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【香港】「香港外からの受動的所得」FSIE制度における申告実務について

 

元々香港外からの配当収入(資本的性質の収入)や利息収入(オフショア収入)は、香港所得税の課税対象外(非課税)の収入として今まで税金計算が行われていましたが、2023年1月1日から施行された香港のオフショア受動所得の免除制度(以下、FSIE制度)により、免除要件に当てはまらない場合は課税されることとなりました。

 

施行から1年以上が経ち、すべての決算期を迎える法人において、配当や利息等、該当のオフショア受動所得がある場合、各免除要件にあてはまるか否かを確認し、課税/非課税を識別の上、税務申告を行う必要が出てきました。

 

今回は、香港の日系企業において多くみられる①配当収入②利息収入の主要FSIE収入における免除要件および法人税申告書への主な記載内容についてご紹介させていただきたいと思います。

 

 

 

【過去記事リンク】

【香港】オフショア受動所得に対する免除制度の改正について(2022.10.3)

【香港】オフショア受動所得に対する免除制度の改正法案-続報(2022.12.8)

オフショア受動所得に対する免除制度の改正案-対象資産の拡大(2023.03.31) 

【香港】オフショア受動所得の免除制度(FSIE)を全種資産の処分益への拡大法案ならびオンショア持分処分益に対する課税確実性の強化スキームに関する法案の公布(2023.12.4)

 

 

 

主な「受動的所得」およびその免除要件

 

主な受動的所得とは、

 

  • 配当所得

香港外の出資先から配当を受領した場合や、譲渡などによる持株の処分益が発生した場合は、FSIE制度における「オフショア受動所得」に区分されます。

 

  •  利息収入

香港外のグループ会社への貸付金利息収入、香港外の国、地域に開設されている非居住者銀行口座や駐在員事務所名義の銀行口座において発生する銀行利息もこれに含まれます。

 

 

 

 

免除要件とは

 

ステップ1:法人税所得税計算時に該当所得を識別

通常、年次の法定監査後に所得税税金計算が行われ、その際に上記のような「オフショア受動的所得」があるかどうかをまず識別します。該当の所得がある場合、課税の有無にかかわらず、所得税申告書(BIR51)の別表、IR1478の記入が必要となります。同別表には、受動的所得金額及びその性質、免除要件に関する質問事項への回答などが含まれます。

 

 

 

ステップ2:免除要件にあてはまるか確認

実際の状況に基づき、FSIEの免除要件にあてはまるか確認します。

 

  • オフショア配当所得の場合

・香港法人に「経済的実体*」があり「特定経済活動*」を行っているかの確認、「特定経済活動」を行っている場合、その活動を行っている人員(取締役や財務責任者など)の詳細を確認します。「経済的実体」があり「特定経済活動」を行っているとされた場合、免除要件を満たすこととなります。

 

・配当発生の直近12ヶ月以上の期間、当該子会社持分の5%以上を継続的に保有しており、出資先において15%以上の税率による課税後の剰余利益により配当が支払われている。また、配当自体が現地の企業所得税の控除対象にはなっていない場合、「資本参加免除要件」を満たすとされます。

 

 

 

  • オフショア利息所得の場合

・香港法人に「経済的実体」があり「特定経済活動」を行っているかの確認、「特定経済活動」を行っている場合、同様にその活動を行っている人員(取締役や財務責任者など)の詳細を確認します。「経済的実体」があり「特定経済活動」を行っているとされた場合、免除要件を満たすこととなります。

 

 

 

※「経済的実体」とは

ペーパーカンパニー(取締役など経営の意思決定者が香港に不在、従業員の雇用は無く、特定のオフィスも借りていない)という形態を取っており、戦略的意思決定が香港外で行われているという場合、経済的実体が無いと見なされます。経済的実体があると見なされる場合、引き続き非課税扱いとなります。

 

※「特定経済活動」とは

出資/株式保有/処分に関して必要な戦略的意思決定を行い、主要リスクの管理・負担をされている活動を指します。(例:出資/貸付金の評価・査定、管理、当該事象に関する取締役会の開催、戦略立案等の活動)通常香港外に滞在しているが、会議に出席するために実際に香港に来た取締役も数に含みます。

 

 

 

ステップ3:課税/非課税判定の上税金計算書へ反映し所得税計算

課税、非課税の区分後、税金計算書(Profit Tax Computation)に反映の上、所得税計算を行います。なお、香港で課税となった場合においても、日本、中国など香港との二重課税防止条約(DTA)が締結されている場合、外国税額控除(Tax Credit)の申請を行うことが可能です。

 

 

 

 

注意すべき点

申告に対し、香港税務局(以下、IRD) は、免除要件を満たしているかどうかを判断するため、詳細を照会し、根拠となる書類や情報の提供を求める可能性があります。そのため、 IRD からの照会に備え、FSIE 制度における免除要件を満たすことを証明する書類を保管する必要があります。課税免除可否の判断は、IRDの審査および承認次第となります。

 

 

 

 

 

香港では、法人税申告書(Profit Tax Computation)の作成、所得税申告書(Profit Tax Return)の記入、税務局への提出は、通常、会計事務所など、税務の専門家に税務代行を依頼し、進めることがほとんどです。

 

税務上のルールがますます複雑化してきている昨今、特に税務専門家を擁する専門業者に税法にのっとった正しい税金計算、申告を依頼することにより後日における思わぬ税務リスクを防ぐことが非常に重要となります。現状の税務申告の状況にご不明な点、ご不安な点がございましたら香港税務、中国税務の専門家が多数在籍する弊社までお気軽にお問い合わせください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考リンク】

Foreign-sourced Income Exemption(IRD)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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