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2023/24年度香港財政予算案及び今後の見通し

 

2023年2月22日、香港政府より2023/2024年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の財政予算案が発表されました。同案内容の概要速報及び今後の見通し・見解については、以下の通りとなります。

 

概況

2023年2月22日、香港財務長官の陳茂波(ポール・チャン)にとって7度目となる香港財政予算案に関する演説が行われた。

 

2022年においては、地政学的リスクやサプライチェーンの混乱、インフレ率の高騰、主要な中央銀行により世界的に行われた金融の引き締めによる金利の急上昇、継続するパンデミックの影響など、さまざまな要素による影響を受け、香港の当年度の実質GDPは全体として3.5%のマイナス成長となり、2021年の6.4%のプラス成長をはるかに下回る結果となった。香港の景気回復にはまだ時間を要するものの、香港政府による市民への消費券の発行などの消費促進策の恩恵を受け、香港内の消費は盛り上がりを見せた。そのため、消費者物価の基調的なインフレ率は比較的安定を見せ、2022年のインフレ率は+1.7%で、2021年の0.6%を上回った。同時に、労働市場も徐々に改善し、2022年の失業率は+3.4%で、2021年の3.9%を下回るものとなった。

 

3年目に入った新型コロナウィルスによるパンデミックもようやく終焉を迎え、数多くの国や地域が2022年においては、経済の再開を優先すべく、疾病予防措置の緩和へと舵を切っている。特に、2023年2月6日から香港と中国本土の間は往来が全面的に再開され、これにより、香港の観光、飲食、小売業などの産業が直に恩恵を受けることが見込まれている。

 

2022/23年の財政赤字は最終的に1,400億香港ドルに上ると見込まれ、当初の赤字予測である840億香港ドルを560億香港ドルも上回るものとなった。行政区にとってコロナ終息後のガバナンスと繁栄の観点から、新たな節目となる2023年において、正常化に向け経済回復をより強化させることを目標に、政府はさまざまな財政措置を講じ、市民により適格に、且つ質の高い公共サービスを提供する姿勢を示している。本年度予算では、以下のような救済策の提案が盛り込まれている。

 

 

 

注目すべきポイント 

 

財政・税務優遇政策案

1

2022/23年度の法人税、給与所得税、その他個人所得税から6,000香港ドルを上限として100%減額

2

2023/24年の第1および第2四半期において居住用不動産および非住宅用不動産に対する固定資産税(レート)を、1,000香港ドルずつを上限として免除

3

香港永久居民ならびに18歳以上の新規入国者に対して、5,000香港ドルの電子クーポンを分割で発行

4

基本児童手当と生まれた子供一人につき追加される児童手当を、12万香港ドルから13万香港ドルに引き上げ

5

一般家庭が初めて住宅を購入する際の負担を軽減するため、印紙税の従量税率(スケール 2)を調整する

6

2022 年 4 月 1 日以降の課税年度において、単一のファミリーオフィスが管理する純持株ファミリー投資会社の適格取引に対する法人税の免除

7

雇用主が 65 歳以上の従業員のために支出した MPF の任意拠出金の税額控除を 100%から 200%に拡大

 

 

長期的発展のための政策

1

政府が主要インフラプロジェクトのキャッシュフローの需要をよりよく管理し、経済と市民の生活のためにプロジェクトの早期完了を促進するため、債券公募が認可されたインフラ用債券スキームの設立

2

「パテントボックス」の税制優遇措置を導入し、研究開発を通じて発生した適格特許から香港で発生した利益に対して優遇措置を与える

3

海外に所在する企業、特にアジア太平洋地域に重点を置く企業に対し、香港への定住化を促進させる仕組みの導入

4

商標の国際登録に関するマドリッド協定の議定書を、2023年上半期までに立法院で施行し、商標所有者が複数の国や地域の管轄地域で、一度の申請により商標を登録・管理できるようにする

 

 

 

給与所得税およびその他個人所得税の査定における香港域内の住宅家賃に対する税額控除の概要

給与所得税およびその他個人所得税の納税者が支払う香港域内の住宅家賃が、2022/23査定年度より、税額控除として適用される。 2022年税務改正(香港域内家賃の税額控除)条例により、控除に関するルールが規定されている。

