これらに加えまして、今回は、新会社法により「取締役の職務責任」がどう変化するかについて、解説させていただきます。

 

 

1. 第三者への連帯賠償責任

旧会社法第149条では、取締役、監事、高級管理職が職務執行中の法律法規違反行為において、会社に対して賠償責任を負うことが規定されていましたが、取締役は、会社と株主以外の第三者に対する責任を負う規定はありませんでした。

 

しかし新会社法第191条では、

 

「取締役、高級管理職が職務執行中に、他人に損害を与えた場合、会社が賠償責任を負うものとする。取締役、高級管理職は故意(的な行為)または重大な過失がある場合、会社と連帯責任を負わなければならない

 

と規定しています。

 

 

 

 

2. 株主総会、取締役会決議の効力

新会社法では、第27条を追加し、株主総会、取締役会決議のプロセスや成立条件を明確にしました。

 

 

【第27条】

下記のいずれかの場合、会社の株主総会、取締役会の決議は成立しない

 

(一)株主総会、取締役会を開催せずに作成した決議。

(二)株主総会、取締役会で、決議事項に対して採決しなかった場合。

(三)会議に出席した人数又は所持する議決権数が本法又は会社定款に規定されている人数や所持する議決権数に達していない場合。

(四)決議事項に賛成した人数または議決権数が、本法または会社定款に規定されている可決に必要な人数や議決権数に達していない場合。

 

 

 

 

3. 資本金の払込に対する督促義務及び賠償責任

新会社法では、資本金が満額払い込みされていない場合、取締役の督促義務及び連帯責任が付け加えられました

 

 

【第51条】

有限責任会社が設立された後、取締役会は株主の出資状況を精査し、株主が期限通りに、定款に規定された出資額を全額払い込みしていなかったことが判明した場合、会社より当該株主に書面による払込督促状を発行し、出資を督促しなければならない。

前項に規定された義務を適時に履行せず、会社に損失を与えた場合、責任のある取締役は賠償責任を負わなければならない。

 

 

 

 

4. 取締役の忠実・勤勉義務の追加

新会社法では、取締役の忠実・勤勉義務に関する以下の条項が追加されました。

 

【第180条】

取締役、監事、高級管理職は会社に対する忠実の義務を負い、自分の利益と会社の利益の衝突を回避するための措置を講じなければならず、職権を利用して不正な利益を取ってはならない。

 

 

 

 

5. 関連会社・関係者間の取引に対する管理義務の強化

新会社法では、関連会社や関係者との間で行われる取引への管理強化のため、以下の条項が追加されました。

 

【第182条】

董事、監事、高級管理職は、直接または間接的に会社と契約を締結したり、取引を行ったりする場合、契約締結及び取引の関連事項を取締役会または株主会に報告し、会社定款の規定に基づき取締役会または株主会の決議で採決しなければならない

 

取締役、監査役、高級管理職の近親者、取締役、監査役、高級管理職またはその近親者が直接または間接的に制御する企業、そして取締役、監査役、高級管理職とその他の関連者が、会社と契約を締結したり取引を行ったりする場合も、この規定を適用する。

 

 

 

 

6. 取締役の決議回避制度の追加

上述の関係者と会社との取引に関連して、以下の条項が追加されました。

 

【第185条】

第182 条~184条に規定する事項(関連関係者取引)に対して決議する場合、関連者である取締役は採決に参加してはならず、その議決権は議決権総数に計上されない。取締役会会議に出席する無関連関係の取締役の数が3人未満の場合は、当該事項を株主会の審議に提出しなければならない。

 

 

 

 

7. 取締役の職務に対する保険制度の追加

取締役が、その職務において損失を被った際の補償として、保険への加入に関する以下の条項が追加されました。

 

【第193条】

会社は取締役の在任期間中に、取締役が会社の職務執行のために負う賠償責任に対し、責任保険へ加入することができる。

会社が取締役のために責任保険へ加入する場合、又は保険契約を更新した場合、取締役会は株主総会にて、責任保険の保険金額、保証範囲及び保険料率などの内容を報告しなければならない。

 

 

 

 

 

中国の新会社法や法律で何かお困りごとや懸念点などがございましら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
  3. 法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。

※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

Contact Us お問い合わせはこちら