【最終回】2026年度版増値税法の影響を徹底解説:増値税法施行前後の税務施策の比較分析
皆様、こんにちは、青葉広州事務所です。
2026年1月1日から『中華人民共和国増値税法』(以下「増値税法」)とその実施条例である『中華人民共和国増値税法実施条例』(以下「条例」)が施行されることになりました。そこで、本シリーズを通して、具体的に何が変わり、企業にどのような影響があるのか詳しく解説してまいります。
今回は、本シリーズの四回目・最終回の記事として、「増値税法施行前後の税務施策の比較分析」をテーマに
- 増値税の優遇政策の経過措置に関して
- 輸出業務の増値税および消費税に関して
という点に焦点を当ててご説明します。増値税法に対してお悩みを抱えられている企業様のお役に立てれば幸いです。ぜひ、ご一読ください。
2026年度増値税法シリーズ記事一覧:
第1回: 2026年度版増値税法の影響を徹底解説:まずは電気通信サービスと長期資産について
第2回: 2026年度版増値税法の影響を徹底解説:納税義務が発生するタイミング/1つの取引に複数の税率が含まれる場合の適用方法
増値税優遇政策の経過措置に関して
| 比較内容 | 増値税の課税最低限基準 | 政策の有効期限 |
| 増値税法及び関連政策施行前 | 増値税の課税最低限基準の適用範囲は個人に限られる。 増値税の課税最低限の幅は以下の通り定められている。(一)物品を販売する場合、月間売上高5,000元~2万元とする。 (二)課税対象となるサービスを販売する場合、月間売上高5,000元~2万元とする。 (三)その都度納税する場合、回(日)ごとの売上高300~500元とする。 |
大部分の政策に、明確な有効期限が設けられていない。 |
| 増値税法及び関連政策施行後 | 2026年1月1日から2027年12月31日まで、小規模納税者が課税対象取引を行う場合の課税最低限基準は以下の通りとする。
(一)1ヶ月を課税期間とする場合、課税最低下限は月間売上高10万元とする。1四半期を課税期間とする場合、課税最低限は四半期売上高30万元とする。 |
一部の免税政策の有効期限が長期的だと示されていることを除き、免税・簡易課税及び差額課税に関する政策の大部分の有効期限は、2027年12月31日である。 |
主な変更点:
1.増値税の課税最低下限基準の適用対象範囲の拡大:
「個人」から全ての小規模納税者(企業形態の小規模納税者を含む)へと拡大された。
2.その都度納税する場合の課税最低限基準が倍増:
売上高「300~500元」から「1000元」に引き上げられた。より多くの一時的・小規模な事業活動(個人の臨時的な労務提供や少額販売など)が課税対象外となり、個人の税負担を軽減する。
3.徴収管理基準の統一:
1日における複数取引に対し、「合算して税金計算する」ことを明確にし、自然人(個人事業者等)の特殊事業については、期間毎の基準を適用することにより、税務当局と納税者間の見解の相違を減らし、政策執行の一貫性を高める。
4.政策の有効期限:
適用可能な大部分の政策が、長期的な政策から経過措置的な政策へと変わる。
影響及び留意点
1.複数取引の合計額が課税最低下限基準かどうか:
自然人(個人事業者等)が1日以内に行った複数の取引に対し、金額を合算した上で課税最低下限基準に達するか否かを判断する必要がある。
2.税前控除の証憑と「小規模な零細事業」の該当可否
企業は、企業所得税において、取引先が法的に税務登記が必要ない事業者、または、小規模な零細事業を営む個人である場合、税務機関が代理発行したインボイス、または、受取証憑と内部証憑を組み合わせたものを税前控除の証憑とすることができる。
また、受取証憑には、受取事業者名、個人名・身分証番号、支出項目、受取金額等の必要情報を記載しなければならない。
なお、「小規模な零細事業」に該当するか否かは、個人の課税対象事業に係る売上高が、定められた課税最低限基準を超えているかにより判断される。そのため、増値税の課税最低下限基準が引き上げられたことにより、当該判断基準も連動して引き上げられる。
3.政策の有効期限:
適用可能な大部分の政策が、長期的な政策から経過措置的な政策へと変わるため、企業は、税負担の増加可能性を考慮することにおいて、今後の政策変動傾向に留意し、最新の政策を把握する必要がある。
輸出業務の増値税及び消費税政策に関して
| 増値税の輸出免税(還付)政策が
適用される輸出貨物 |
貿易企業の輸出貨物に
適用される免税政策 |
輸出免税(還付)の申告期限 | |
| 増値税法及び関連政策施行前 | 輸出貨物とは、税関に通関申告を行い、実際に輸出され、かつ海外の事業者又は個人に販売される貨物をいい、自営輸出貨物と委託輸出貨物の2種類に分けている。 | 貿易企業の
を取得した貨物については、増値税の免税政策が適用される。 |
1. 企業が当月に輸出した貨物については、翌月の増値税納税申告期限内に、所轄税務機関へ増値税納税申告、免抵退税[1]に関する申告及び消費税免税申告を行わなければならない。
