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【ガイドブック】中国ビジネス(進出)ガイド

はじめに

中国は、古くから文化・文明が発達し、名実ともに世界有数の経済大国でした。また、シルクロードの歴史からもわかるように、世界の生産、交易の中心でもありましたが、19世紀以降、アヘン戦争などの度重なる戦争や内乱の結果、国力は次第に衰えていきます。

 

1949年10月1日、社会主義国家建設を掲げて中華人民共和国政府として再スタートしましたが、1950年から1980年までの30年間において、世界のGDP増加に占める中国の割合は、わずか1%の増加に留まるという苦しい状況が続きました。

 

1978年以降、鄧小平が唱えた「先富論」(先に豊かになれる者から先に豊かになれ)の下、「改革・開放」と呼ばれる対外経済開放政策が推進ににより、市場経済へと大転換を遂げ、これを機に、外国から中国に対する投資が活発化、中国の経済成長は著しく加速していきました。

 

さらに2001年、中国はWTO加盟を実現し、関税率の引き下げ、輸入時などの規制緩和が約定され、外国企業の中国進出や更なる中国投資の促進を生み出しました。また、2008年にオリンピック、2010年に万博がそれぞれ北京と上海にて開催され、関連施設やインフラ整備に伴う新たな投資を呼び込むこととなりました。

 

現在、中国の経済過熱・貿易摩擦・内外格差の問題が各所で噴出し始め、非常に困難な舵取りを強いられている状況の一方で、外商投資の規制緩和、香港を含めた大湾区政策や海南自由貿易港に関する計画など、将来的な発展を見通せる好材料も混在しており、引き続きビジネスチャンスがある場所であることは間違いありません。

 

 

中国進出(投資)の魅力

世界の工場と呼ばれていた中国は、今や世界の市場、さらには次世代イノベーションをけん引する国へと変貌を遂げたといっても過言ではないないかと思います。そんな中国に進出する理由に値る魅力について以下列挙してみます。

 

経済規模

中国の実質GDPの伸び率が2桁から1桁と減速の傾向である一方、毎年のGDPの増加額は減少しておらず、少しずつ伸び額が増加しています。また、世界のGDPに占める中国のシェアは拡大し続けており、中国のシェアは2010年の9.2%から、2015年には15.2%へと高まっています。2014年には、第三次産業の割合が第二次産業を超え、サービス産業が急成長しており中国の個人消費は、順調に増加しています。

 

ここで、弊社もオフィスを構えております広東省の経済規模の大きさ例として述べてみたいと思います。

広東省は深圳市や広州市を含めた二十一の都市の省です。

 

 

広東省の域内総生産は、中国全体の約11%を占め、その経済規模は中国の中で最大の省となります。一つの省でこれだけの規模を誇る中国の経済規模、市場の大きさを改めて実感させられます。

 

また広東省は、一帯一路政策の中枢と位置づけてられています。それは輸出入総額においても中国全体の4分の1を占め、こちらもソ規模は中国で最大の省となっています。(*内訳:深セン市と広州市の貿易額がそれぞれ全体の60%近くを占めている。)

 

人口ボーナス

中国の総人口約14億人の内、広東省の人口は日本の人口とほぼ同じ約1億1500万人で中国全体の8.2%を占めています。まさに人材の宝庫と言えますが、中国での従業員の就業の面において定着率が日本より遥かに低く、キャリアアップのために転職を繰り返す人材も多いのが現状です。よって、人材が数年で退職しても困らないような体制作りが慣用となります。近年は、特に広東省華南地域では、ホワイトカラーは募集できますが、製造作業員が募集しても集まりにくいという声も聞かれます。

 

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広東省の2019年域内総生産は前年比6.2増の107,671億元となり、初めて10兆元を超えており、その規模は韓国GDPに次ぐ世界第13(2019年ランキング)となっています。(*2020年上半期は新型コロナウィルス感染症の影響を受け、全国とともにマイナス成長に転じています。)

 

内需の増加 / Eコマースの増加

中国国内での販売、つまり内需の面からの広東省の経済規模ですが、まず内需は社会消費材小売総額といわれる、個人や家庭で使用するためのすべての消費財の購買総額を指標とします。

広東省の2019年社会消費財小売総額(内需)は前年同期比8.0%増の4兆2,664億元でしたが、2020年上半期においては新型コロナの影響で、14.0%減の1兆7,926億元に減少しています。

 

また広東省の社会商材小売額は中国全体の10%占めており、2019年度は前年度比8%の増加となっておりましたが、2020年度はやはりコロナの影響で、伸び率が、前年同期比14%減と大幅な減少となっております。

