2026/27年度香港財政予算案及び今後の展望
- 公開日 2026.02.25 | ニュースレター 税法・税務関連 資料 - ダウンロード 香港
2026年2月25日、香港政府より2026/2027年度(2026年4月1日~2027年3月31日)の財政予算案が発表されました。同案内容の概要速報及び今後の展望・見解については、以下の通りとなります。
Contents
概況
2026年2月25日、香港財務長官の陳茂波(ポール・チャン)氏が、就任以来10度目となる財政予算案の演説を立法会にて行った。
2025年の香港経済は、回復力を見せ堅調に推移し、実質GDP成長率は2024年と比べて3.5%となった。これは世界的な景気不安、地政学的な緊張、度重なる金利変動、消費パターンの変化など、外部の大きな課題に直面しながら達成されたものである。
対外貿易と金融活動は、依然として香港経済の重要な成長エンジンであり、力強い地域需要と深い資本市場に支えられている。株式市場、銀行業、資産運用、オフショア人民元ビジネスは、香港が国際金融ハブとしての地位を維持する上で中核的な役割を果たし続けている。
今後の見通しとして、外部環境は依然厳しい状況が続くと予測される。特に、米国新政権の動向が香港経済の展望に重大な影響を与える可能性がある。米国政府が関税を大幅に引き上げた場合、国際貿易や投資フローに深刻な混乱が生じ、他国の経済圏の対抗措置を引き起こすことが予想される。貿易摩擦の激化は、香港の輸出、特に中国本土から米国向けの再輸出に大きな影響を及ぼす可能性がある。
香港域内においては、個人消費と観光業が徐々に回復している。住宅不動産市場は、市場心理が全般的に好転し安定傾向である一方で、非住宅不動産市場は依然として低迷している。2025年のインフレ率は緩やかに推移している。消費者物価指数の上昇率は1.1%となり、2024年と同じ結果となった。2025年の失業率は3.8% に上昇し、2024年の3.1%をわずかに上回ったが労働市場は軟化傾向を示している。
2026/27年度の財政予算黒字は221億香港ドルに上ると見込まれ、当初の赤字予測である670億香港ドルと比べて大きく改善される見込みである。
今後の経済展望は、世界情勢、金利動向、中国本土の成長に左右されることが予測される。香港経済には回復の兆しが見られるものの、香港政府は近年の不安定な世界経済環境に備えるため、引き続きより慎重な財政運営を行う方針である。こうした背景を踏まえ、本予算案では以下の救済策を提示している
予算案ハイライト
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財政・税務優遇政策案 |
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1 |
2025/26年度の法人税、給与所得税、その他個人所得税について、HKD3,000を上限として100%減税する |
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2 |
2026/27年度最初の第2四半期までにおいて、住宅用不動産および非住宅用不動産の固定資産税(レート)をHKD500を上限として免除する |
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3 |
1億香港ドル以上の住宅不動産取引に対する印紙税率を4.25%から6.5%に引き上げる |
| 以下2026/27年課税年度から開始: | |
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4 |
基礎控除および一人親控除をHKD132,000からHKD145,000に引き上げる |
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5 |
配偶者控除を、HKD264,000からHKD290,000に引き上げる |
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6 |
子女控除および追加子女控除を、HKD130,000からHKD140,000に引き上げる |
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7 |
60歳以上の扶養親または祖父母に対する扶養控除をHKD50,000からHKD55,000に引き上げる これらの親・祖父母と同居している納税者の追加控除をHKD50,000からHKD55,000に引き上げる |
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8 |
