【第2回】2026年度版増値税法の影響を徹底解説:納税義務が発生するタイミング/1つの取引に複数の税率が含まれる場合の適用方法
皆様、こんにちは、青葉広州事務所です。
2026年1月1日から『中華人民共和国増値税法』(以下「増値税法」)とその実施条例である『中華人民共和国増値税法実施条例』(以下「条例」)が施行されることになりました。そこで、本シリーズを通して、具体的に何が変わり、企業にどのような影響があるのか詳しく解説してまいります。
今回は、本シリーズ二回目の記事として、
- 納税義務が発生するタイミング
- 1つの取引に複数の税率が含まれる場合の適用方法
という2つのテーマに焦点を当ててご説明します。増値税法に対してお悩みを抱えられている企業様のお役に立てれば幸いです。ぜひ、ご一読ください。
Contents
納税義務が発生するタイミングについて
| 増値税法及び関連文書施行前 | (一)納税者に課税行為が発生し、売上代金を回収、または売上代金の請求に関わる証憑を取得した当日。(発票を先に発行した場合、発票の発行日となる。)
(二)納税者が建築サービス、賃貸サービスを提供するにあたり、前受金方式を採用する場合、前受金の受領当日を納税義務発生時期とする。 |
| 増値税法及び関連文書施行後 | 1、「増値税法」に基づく増値税の納税義務を発生した時、以下の規定により確定する。
(一)課税取引の場合、納税義務発生時期は売上代金の回収が完了、または売上代金の請求に関わる証憑を取得した当日。(発票を先に発行した場合、発票の発行日となる。) (二)みなし課税取引の場合、納税義務発生時期はみなし課税取引の完了日である。 (三)輸入貨物の場合、納税義務発生時期は通関申告をして輸入した当日である。
2、納税者がサービスの販売において、代金を前受金として受領した後、分割または複数回に分けてサービスを提供する場合には、最初にサービスを提供した実際の開始日と契約で定められた日とのいずれか早い日をもって納税義務発生時期を確定する。納税者は受領した全代金について増値税の申告納付を行わなければならない。 |
一、主な変更点
新規定による主な変更点は以下となります。
〇 従前の政策では、サービスの提供に関して納税義務が発生するタイミングにおいては、発生主義に従い「課税行為が発生した時点」を基準としていました。(建築サービスおよび賃貸サービスが前受金の受領時点を基準に従う場合を除く)すなわち、発生主義に基づいていたため、会計上の収益認識のタイミングと基本的に一致していました。
〇 2026年1月1日以降の新政策では、増値税の納税義務が発生するタイミングが、この発生主義から現金主義に近い内容へと転換し、代金を一括で受領する場合、契約で定められたサービスの開始日または初回のサービス提供日に一括で申告・納税することになり、サービスの進捗に応じて分割納税することは認められなくなったのです。
事例別増値税計算方法
【ケース例①】
ある不動産管理会社(一般納税者、適用増値税税率:6%)が不動産のオーナーと管理サービス契約を締結した。
2026年度のサービス期間は1月1日から開始し、計12ヶ月間と定められている。オーナーは2026年1月20日に年間管理費12,720元(税込)を全額一括払いした。
旧政策:
当該不動産管理会社(以下、当社)は、発生主義に基づき前受金として受領した管理費をサービス期間全体(12ヶ月)に按分し、月次で段階的に増値税を申告。
★計算:当社の1月分に係る増値税税額=(12,720/12)/(1+6%)×6%=60元
新政策:
当社はサービス提供開始月(1月)において、受領した前受金の全額を一括で増値税申告する必要がある。
★計算:当社の1月分に係る増値税税額=12,720/(1+6%)×6%=720元
【ケース例②】
ある語学学校(一般納税者、教育サービス提供、適用増値税税率:6%)は、外国人学生1名と2026年度中級中国語コースの契約を締結した。
契約期間は2026年3月1日から2027年2月28日まで(合計12ヶ月)であり、当該学生は2026年2月15日にコース料金全額31,800元(税込)を一括で支払った。
旧政策:
当該学校はサービス提供期間に応じて収入を按分計上し、月次で増値税を申告。
★計算:当該学校の3月期の増値税税額=(31,800/12)/(1+6%)×6%=150元
新政策:
当該学校への入金日はサービス提供開始日より前だが、納税義務の発生時期はサービス提供開始日を基準とする。
つまり、中国語コースの授業が開始する3月に、受領した前受金全額に対して一括で増値税を申告する必要がある。
★計算:当該学校の3月期の増値税税額=31,800/(1+6%)×6%=1,800元
二、影響及び留意点
1、影響を受ける業種業態