 

 

適用対象者

香港域内の住宅家賃に対する税額控除は、給与所得税またはその他個人所得税を申告する納税者に適用される。納税者は、本人または配偶者(別居していない)が香港域内にある住宅の賃貸契約により適格借家権を保有し、借主または共同借主として支払った家賃の控除が認められる。

 

 

適用対象となる賃貸契約および物件

この控除申請をするためには、すべての賃貸物件は必ず書面による賃貸契約(または転貸借契約)が締結されていなければならず、かつ賃貸契約書には、印紙税法で規定される範囲内で印紙が貼られていなければならない。さらに、対象となる物件は、法律または特定の文書により、居住目的に使用することが禁止されていない建物またはその一部でなければならない。納税者が複数の居住地を所有する場合、対象となる物件は納税者の主な居住地である必要がある。

 

ただし、以下の場合は控除対象外となる。

 

  • 納税者または納税者の配偶者(別居していない)が、香港域内住宅の法的および実質的な受益所有者である。
  • 対象物件の貸主が納税者または納税者の配偶者の関係者である。
  • 納税者または納税者の配偶者が家主と対象物件に関するリース購入契約を締結している。
  • 納税者または配偶者が公共賃貸住宅の賃借人または認定居住者である。
  • 納税者が雇用主から住居を提供されている場合(支払った家賃の払い戻しを受けている場合を含む)。

 

 

控除可能額

住宅支払家賃の控除限度額は、各年度の査定において100,000香港ドルとなる。ただし、以下の場合は控除額の上限が按分される。

 

  • 同じ賃貸期間に複数の賃借人がいる場合、共同賃借人の人数に比例する。
  • 入居期間が課税年度の一部にしか及ばない場合 – 当該課税年度内に入居した期間に比例する。

 

別居していない夫婦の場合、夫婦に認められる支払った家賃の控除額の合計は、同じ賃貸条件のもとで一人に認められる控除額を超えることはない。

 

 

結論

納税者が雇用主から住居を提供されている場合(支払った家賃の還付を受ける場合を含む)、香港域内で支払った家賃の税額控除は認められないことに注意する必要がある。

 

現行の規定では、従業員が雇用主から住居を提供された場合、または雇用主が明確なガイドラインの基、適切に管理されたプロセスにより、従業員へ賃貸費用を払い戻す場合、香港税務局は、個人所得の課税対象収入として雇用主が実際負担する賃貸費用ではなく、見なし家賃として査定している。

 

これは、従業員の個人所得税の税負担が軽減されるため、雇用主が従業員補助の福利厚生の一つとして社宅を提供することが珍しくはなかった。しかし、香港域内の家賃に対する税額控除が施行されたため、雇用主と従業員は、税務専門家へ、その賃貸スキームが依然として従業員にとって最も税効率が高いどうか相談の上、見直す必要がある。

 

 

 

オフショア受動所得に対する免除制度(FSIE)の導入について

2022年税務改正(特定オフショア所得に対する課税)条例が2023年1月1日に制定された。FSIE制度の下では、利息、配当、株式または持分に関する処分益(Disposal gain)、知的財産からの所得(IP income)であるオフショア受動所得を、多国籍企業グループ(MNE entity)の構成事業体が香港内で受け取った場合、香港を源泉とみなされ法人税の課税対象となる。ただし、そのMNE企業が以下のような特定の所得において、免除要件を満たしている場合を除く。

 

免除要件

適応所得

経済的実体の要件

利息、配当金および株式処分益

資本参加免除制度の要件

配当金および株式処分益

ネクサスアプローチの要件

知的財産権所得

 

FSIE制度の導入に関する詳細は、弊社ニュースレターを参照。

(リンク先:【香港】オフショア受動所得に対する免除制度の改正法案-続報)

 

 

 