55〜59歳の扶養親または祖父母に対する扶養控除を、HKD25,000からHKD27,500に引き上げる これらの親・祖父母と同居している納税者の追加控除をHKD25,000からHKD27,500に引き上げる |
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9 |
高齢者住宅介護費の控除上限をHKD100,000からHKD110,000に引き上げる |
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長期的発展のための政策 |
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1 |
北部都会区に位置する河套合作区香港園区および新田科技城(新田テクノポール)の開発に計200億香港ドルを投じ、イノベーション・テクノロジー(I&T)の発展を加速する 産業変革を促進するため、AI+産業発展戦略委員会を設置する |
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2 |
本年よりファミリーオフィスおよびファンド税制を強化し、REIT(不動産投資信託)の非公開化を可能にする法整備を実施 来年には、上場を目指すREITに非住宅物件を移転する際の印紙税を免除する法改正を実施予定 |
新商業税務ポータルの導入およびデジタルコンプライアンス要件について
香港税務局(以下「IRD」)は、2025年7月22日に新たな税務ポータル(Tax Portals)を正式に導入した。これらは、個人税務ポータル(Individual Tax Portal、以下「ITP」)、商業税務ポータル(Business Tax Portal、以下「BTP」)および税務代行者ポータル(Tax Representative Portal、以下「TRP」)の3つのポータルで構成されている。このうち、BTPは企業が特定の税務および事業手続きを処理するための公式マルチユーザープラットフォームである。香港における税務管理のデジタル化が進んでおり、特定の税務・事業関連手続きはBTPアカウントを通じてのみ行うことができる。本ニュースレターでは、BTPアカウントの中心的役割、設定プロセス、そして税務コンプライアンスにおける主要な利用用途についてまとめる。
ITP および BTP(ユーザーアカウントおよび商業アカウント)の登録
ポータルの利用には事前のアカウント登録が必要であり、各ポータルごとに登録要件が異なる。まずBTPアカウントを登録するためには、ITPアカウントの登録が前提条件となる。ITPアカウントの登録では、セキュリティおよび本人確認のため、個人情報(身分証明書 例:香港IDカードまたはパスポート、連絡先情報、住所証明など)の提出が必要である。
BTPアカウントの登録は 2段階のプロセスで行われる。第1段階として、事業の責任者(Responsible Person、以下「RP」)は、専用のBTPユーザーアカウントに登録し、事業を追加する必要がある。法人の場合、RPは取締役または会社秘書役(Company secretary)の資格を有する自然人でなければならない。BTP上で利用可能なオンラインサービスにアクセスするために、RPは自身をBTPの管理者(Administrator)として任命し、BTP商業アカウントを開設する必要がある。IRDよりBTPアカウント管理者の任命が承認されると、BTP商業アカウントの登録が完了する。その後、RPは他のBTP 管理者(Administrators)や、アクセスレベルの異なる認可ユーザー(Authorized Users)を任命することができる。各ユーザーは、自身のBTPユーザーアカウントでログインすることで、BTPオンラインサービスにアクセスができる。
ITPおよびBTPユーザーアカウントとBTP商業アカウント登録手順は、以下の通りである:
詳細情報については、以下IRD公式ウェブサイトを参照
・ITP / BTP / TRP の一般情報 https://www.ird.gov.hk/eng/ese/etax.htm
BTPによる税務手続きの義務化
香港政府は税務管理のデジタル化を段階的に実施しており、特定の税務手続きについては、BTPを通じて完了する必要がある。こういった税務手続き変更の影響を受ける企業は、コンプライアンスを継続的に確保するために、BTP商業アカウントを早期に登録することが推奨される。
a) 中国本土関連の税務居民証明書(以下「CORS」)のデジタル発行
