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新会社法による企業の運営に与える影響について【ニューズレター Vol.95】

 

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として、青葉グループの広東省広州市天河区に拠点を構える弁護士事務所より作成しております。

 

 

背景

中国の現行会社法は1993年に制定され、今年で公布30周年を迎える。1999年と2004年に会社法の個別条項の改正、2005年には全面改正が行われ、その後も2013年と2018年に会社の資本制度に関する2回の重要な改正が行われた。そして2023年12月29日に、第14期全国人民代表大会常務委員会第7回会議において新しく改正された「中華人民共和国会社法」が可決され、2024年7月1日から施行されることとなった。

 

 

 

影響

新会社法では、会社の登録資本金の払い込み、株主の連帯責任、董事・監事・高級管理職の賠償責任などについて新たな規定を導入し、会社運営に新たなリスクをもたらしている。

 

 

 

主要内容

一、有限責任会社の登録資本金の払込期限が5年以内となった

新会社法により、有限責任会社の全株主が引き受けた出資額は、定款の規定に従い、会社設立日から5年以内に株主が全額払い込むものとなった。そして、新法施行前にすでに登記・設立された会社に関し、出資期限が5年を超えている場合は、段階的に5年以内に調整しなければならない。

 

2013年の会社法の改正により、登録資本金の額や払込期限を株主が定める登録資本金引受制度が設立され、最低登録資本金の制限が撤廃された。この改正は、会社設立の条件を緩和し、市場参加者の数を増やすことによって、市場の活力を呼び起こすことができる。

 

従い、資本金の払込みが完了しておらず、且つ実際に運営していない、あるいは登記資本金があまりにも大きいという問題がある有限責任会社については、適時に登記抹消または減資手続きを行うことが推奨される。

 

 

 

 

二、出資に対する持分の譲渡人が負うべき責任

新改正会社法では、既に出資の払込を引き受けたが出資期限にまだ達していない持分を譲渡する場合、持分の譲受人は当該出資を払い込む義務を負わなければならない。それと同時に持分の譲渡人は、譲受人が期限通りに払い込まなかった出資に対し、補充責任を負うことになると規定されている。

 

新会社法改正以前は、既に出資の払込を引き受けたが出資期限にまだ達していない持分を譲渡する場合、持分の譲渡人は依然として引き受け期限の利益を享受でき、原則として、譲渡人が悪意で出資責任を回避していることを証明できない限り、持分の譲受人が出資期限通りに出資を払い込まなかったとに対し、補充責任を負う必要がなかった。しかし、新改正会社法では、譲渡人の主観的要素が考慮されず、譲受人が期限通りに出資を払い込まなかった場合、譲渡人は相応の補充責任を負わなければならない。

 

また、新改正会社法では、期限通りに出資金を払い込まない、又は出資とする非貨幣財産の市場価額が、引き受けた出資額を著しく下回った場合、譲渡人及び譲受人は、出資不足の範囲内において連帯責任を負うことになり、また譲受人が上記状況の存在を知らず、かつ、知るべきでない場合には、譲渡人が責任を負うと規定されている。

 

上記の規定は資本取引のリスクを増大させるため、持分を譲渡する際には、譲受人の信用状況の詳細を把握し、出資金等に対する履行担保を要求することが推奨される。

 

 

 

三、董事・監事・高級管理職の賠償責任

董事・監事・高級管理職とは、会社の董事、監事、マネージャー、副マネージャー、財務責任者、上場会社の董事会秘書などを指す。

 

改正後の会社法では、忠実義務や勤勉義務に加えて、董事・監事・高級管理職の責任に関する新たに追加された規定「第51条」により、董事会は、有限責任会社の株主の出資状況について審査をしなければならず、株主が会社定款所定の出資を期限通りに満額を払い込んでいなかったことが確認された場合、会社は当該株主に対し書面の督促書を発行し、出資を督促しなければならない。

 

適宜に当該義務を履行せず、会社に損失をもたらした場合、責任を負うべき董事は、賠償責任を負わなければならない。また、第53条により、株主が出資を引き揚げて会社に損失をもたらした場合、責任を負うべき董事・監事・高級管理職は、当該株主との連帯賠償責任を負わなければならない。

 

 

改正後の会社法第180条は、董事・監事・高級管理職の忠実義務及び勤勉義務を規定しているほか、会社の支配株主や実質支配者が、会社の董事を務めてはいないが、会社の実務を実際に執行している場合にも、董事・監事・高級管理職の忠実義務及び勤勉義務に関する規定も適用すると、明確に特筆されたことに留意する必要がある。

 

 

従い、会社の董事・監事・高級管理職としての法的責任はさらに大きくなり、名ばかりの董事・監事・高級管理職は慎重になる必要がある

 

 

 

四、水平的な資本関連(子会社同士)会社法人格否定制度の確立

新改正会社法の第23条は、株主が支配する2つ以上の会社を利用して、会社の法人格の独立性及び株主の有限責任を濫用し、債務を回避することで、会社の債権者の利益を重大に損ねた場合、会社の債務について連帯責任を負わなければならないと規定している。

 

改正前の会社法でも、株主が株主の権利を濫用して債権者の利益を損ねた場合は、会社の債務について連帯責任を負うことを規定していたが、あくまでも垂直的な資本関連(親子関係)会社法人格否認制度であった。しかし現実には、会社とその関連会社の共同発展に伴い、垂直的な会社(親子関係)により株主の権利を制限することで、市場環境を最適化することができなかったため、新たに改正された会社法では水平的な資本関連(子会社同士)会社法人格否認制度も確立した。

 

実務上において、水平的な資本関連(子会社同士)会社法人格否定に関するよくある状況とは、人員混同、業務混同、財務混同などである。従い、会社グループの構造を最適化し、各関連会社の会社帳簿やその株主の帳簿との混同を回避し、会社間の業務分離を維持することを推奨する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【法規リンク】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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