上記のケース例のように、以下リストのような「先に代金を受け取り、後でサービスを提供する」という業態が多く見られる業種において、納税時期が著しく早まることになります。
- 不動産管理費
- 教育研修の授業料
- 動画・ソフトウェアの会員料
- ジムやマッサージのプリペイドカード
- 記帳代行・コンサル ティングサービスの前受金など。
2、前受金受領の申告方法
前受金の性質を持つサービス収入は、収入申告方法を適時調整し、一括納付に変更する必要があります。
旧政策:
仮に管理会社が年間管理費を一括で前受金として受領した場合、発票を発行しなければ、12か月に分けて毎月収益を認識し、毎月1か月分を納税することができる。
新政策:
2026年度以降、上述同様の状況において、発票の発行の有無にかかわらず、契約で定められたサービス開始日(例:1月1日)または最初の実際のサービス提供日のいずれか早い日に、受け取った年間管理費の全額を一括して申告・納付する必要がある。
3、納税者ステータスの登記変更リスク
この2026年度の新政策の特に留意すべき点の1つとして、納税者のステータスを転換しなければならないタイミングが、以下の通り根本的に変更された点であるといえます。
旧政策:
身分転換の基準値を超過した当月または翌月1日から一般納税者への登記を行い適用することが可能で、一定の「猶予期間」が存在した。
新政策:
一般納税者への転換日は、規定基準を超過した当月の1日となる。これは、売上高が基準を超過した月の初日に、納税者身分が自動的に遡って適用されることを意味する。そのため、納税者の登記手続きが完了したタイミングを基準としない。
このように新政策では、小規模納税者として登記している企業は、連続12か月または4四半期以内の営業期間における累積課税対象売上高が500万元を超えると、直ちに納税者のステータスを一般納税者へ登記変更しなければならなくなりました。そのため、売上高を常に注視し、基準額が超過していないか確認する必要があります。
4、会計上および各税務上認識される収入額の差異が発生
これまでとは違い、増値税上の収入の認識が会計上の発生主義ではない基準で認識されるため、増値税上の収入額、会計上の収入額、企業所得税の収入額の間で差異が発生することに注意する必要があります。
差異が大きい場合、企業は差異調整表の作成や、なぜ差異が発生したのか、その理由が説明された状況説明書の準備が必要となる可能性があります。(例:収入認識時期の差異、収入認識範囲の差異、みなし販売範囲の差異など)
1つの取引に複数の税率が含まれる場合の適用方法について
| 増値税法及び関連文書施行前 | 1、納税者が異なる税率の分類となる貨物、労務、サービス、無形資産・不動産販売に係る業務を兼業している場合、それぞれの売上高に対し異なる税率または徴税率を適用、計算しなければならない。区分計算しない場合、一番高い税率を適用する。
2、一つの販売行為が、サービスと貨物の両方に該当する場合、混合販売行為とする。事業者及び個人事業主が、貨物の生産、卸売り、小売りといった混合販売行為を行った場合、貨物販売に基づき増値税を徴収する。その他の事業者と個人事業主が混合販売行為を行った場合、サービスの販売に基づき増値税を徴収する。
3、納税者がプレハブ住宅、機械設備、鋼構造部品などの自家生産貨物を販売すると同時に、建築・設置サービスも提供する場合、これは『営業税から増値税への転換試行実施弁法』(財政税務部発〔2016〕36号)第40条に規定する混合販売行為には該当しないため、貨物と建築サービスの売上高をそれぞれ区分計算し、それぞれ異なる税率または徴収率を適用すべきである。
4、一般納税者が自社で生産した機械設備を販売すると同時に設置サービスを提供する場合、機械設備と設置サービスの売上高を別々に計算しなければならず、設置サービスは自社が提供する工事設備により簡易課税方法を選択して税金を計算することができる。
一般納税者が外注機械設備を販売すると同時に設置サービスを提供する場合、兼営の関連規定に従って、それぞれ機械設備と設置サービスの売上高を計算し、設置サービスは自社が提供する工事設備により簡易課税方法を選択して税金を計算することができる。
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| 増値税法及び関連文書施行後 |