 

Eコマース

ただ、医薬品類、食品類、新聞雑誌類、日用品類の小売額は大幅増加しています。その要因の一つとして考えられるのは、Eコマースによる販売の増加です。広東省はもともとEコマースが盛んで、Eコマース小売総額は前年同期比25.1%増25,500億元となり、中国全体の24を占めています。

 

このEコマースによる売り上げが年々増加していることを象徴しているのが、毎年「独身の日」に行われている大規模なEコマースイベントです。(*中国では独身を意味する数字の「1」が4つ並ぶ11月11日は、「独身の日」と呼ばれている。)

 

年々売り上げが増加しており、2020年はコロナの影響もあり、11月1日のみではなく、1日から11日の11日間イベントが開催されましたが、その総売り上げは約12兆円に膨らんだそうです。日本のインターネット販売大手の年間販売額が3.9兆円ですから、このEコマース市場の大きさを実感させられます。

 

広東省は、もともと輸出型の産業が多かったということが背景にあり、ものづくりの基盤がもともとあり、その後内需の拡大や、内販への政策転換に伴い、急増しやすかったことが背景にあるといえるでしょう。

 

ここ数年は、チャイナ・プラスワンといわれる東南アジアの周辺諸国へ、コスト削減や政治リスクなどを理由に製造拠点を移される企業も多いものの、この経済規模、市場の大きさのみを考慮しただけでも、やはり魅力的であり、中国の内需を見据え、中国内需の発展に便乗する意義も十分あるかと思います。

 

 

 

保税区域の活用

保税区域は、中国国内に設置されている開発区域で、中国国外からこの区域へ搬入された貨物に対しては原則として課税(増値税や関税など)されない”保税”される区域です。この保税区域から中国国内へ搬出されるタイミングで通常輸入時の課税されます。

 

またいくつかの種類(保税区/物流園区/輸出加工区/保税港区など)に分かれており、それぞれ機能が違いますが、基本的にこの”保税”状態になるという点においては共通しています。

主な違いは、中国国内からこの保税区域へ搬出した際の”増値税の輸出還付”の取り扱いです。「物流園区/輸出加工区/保税港区」は、輸出とみなされ、完全に国外と同等の扱いとなるため、輸出還付の適応が可能となりますが、「保税区」は輸出扱いされないため、輸出還付は適応不可となるため、この点を注意する必要があるでしょう。

 

メリット:

保税区域は保税状態で在庫を保管できるため、主に商社、物流会社にメリットがあると言えます。なぜならば、保税区を通さず中国国外から国内へ一度に輸入してしまった場合、一度に課税されてしまいますが、保税区内を通し一旦保管し、中国国内に小出しにすることで、この税負担が一度に掛からないからです。

またもう一つの点は「再輸出」を簡単に行える点です。中国国内へ全て販売するとは限らない商品であれば、まずは輸入時の課税がかからない保税区域へ保管しておいて、中国ではなく別の国への販売することになれば、煩雑な通関手続きをふまず、容易な再輸出の手続きを行うことができます。

 

保税区の基本的な内容について知りたい方は、動画の基礎講座を是非ご覧ください。

保税区に関する基礎講座の動画へ移動する

 

 

大湾区(グレーターベイエリア)構想

 

大湾区(グレーターベイエリア)とは、香港(港)・マカオ(澳)・広東省(粤)珠江デルタの9都市(広州、深圳、東莞、恵州、仏山、江門、中山、珠海、肇慶を含む)を指し、大湾区構想とは、それらの地域を統合し、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京の世界3大ベイエリアのような世界的に重要な経済圏の1つになることを目指す地域発展計画のことです。

 

現在広東省では大小100以上の港が存在しますが、そのうちの深圳港(第4位)、広州港(第7位)の2つの港はm既に世界取引量ベスト15の中に入っていますし、また香港、マカオにも近い、珠江デルタの中心に位置されている広州南沙開発区は、、陸上道路網も発達しており、トヨタ自動車の所在地でもあるため、今後数年の取引量が更に増加していくことが予測されています。

 

 

一帯一路との相乗効果

それから、この大湾区構想は「一帯一路」計画との相乗的な経済効果が期待されています。「一帯一路」計画とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパへと続く“シルクロード経済ベルト”を指す「一帯」と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ“21世紀海上シルクロード”を指す「一路」、この両方を合わせ「一帯一路」と呼ばれています。

 

