【第3回】仕入税額控除関連及び資産再編に係る増値税
皆様、こんにちは、青葉広州事務所です。
2026年1月1日から『中華人民共和国増値税法』(以下「増値税法」)とその実施条例である『中華人民共和国増値税法実施条例』(以下「条例」)が施行されることになりました。そこで、本シリーズを通して、具体的に何が変わり、企業にどのような影響があるのか詳しく解説してまいります。
今回は、本シリーズの三回目の記事として、「仕入税額控除関連、及び資産再編に係る増値税」をテーマに
- 国内旅客輸送サービスの購入に係る仕入税額控除
- 仕入税額控除取消の計算
- 納税事業者の資産再編に係る増値税
という3点に焦点を当ててご説明します。増値税法に対してお悩みを抱えられている企業様のお役に立てれば幸いです。ぜひ、ご一読ください。
2026年度増値税法シリーズ記事一覧:
第1回: 2026年度版増値税法の影響を徹底解説:まずは電気通信サービスと長期資産について
第2回: 2026年度版増値税法の影響を徹底解説:納税義務が発生するタイミング/1つの取引に複数の税率が含まれる場合の適用方法
Contents
国内旅客輸送サービスの購入に係る仕入税額控除
| 増値税法及び関連文書施行前 | 納税者が国内の旅客輸送サービスを購入した場合、その仕入税額は売上税額から控除することが認められる。
(一)納税者が増値税専用発票を取得していない場合は、暫定的に以下の規定に従い仕入税額を確定するものとする。 1.増値税電子普通発票を取得した場合は、当該発票に記載された税額とする。 2.旅客情報が記載された航空運輸電子航空券日程表を取得した場合は、以下の計算式により仕入税額を計算する: ★航空旅客輸送仕入税額 =(運賃+ 燃油サーチャージ)÷(1 + 9%)× 9% 3.旅客情報が記載された鉄道乗車券を取得した場合は、以下の計算式により仕入税額を計算する: ★鉄道旅客輸送仕入税額 = 券面金額 ÷(1 + 9%)× 9% 4.旅客情報が記載された道路、水路等のその他の乗車券・乗船券を取得した場合は、以下の計算式により仕入税額を計算する: ★道路·水路等その他の旅客輸送仕入税額= 券面金額÷(1+3%)×3% |
| 増値税法及び関連文書施行後 | 一般納税者が国内旅客輸送サービスを購入する場合、以下の規定に従い売上税額から控除可能な仕入税額を確定する。(増値税専用発票を取得した場合を除く)
1. 電子発票(鉄道電子乗車券)、電子発票(航空運送電子航空券日程表)を取得した場合、発票に記載または含まれる増値税額とする。 2. 旅客情報が記載された道路、水路等のその他の乗車券・乗船券を取得した場合は、以下の計算式により仕入税額を計算する。 ★道路·水路等その他の旅客輸送に係る控除可能仕入税額=券面金額÷(1+3%)×3% |
一、主な変更点
2026年以降、鉄道および航空の電子発票(電子乗車券・電子航空券)は、発票に記載された税額に基づいて仕入税額控除を行う方式に統一され、従来行われていた、紙の乗車券や航空券と日程表による計算による税額控除という方法が廃止されました。
また、今回の改正により、乗車券や航空券の提出が必要となったため、記載されている旅客が会社の従業員もしくは派遣社員ではない日本からの出張者などであった場合、これらの交通費については仕入税額の控除ができなくなりました。
変更前でも、本来であれば中国の現地子会社との間に雇用関係または派遣契約がない人は、これらの交通費の仕入税額の控除はできませんでしたが、中国国外在住の日本人が出張で中国に来た場合、出張者の名前が記載された乗車券や航空券などを提出せず、発票に記載された税額を記入するだけ、という方法で出張者の交通費も仕入税額の控除することが出来ていたため、この方法を用いる方も多かったかと思います。
二、留意点
配車サービス等の発票について、専用発票を取得できなかった場合でも、普通発票を取得していれば、依然として控除が可能です。ただし、発票の記載内容については、従業員の身分情報を明記するよう留意する必要があります。
そのため、企業が配車サービスを利用して普通発票を発行する際には、乗車人の身分情報を必ず記載するようご留意ください。もし従業員の身分情報が記載されていない場合、リスクを低減する観点から、控除を行わないことをお勧めいたします。
仕入税額控除取消の計算
| 増値税法及び関連文書施行前 |
一般税額査定を適用する納税者が、簡易税額査定を適用するプロジェクトや増値税免除プロジェクトについても兼営しているため、控除できない仕入税額の区分ができない場合、以下の計算式により控除できない仕入税額を算出する。
★控除できない仕入税額 = 当期において区分できない全仕入税額 × (当期の簡易税額査定を適用するプロジェクトの売上高 + 増値税免除プロジェクトの売上高)÷ 当期の総売上高
所轄稅務機関は、上記の計算式に基づき、年度データを用いて控除できない仕入税額について精算を行うことができる。
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| 増値税法及び関連文書施行後 |