企業は、貨物の輸出通関日(輸出貨物通関申告書〈輸出前金還付専用〉に記載された輸出年月日をいう、以下同じ。)の翌月から翌年4月30日までの間の各増値税納税申告期限内に関係書類を揃え、所轄税務機関へ輸出貨物に係る増値税免抵退税及び消費税の還付を申告しなければならない。
2. 納税者が、輸出貨物・役務により、クロスボーダー課税行為に対し、期限内に輸出免税(還付)の申告又は「代理輸出貨物証明書」の発行を行わなかった場合、免税(還付)に必要な証憑及び関連電子情報が揃った後、輸出免税(還付)の申告を行うことができる。 期限内に外国為替の受取又は受取不能手続きを行わなかった場合、外国為替の受取又は受取不能手続きを行った後、免税(還付)の申告を行うことができる。 |
| 増値税法及び関連政策施行後 | 増値税の輸出免税(還付)政策が適用される輸出貨物は、特定の状況を除き、以下の条件をすべて同時に満たさなければならない。
(1)海外の事業者又は個人に販売されていること、 |
貿易企業が輸出する貨物について、以下のいずれかの合法的かつ有効な仕入証憑を取得した場合:
① 普通発票 |
納税者は、規定の期限内に所轄税務機関へ増値税の輸出免税(還付)、免税及び課税の申告、並びに消費税の輸出免税(還付)、免税及び課税の申告を行わなければならない。主に2つの期限が設定されている。
一つ目は、翌年4月30日である。政策の規定により、貨物の輸出通関後、翌年4月30日までの間に、貿易企業は輸出免税(還付)を申告することができ、その申告の際に、外国為替受取に関する資料を提出しなくとも申告可能である。ただし、翌年4月30日まで期限通りに外国為替を受取らなければならない。翌年4月30日までに外国為替を受取れなかった場合、貿易企業は既に受け取った輸出税還付金を返還しなければならない。
二つ目は、輸出業務発生後36ヶ月以内である。納税者が貨物を輸出し、又はクロスボーダーでのサービス(国外での修理・補修サービスを除く)若しくは無形資産を販売する場合、外国為替受取に関する資料を収集し、輸出業務発生後36ヶ月以内に輸出免税(還付)を申告しなければならない。36ヶ月を超えても輸出免税(還付)を申告しない場合、輸出課税政策(国内販売とみなして課税)が適用される。 |
[1] 免抵退税:中国の増値税輸出退税制度における特有の用語で、「免税・差引控除・還付」を組み合わせた制度を指します。
主な変更点:
1.増値税の輸出免税(還付)政策が適用される輸出貨物
輸出業務について、免税(還付)政策を適用するには、4つの基本条件をすべて同時に満たす必要があることが明確化された。
2.貿易企業の輸出貨物に適用される免税政策
貿易企業が免税政策を適用する際に、受入れ可能な仕入証憑の対象範囲が拡大された。従来は、増値税発票などの伝統的な証憑が中心でしたが、今は、競売事業者から購入した貨物の「競売成立確認書」や「資産再編関連書類」などが新たに追加された。
3.輸出免税(還付)の申告期限
従来の規定では、企業が期限内に輸出税還付を申告しなかった場合でも、免税(還付)に必要な証憑及び関連電子情報が揃った時点で、依然として輸出税還付の申告を行うことができた。つまり、翌年4月30日の締切を過ぎても、書類が揃っていれば理論上は事後申告が可能であり、申告期限に実質的な制限はなかった。
新規定では、輸出業務発生後36ヶ月以内という期限が追加され、この期限内に税還付を申告しなかった業務は、国内販売とみなして課税されることが明確化された。
影響及び留意点
1.増値税の輸出免税(還付)政策が適用される輸出貨物
輸出業務の真正性・コンプライアンス、及び関連書類・代金回収・期限の一貫性を確保する必要があります。また、4つの基本条件をすべて同時に満たすことができない場合、輸出税還付ができないことにご留意ください。
2.貿易企業の輸出貨物に適用される免税政策
貿易企業が免税政策を適用する際に、増值税発票などの従来の証憑を取得できない場合、規定に従って新たな種類の証憑を取得し、また、その真正性・有効性を確保する必要があります。
3.輸出免税(還付)の申告期限
貨物輸出後、速やかに輸出税還付の申告を完了し、36ヶ月を超えないように注意する必要があります。36ヶ月を超えると、国内販売とみなされて課税対象となり、税負担が増加することにご留意ください。
増値税の実務においては、各企業の状況によりケースバイケースでの対応が必要となる場合もございます。中国における増値税または関連事項につきましてご不明な点がございましたら、Aobaグループには経験豊富な税理士や弁護士が多数在籍しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
参考リンク先:
- 财政部 税务总局关于增值税进项税额抵扣等有关事项的公告
- 二.財政部、税務総局による増値税法施行後の増値税優遇政策の経過措置に関する公告(財政部、税務総局公告2026年第10号)
- 三. 財政部 税務総局による輸出業務の増値税及び消費税政策に関する公告(財政部 税務総局公告2026年第11号)
本記事の目的:
本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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