「一帯一路」計画とは、今後数十年かけて、これらの地域に道路や港湾、発電所、パイプライン、通信設備などインフラ投資を皮切りとして、金融、製造、EC、貿易、テクノロジーなど各種アウトバウンド投資を積極的に進め、当該経済圏における産業活性化および高度化を図っていくプログラムを指します。

 

この一帯一路計画と共に大湾区構想は、中国企業のみならず、日本企業を含めた外国企業にとっても巨大なビジネスチャンスが期待できるといっても過言ではありません。(*広東省、香港、マカオを合わせると、世界11位の大国ロシア(1,702,498百万USD)とほぼ同様のGDPレベルに達します。)

 

大湾区構想についての詳細はこちらのページをご参照ください。

 

 

ハイテク産業に対する優遇政策

中国はハイテク産業を発展させたいという意図があり、国家が認定するハイテク産業の進出に対しては、従来どおり優遇政策が認められています。

 

現在、広東省では深圳、東莞、広州、佛山、江門、中山、珠海、恵州等にハイテク産業開発区が設けられ、科技庁よりハイテク産業に認定されることにより、ハイテク産業開発区に進出が可能となり、各種優遇政策を享受することが可能となっています。

 

一般的に以下の産業がハイテク産業とみなされます。

 

  • IT産業(電子情報技術)
  • バイオテクノロジーおよび新医薬技術
  • 航空・宇宙飛行技術
  • 新素材技術
  • ハイテクサービス業(先進製造技術)
  • 新エネルギーおよび省エネ技術
  • 資源および環境技術
  • ハイテク技術を用いた伝統産業革新技術

 

2020年6月現在の、

・『ハイテク企業』に認定してもらうための申請条件、利点

・研究開発に対する補助金や援助金制度

・知的財産権に係る奨励金

 

など、新しい技術やイノーベーション産業に関する詳細は、以下の資料に記載しておりますのでご参照ください。

政府補助金・優遇項目の紹介

(*当資料は、ハイテク産業についてのみではなく、新型コロナ関連の税務優遇措置についても記載しています。)

 

 

中国進出の組織形態について

 

法人形態

中国国外からの投資者が、中国進出する場合にとる法人形態は主に3種類あります。

 

独資企業

独資企業とは外国資本が100%の企業形態です。意思決定を外国投資者独自で行うことが可能です。近年、各種市場の開放により独資形態での進出に対する制限も緩和されています。よって、合資・合作企業形態に比べ中国側企業との軋轢が少ない独資企業の形態で中国に進出される企業が多数となっています。

 

ただ、中国の国内市場の開拓や企業内のすべての管理を独自で行う必要があり、特にマーケティング面で、優位性を発揮できていない企業もいます。

 

 

中外合資企業(中外合弁企業)

中外合資企業とは、外国投資者(以下、外国側)と中国投資者(以下、中国側)との合弁企業です。

 

各種市場の開放によりこの形態での進出は非常に少なくなってきました。実務を行う上で、中国側との問題が発生するケースも多く、相手先が信頼できるパートナーになり得るか慎重に判断する必要があります。

 

一方、中国側ゆえに獲得できるプロジェクト、コネクションもありますので、マーケティング面を中方に任せて、外国側は、技術、ノウハウ、商材の提供というモデルで成功している企業もあります。

 

なお、技術などの無形資産で出資する場合は、双方協議により価値を決定することができますが、中国側が国営企業である場合は、基本的に資産評価会社による評価が必要になります。

 

 

中外合作企業

中外合作企業とは、パートナーシップ性の企業形態で、法人型合作企業と非法人型合作企業(各出資者が合作契約に基づき経営・リスク・利益配分・その他の条件を取り決め事業を行います)があります。

 

中国側と外国側の共同事業で、法人格のある企業と法人格のない企業の設立を選択できるのが特徴です。華南地域の一部の地域では、来料加工から独資への切り替えの際に、郷鎮側の要請により合作企業の形態を余儀なくされるケースが散見されています。2011年以降はこの形態は比較的少なくなりました。

 

 

非法人形態

日本企業など海外の企業が中国国内に設立する法人以外の国内機構の形態です。

 

分公司(支店)

分公司は、日本でいう支店に該当し、独立した法人ではなく、本社の一部として看做されます。ただ独立採算組織でもあるため、本社の商品・製品の販売が可能であり、契約締結・決済・領収書の発行等の営業活動に付随する活動を行うことができます。

 