香港税務局による解説 

FSIE制度において、これらの新しいみなし規定が導入され、従来であればオフショア免税の対象とされていた上記の特定オフショア受動所得が香港で法人税の課税対象となる可能性があるため、納税者から多くの質問が寄せられた。そのため、香港税務局は用語の解釈や一般的な実務状況を例とした解釈について解説した。以下は、香港税務局が最近発表した事例の一部である;

 

特定経済活動アウトソーシング

香港税務局は、MNEグループが採用しているアウトソーシングのアレンジが経済的実体の要件を満たすかの評価において、納税者がアウトソーシングとモニタリングが行われたことを証明するために、アウトソーシング先企業とアウトソースされた企業の身元、アウトソースされた特定経済活動の性質、請求料金、監視メカニズム等を含んだアウトソースの取決めを記録した内部サービス契約書やその他適切な文書を作成すべきだと明記している。

 

さらに香港税務局は、純粋持株会社がアウトソースを行っている場合、持分権の保有・管理に関する特定の経済活動として、持分権の保有・売却に関する意思決定、リスク計算、持分権取得のためのファイナンスアレンジメントの見直しや修正などが含まれるべきであると明確にした。香港税務局は、経済的実体の要件を満たすかどうかを査定する際、納税者またはサービスプロバイダーの香港における商業的実態、全体的な運営、資源のレベルを考慮するとしている。

 

資本参加免除制度の要件におけるスイッチオーバールール

スイッチオーバールールとは、資本参加免除制度の要件における濫用防止ルールで、持分処分益、配当、または配当原資となる利益が、香港外において実質的に法人税と同じ性質の税金の対象で、その合計(適用税率)が最低15%以上(課税状況による)である場合にのみ適用され、それ以外は、外国税控除に切り替えて適用するルールである。

 

一般的に、適用税率とは、特定の外国源泉所得、基礎利益又は関連のダウンストリーム(=親会社から子会社への)所得が課税される法的管轄地域のヘッドライン税率(=最高法人税率)を指す。香港税務局は、このヘッドライン税率は、当該所得または利益に課される実際の税率である必要はないことを明確にしている。

 

所得または利益が複数の税率(例えば、法人税の累進税率)にて外国税が課される場合、適用税率は、その所得に適用される最高法人税率となる。所得や利益が、特別税制によりその管轄地域の主要税法よりも低い税率で課税され、その低い税率が実質的な活動を行うための税制上の優遇措置でない場合、ヘッドライン税率は特別税制で規定された最高税率とすべきである。

 

同時に、二重課税包括的防止協定により、当該所得が低い税率で課税されている場合においても、適用税率は当該税務管轄地域の法人税のヘッドライン税率とする、という新たな事例も香港税務局から提示された。

 

 

さらに、香港税務局は、対象の配当が分配される際の基礎利益について、課税対象条件を満たすかどうかについて判断する際、一般的に出資先企業が損失を計上し、対象期間において課税対象利益が発生していない場合、課税対象条件を満たさないとしている。

 

しかし、香港税務局は対応する基礎利益が、対象配当が宣言される前の課税期間において少なくとも15%の税率で課税されており、その合計額が支払われた配当と同じかそれ以上であることを示す十分な証拠を納税者が提供できる場合、課税対象条件を満たすことができる、ともしている。このことから、納税者は、各課税期間において、 (a) 投資先企業が支払った配当金金額(b)15%以上の税率が適用された企業の利益総額、の一貫した記録を残しておく必要がある

 

 

 

結論

FSIE制度に関する要件の解釈や実際の導入方法については、香港税務局から追加の説明が公表された後でも、多くの疑問が残っている。そのため、より包括的な説明と具体例を示す実務解釈指針が追って発行されることが予想される。

 

一方で、MNEグループ企業はFSIE制度に基づき、国外源泉所得による課税可能性について、報告義務に従うか、税務局長官に通知をする必要がある。MNEグループ企業にはFSIE制度による潜在的な税務リスクを算定するため、オペレーションの再確認を行い、またオフショア受動所得を生み出す、もしくは潜在的に生み出す可能性のある資産の保有構造 (株式/持分の保有、知的財産権の保有、ローンの手配など)を確認し、適宜、専門家に相談することが推奨される。

 

 

 

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