一般納税者が以下の状況に該当する場合、課税取引の主要業務に応じた税率を適用するものとする。 (一)ソフトウェア製品の販売に伴い、ソフトウェアのインストール、メンテナンス、研修などのサービスを提供する場合、ソフトウェア製品の税率を適用する。 (二)プレハブ住宅、機械設備、鋼構造部材などの貨物の販売と同時に提供する設置サービスについては、貨物の税率を適用する。 (三)充電・交換業務における電気製品を販売すると同時に徴収される蓄電池の交換、測位(位置情報提供)、メンテナンスなどに関するサービス料については、電気製品の税率を適用する。 (四)交通機関の賃貸サービスを提供すると同時に徴収される情報技術等のサービス料については、賃貸サービスの税率を適用する。納税者が本条の前述に掲げる取引と類似する課税取引を行う場合についても、これに準じて執行する。
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一、主な変更点
増値税法は、納税者が 課税に関わる1 つの取引の中に複数の税率や徴収率が含まれている場合、適用税率、徴収率の判断は、当該課税取引の主要業務に基づいて行う必要があります。またこれは、単に売上高の比率や該当企業の主要業務により判断するのではなく、どの業務が顧客取引の実質的な目的であるかで判断することになります。
これを踏まえ、これに該当しそうな業務に係る税率適用規定を細分化し、1つの課税取引において2つ以上の税率に該当する典型的な販売事例を以下に列挙しております。これらに共通する基本原則としては「主要業務の高い税率に従う」という課税基準に従うとともに、本政策の規定を取り入れたものです。
【ケース例①】
ある企業が自社製造のプレハブ住宅、機械設備、鋼構造部品を1,000万元(税抜き)で販売し、同時に設置サービス200万元(税抜き)を提供した。
そのため、この取引の総売上高は1,200万元(税抜き)となる。
旧政策:
物品の増値税適用税率:13%、設置の増値税適用税率:9%として別々で計算される。
★計算:売上税額=1,000×13%+200×9%=148万元
新政策:
当該取引は一つの課税取引とし、物品販売が主要業務、設置は付属業務となるため、物品の適用税率:13%が売上総額に対して課税される。
★計算:売上税額=(1,000+200)×13%=156万元
変更点:政策変更後は、企業の増値税売上税額が8万元増加し、税負担が増加した。
【ケース例②】
あるソフトウェアテクノロジー会社(一般納税者・主にソフトウェアの開発・販売を営む)が、自社で開発した企業管理ソフトウェア製品を1,000万元(税抜き)で顧客に販売した。
またそれに付随する、ソフトウェアのインストール・デバッグサービスおよびその後1年間の技術メンテナンスおよび操作トレーニングの提供について、60万元(税抜き)で販売した。
そのためこの契約における総売上高は1,060万元(税抜き)となる。
旧政策:
ソフトウェア製品の適用税率:13%、インストール・保守・研修サービス業務の適用税率:6%として、別々で計算される。
★計算:増値税税額=1,000×13%+60×6%=133.6万元
新政策:
当該取引は一つの課税取引とし、ソフトウェア製品販売が主要業務、ソフトウェアインストール・保守・研修サービスは付属業務となるため、本取引にはソフトウェア製品の販売に対する13%の税率が総売上高に適用される。
★計算:増値税税額=1,060×13%=137.8万元
変更点:政策変更後は、企業の増値税売上税額は4.2万元増加し、税負担が増加した。
二、影響及び留意点
1、複数の課税取引が含まれていないか確認
企業は自社の業務の特性を考慮した上で、上記のケースのような販売業務が企業内に存在するかどうかを確認してみてください。もしも含まれている場合は、「一つの課税取引」(混合販売)と「二つ以上の課税取引」(兼営)を正確に区別し、取引の実態と目的に基づいて、「主要業務」及びその適用税率を決定しなければなりません。
「主要業務」を明確にする際は、単に売上高の割合のみに基づいて判断してはならないことに注意し、どの業務が顧客取引の実質的な目的であるかで判断する必要があります。
2、税費用増減の確認
自社の業務において、本施策の影響がある場合は、上述ケース例をご参考いただきながら、新旧政策における税負担を計算してみて、その差異における自社にかかる税費用の負担がどの程度になるか比較されることをご提案します。
増値税の実務においては、各企業の状況によりケースバイケースでの対応が必要となる場合もございます。中国における増値税または関連事項につきましてご不明な点がございましたら、Aobaグループには経験豊富な税理士や弁護士が多数在籍しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
参考リンク先:
本記事の目的:
本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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