また、分公司には経営性分公司と非経営性分公司の2つの形態があります。経営性分公司は、発票の発行が認められ、商活動(商品売買、サービス提供、生産活動等)を行うことが可能ですが、非経営性では商活動を行うことができず、連絡業務等に活動が制限されています。非経営性分公司でも、人材の雇用、社会保険の納付、外国人のビザの取得は可能です。なお、地域によっては、非経営性分公司の設立が許可されにくい場所もあります。

 

常駐代表処(駐在員事務所)

代表処は、非独立採算の組織であり、本社の営業活動の為の連絡業務等に活動が制限されています。代表処は、開設が容易で、経理処理も極めて容易です。中国で調査業務のみを行う、或いは本格進出をする前の段階で開設されるケースが多いです。

 

代表処に対しては、経費課税方式が採用されており、 [経費÷(1-看做し利益率 )]×みなし利益率×25%の計算式にて企業所得税が課税されることになります。商談のチャンスがあっても、販売行為を行えないこと、また、売上が無い中で税額が常に発生することが、代表所(駐在員事務所)のデメリットと言えます。なお、中国に代表処を設立する条件として、海外企業が設立されて2年以上であることが求められます。

 

 

 

※(中国企業のみ)弁事所(出張所)

弁事所は、中国国内企業が、中国国内の登記地以外の地域でのオフィス(営業所)として、2006年以前は、登記が義務付けられていましたが、2006年前半より登記ができなくなりました。よって、現在は登記なしで開設することが可能となっております。あくまで、補助的な組織としての位置づけであり、営業行為を行うことは禁じられており、また、銀行口座の開設、外国籍社員の就業許可も弁事所の所在地で行うことはできません。

 

登記ができないため、弁事処として人材の雇用、その他の契約が締結できないというデメリットもあります。また、税金や社会保険を現地で納付しないため、地域当局からも歓迎されない存在ということになります。よって、一般的に、正規の拠点を開設する前の臨時的な拠点という位置づけとなります。

 

 

業種別・日系企業の進出状況および規制

製造業

一部の業界(電信インフラ、自動車生産の最終工程等々)に関しては、外資に対する制限があります。消防検収(レンタル工場の場合は通常登記済み)、環境審査が必要となります。環境を汚染する業種の場合は、環境審査に2ヶ月ほど掛かることもあります。

 

また、環境に著しい悪影響を与える恐れのある物質を扱う場合は認可が下りない可能性があります。必要となる資本金の金額は、土地面積の広さ、生産設備の規模、予定採用従業員数等の要素により大きく異なります。設立には、※1ヶ月半~2ヶ月の期間を要します(内装、設備の設置、環境審査の期間は含みません)。

 

 

貿易会社

貿易会社の設立のハードルは非常に低くなりました。進出の最初の形態として、この形で進出される企業が増えています。営業範囲に輸出入を含めた場合は、輸出入を行うことが可能です(北京など、一部の地域では、「対外貿易経営者届出」が必要となります)。設立には、※1ヶ月~1ヶ月半以上の期間を要します。

 

 

サービス会社

業界によっては、外資独資での設立が制限されています。設立には、※1ヶ月~1ヶ月半以上の期間を要します。

 

 

飲食店

飲食店サービス許可証、環境審査、消防検収が必要となります。設立には、設立に必要な期間は、1ヶ月~1ヶ月半となります(※飲食店サービス許可証、環境審査、消防検収等に要する時間は含みません)。

 

 

※中国国務院が公布した『五証合一、一照一号登記制度改を加速促進する通知』(国弁法[2016]53号)により、2016年10月1日から、①営業許可証、②組織機構番号証、③国税・地税税務登記証、④社会保険登記証、⑤統計登記証が統合管理されることになり、会社設立に要する期間が、以前と比較し大幅に短縮されています。

 

 

中国国外への配当に関して

 

中国国外への配当は、企業所得税の確定申告終了後、董事会決議を経て実施いされることになります。ただし、過年度損失の補填、及び法定積立金(準備基金)の積み立てが完了していることが前提となります。(*※準備基金:税引き後利益の10%以上を、累計額が資本金の50%に達するまで積み立てる必要がある。)

 

基本的には、期末配当のみとなりますが、経営状態が良好で、多額の留保利益がある場合は、税務局の承認を経た上で、税引後未処分利益の期中配当も認められます。日本へ配当する場合、配当金額に対して10%の企業所得税を源泉納税する必要があります。(*香港に配当する場合は、一定の条件を満たし税務局の許可が降りた場合、10%ではなく5%の優遇税率を適応することができます。)

 

 

 

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