中国本土との包括的二重課税防止協定に関連した税務居民証明書(CORS)の発行は、2025年11月10日以降デジタル化されている。申請者(個人または法人)は、紙による申請書を税務局(IRD)の租税条約部門へ提出、またはITP、BTP、TRPを通じてオンラインで申請することができる。しかし、香港当局は中国本土に関するCORSについては、申請承認後デジタル版のみ発行している。一方で、中国本土以外の法域に関する申請については、従来どおり紙のCORSが郵送により発行される。このため、該当するCORSの申請者は、申請前にITPまたはBTP商業アカウントを登録することが推奨される。
b) 対象MNEグループの法人税申告書の電子申告
電子申告(e-filing)義務化の第1段階として、過去4会計年度のうち少なくとも2会計年度で、年間連結総収入額が7.5億ユーロ以上である多国籍企業グループ(以下「対象 MNEグループ」)の企業は、法人税申告書の電子申告が義務付けられている。電子申告の義務化は、2025年4月1日以降に開始する課税年度(2025/26課税年度以降)に適用され、2025年1月1日以降に開始する最終親会社(以下、「UPE」)の会計年度も含まれる。
一般的に会計年度とは、対象MNEグループのUPEが連結財務諸表を作成する会計期間を指す。対象MNEグループの企業は、2025/26年度以降、法人税申告書と併せて税金計算書、監査済財務諸表等の関連資料を、完全電子形式で提出することが必要である。
特に、総収入が500万香港ドルを超える対象MNE グループの企業は、従来の紙での法人税申告書に記載すべき情報を提供するだけでなく、BTPを通して監査済財務諸表および税金計算書の財務情報・税務情報、または開示情報をタグ付けしてiXBRL形式で提出する必要があり、準備に追加的な作業負担が生じる。
c) 対象 MNE グループのトップアップ税通知およびトップアップ税申告
香港税務(改正)(多国籍企業グループに対するミニマム税)条例法案2025におけるグローバルミニマム課税および香港ミニマムトップアップ税(以下「トップアップ税」)を導入するために、2026年1月19日にPillar Two ポータルの第1段階が発表された。Pillar Two ポータル は BTPの拡張部分であり、トップアップ税通知書、トップアップ税申告書の提出、トップアップ税査定通知書の閲覧を行うために設計されている。BTPに登録後、対象 MNE グループの企業はBTPから直接Pillar Twoポータルにアクセスする事ができる。
トップアップ税申告前の税務管理および識別目的として、各対象MNEグループ、HK単独合弁事業体、または合弁事業体グループは、Pillar Twoポータルにアクセスを行いトップアップ税通知の作成および提出を行うために、固有識別グループコードを取得する申請をIRDに行わなければならない。特に、企業が香港単独合弁事業体、または対象 MNE グループの合弁事業体グループに属する香港企業である場合、トップアップ税申告において香港単独合弁事業体または合弁事業体グループに割り当てられたJV コードの提供が求められる。MNE グループコードや JV コードの発行には時間を要するため、対象MNEグループ、香港単独合弁事業体または合弁事業体グループの関連企業は、トップアップ税通知書提出の遅延を避けるために早期に申請することが推奨される。
各対象MNEグループの企業は、Pillar Twoポータルを通じてトップアップ税通知書およびトップアップ税申告書を電子形式で提出する必要がある。トップアップ税通知書の提出期限は会計年度末から6ヶ月以内、トップアップ税申告書の提出期限は会計年度末から15ヶ月以内である。特に、初年度の移行期間については、提出期限が18ヶ月迄延長される。国別報告書(CbC)通知および申告と同様に、対象 MNE グループの香港構成企業は、1社を選択(指定の現地企業)し、その企業が香港税務局にトップアップ税申告書を提出することで、他の香港構成企業の申告義務を免除することができる。
香港の対象MNE企業で、最終親会社の会計年度末日が2025年12月31日である場合の申告期限例は以下の通りである。
Pillar Twoポータルに関する詳細情報は、以下香港税務局(IRD)のWebサイトより参照可能:
・Pillar Two ポータルリソースセンター https://www.ird.gov.hk/eng/p2portal/resources.htm#userguides
総括
香港の税務環境は、新たな税務ポータルなどのデジタル化の取り組みや、Pillar Twoに基づくグローバルミニマム課税制度の導入により、大きく変容しつつある。これらの変化は、特に対象MNEグループに新たなコンプライアンス義務を課すものであり、慎重かつ計画的な対応が要求される。企業は、今後の制度改正の動向に常に注意を払い、必要なポータル登録を速やかに完了するとともに、専門の税務アドバイザーに相談することで、進化する規制要件に的確に対応していくことが重要となる。
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