香港オンライン化が加速中。法人税のe-filing(電子申告)とは
香港はこれまでアナログなペーパー文化が残っていましたが、ここ最近は世界的なデジタル化の流れと業務効率化の必要性から、少しずつ電子化やオンライン化が進んでいます。
個人所得税の申告については、すでに紙ではなくオンライン(e-tax)で行っている方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、加えて2023年より法人税の申告も任意で電子申告(以下、e-filing)と呼ばれるオンラインでの申告が開始されています。
しかし、こちらは個人所得税よりも複雑であることから、まだまだ紙の法人税申告書原本を使って申告されている企業の方が多いかと思います。ただ、この法人税の申告において、すでにご存知の方もいらっしゃるのではないかと思いますが、香港では2025/26年度分の申告分より、一定の条件を満たした多国籍企業グループのような大企業を皮切りに、段階的なe-filingの義務化が始まっています。
今回は法人税申告のe-filingについて、概要をお話させていただきます。
Contents
e-filing/電子申告とは?
e-filingとは、その名の通り税務申告を紙ではなくオンラインで行う仕組みです。香港税務局(以下、IRD)のオンラインサービス(eTAX)を通じて、法人税申告書や財務諸表を電子データの提出を行います。尚、e-filingを行うことにより、自動的に申告期限が1ヶ月延長されます。
なぜe-filingが義務化?
背景には、世界的な税務行政のデジタル化があります。香港政府はスマートシティ構想を進めていく中で、IRDも税務申告の手続きにおいて国際基準に合わせたデジタル化への移行する必要が出てきたのです。
特に経済協力開発機構(以下、OECD)が推進する「コーポレートガバナンス原則」に沿った経営管理の改善や多国籍企業への最低税率制度(グローバルミニマム課税)への対応が求められており、こうした流れを受け、2021年の法改正により電子申告の枠組みが整備され、冒頭でも述べたように2023年から任意利用が開始しました。
尚、2025/26年度より義務化が対象となる多国籍企業グループの基準は、直前の4会計年度のうち少なくとも2会計年度において、グループ連結年間総売上高が7億5,000万ユーロ以上の場合は2025/26年度の申告よりe-filingが義務化されることになります。
また、この対象ではないその他企業においても、最終的に2030年までに段階的にe-filingへ移行しなければならなくなる予定です。
香港法人税申告書のe-filing義務化の段階的導入の暫定的な予定:
2025/26年度 : 対象となる多国籍企業(MNE)グループは全て電子申告が義務化
2028年 :売上高基準額(未定)を超える事業者は電子申告が義務化
2030年 :休眠法人を含む全ての企業において電子申告の義務化
どうやってe-filingで申告する?
申告はIRDのオンラインサービスあるeTAX(Business Tax PortalもしくはTax Representative Portal)を使用して行います。
申告の流れは以下の通りです。
- 税務申告に必要な書類(法人税申告の補助フォーム、財務諸表、税金計算書)を準備
- 書類をアップロード
※財務諸表と税金計算書はiXBRL形式*に変換する(IRDがiXBRL形式用の無料のシステムを提供)
- オンラインフォームへ必要事項を入力
- 認証ツールを使用し、電子署名
- すべての情報をオンラインで提出
※申告書提出後、その記録および受領確認書を保存されることを推奨
- 税務局より法人税の査定通知書が届く
※紙申告より早く発行される傾向
*iXBRLとは:
HTML形式とXBRLを組み合わせた新しいフォーマットで、見た目は普通の財務報告書でありながら、その裏側にはXBRLタグが埋め込まれている形式で、提出資料を“人間向け”と“機械向け”の両方に最適化することが可能となります。
おわりに
香港の法人税申告は今後数年で大きく変わり、すべての企業はいずれe-filingでの対応を行わなければなりません。ただ、原本郵送の手間がなくなることにより香港外での対応が容易になることや、申告期限の延長、査定通知の発行時間の短縮など多くのメリットがあります。
一方で、紙とは異なるiXBRL形式への変換に対応するために財務諸表の勘定科目へタグ付けを行うなどのe-filingならではの対応が必要となり、企業にとって負担が増える面もあります。
弊社でも2024/25年度よりe-filingの対応を開始しておりますので、申告に不安がある場合や、義務化までに備えておきたい方は、弊社へお問い合わせ下さい。
参考リンク先:
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
免責事項:
- 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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