一般納税者が、簡易税額査定を適用するプロジェクト、増値税免除プロジェクト、及び控除不可の非課税対象取引に使用するための、貨物(固定資産を除く)やサービスを購入し、控除できない仕入税額の区分ができない場合、以下の計算式により当期の控除できない仕入税額を算出する。
★当期控除できない仕入税額 = 当期区分できない全仕入税額 × (当期の簡易税額査定を適用するプロジェクトの売上高+ 増値税免除プロジェクトの売上高 + 当期の全非課税対象取引収入) ÷ (当期の総売上高 + 当期の全非課税対象取引収入)
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*仕入税額控除取消とは:
一度控除した仕入税額を、その後、非課税用途への転用などにより控除対象外となった場合に、その額を控除額から差し引く(または追加納付する)処理を指す。
一、主な変更点
新規定では、「控除できない仕入税額」の対象範囲が、従来の「簡易税額査定プロジェクト、増値税免除プロジェクト」から、「簡易税額査定プロジェクト、増値税免除プロジェクト、及び控除不可の非課税対象取引」に拡大されました。それと同時に、計算式における収入の分母にも「非課税対象取引収入」が含まれることになりました。
二、留意点
企業は、「非課税対象取引」(非経営活動や課税不要取引など)の範囲を正確に区分する必要があります。
旧法规と比較すると、新法规では分子と分母(分子<分母)の両方に「当期の全非課税対象取引収入」が追加されました。これにより、計算式の分数値が増加することとなり、その結果、企業が計算する仕入税額控除の取消額が増加し、控除可能な仕入税額が少なくなり、企業の税負担が増大することになります。
納税事業者の資産再編に係る増値税
| 増値税法及び関連文書施行前 |
納税事業者が資産再編の過程において、合併、分割、売却、交換等の方法により、全部または一部の有形資産及びこれに関連する債権、負債、人材を併せて他の企業または個人に譲渡する行為は、増値税の課税対象範囲に含まれない。その際に関連する貨物の譲渡については、増値税を課さない。
資産再編の過程において、合併、分割、売却、交換等の方法により、全部または一部の有形資産及びこれに関連する債権、負債、人材を併せて他の企業または個人に譲渡する行為に含まれる不動産、土地使用権の譲渡について、増値税を課さない。
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| 増値税法及び関連文書施行後 |
納税事業者が合併、分割、売却、交換等の方法により資産再編を実施し、かつ以下の条件をすべて満たす場合は、増値税の課税対象取引には該当せず、また増値税法施行条例第二十二条に規定する控除不可の非課税対象取引にも該当しないものとする。
これに伴う貨物、金融商品、無形資産、不動産(以下、総称して「資産」という)の譲渡については、増値税を課さず、対応する仕入税額は規定に従い売上税額から控除することができる。
1. 資産再編の対象は、比較的独立して運営可能な営業業務でなければならない。 2. 納税事業者が資産再編を実施する際は、全部または一部の資産に関連する債権、負債および従業員とともに包括的な資産パッケージを構成し、一括して譲渡しなければならない。資産パッケージには、資産、債権、負債および従業員が同時に含まれていなければならない。 3. 資産再編は、合理的な商業目的を有し、かつ増値税の納付税额の減少、免除、先送り、または前倒し還付、過大な還付を主たる目的とするものであってはならない。 4. 資産再編の譲渡側が一般納税者に属する場合、譲受側も一般納税者に属さなければならない。
納税事業者が、上記の資産再編の実施により合併され、税务登記の抹消手続きを行う場合、登記抹消前に未控除の仕入税額は、合併後の納税事業者が引き続き控除することができる。
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一、主な変更点
核心となる政策は継承されつつ、従来の「全面的な資産再編取引は課税不要」といった基礎の上に、ルールの明確化、適用範囲の完全化、および管理の厳格化が図られました。
二、留意点
再編方案の設計は、業務経営を中心とし、かつ合理的な商業目的を有している必要があります。
増値税の実務においては、各企業の状況によりケースバイケースでの対応が必要となる場合もございます。中国における増値税または関連事項につきましてご不明な点がございましたら、Aobaグループには経験豊富な税理士や弁護士が多数在籍しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
参考リンク先:
本記事の目的:
本記事は、主に中国本土や香港へ進出されている、またはこれから進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国本土や香港での経営活動や今後のビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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